フュージョンは進化している
Al Di Meolaの新作『Pursuit of Radical Rhapsody』(写真左)を聴いていると、まだまだ、フュージョン・ジャズは健在、フュージョン・ジャズは進化しているなぁと感じる。時代の徒花などと揶揄する向きもあるが、とんでもない。フュージョン・ジャズは不滅である。
『Pursuit of Radical Rhapsody』は、Al Di Meola(アル・ディ・メオラ)の現時点での最新作。正式なアルバムの名義は、Al DiMeola World Sinfona。Al DiMeola World Sinfonaのサウンドは、タンゴや民族音楽的な要素を散りばめた、ワールド・ミュージック的な雰囲気が特徴。しかし、この新作では、ワールド・ミュージック的要素は少し後退し、フュージョン的要素が強いエレクトリック主体の演奏が帰ってきた。
「帰ってきた」というのも、僕は、1970年代から1980年代初頭の、エレクトリック主体のフュージョン・ジャズどっぷりのディ・メオラが大のお気に入り。超絶技巧なエレクトリック・ギターが、それはそれは爽快で、それはそれは豪快で、それはそれは素晴らしい、完璧なまでのエレクトリック・フュージョン・ジャズ。ジャズ者初心者の時代、結構、良く聴いたなあ。
しかし、1980年代、デジタル録音の時代、リズム&ビートは打ち込みが流行った「軽薄短小の時代」。ディ・メオラのフュージョンは、かなり「デジタル臭く」なって、演奏全体が無機質な雰囲気になって、一気に僕はディ・メオラから遠のいた。
しかし、21世紀に入ってから、徐々に、ディ・メオラはアナログチックでマイルドな音を取り戻しつつ、ワールド・ミュージック的要素を取り入れて、1970年代から1980年代初頭のエレクトリック主体のフュージョン・ジャズに回帰してきた。
そして、今回、この『Pursuit of Radical Rhapsody』である。アルバム全体に渡って、とても丁寧に音作りがなされていて、細部に渡るまで、しっかりケアが行き届いていて、聴き応え十分。聴き心地も良く、これが今のディ・メオラの狙いなのだろう。タンゴや民族音楽的な要素も効果的に配されており、クールで上質なエレクトリック・フュージョン・ジャズの佳作に仕上がっている。
雑誌のインタビューでは「チックとのReturn To Foreverは過去のもの」と言い切っているが、この新作でのアレンジ的なアプローチは、チックとの第2期Return To Foreverそのものなんだけどなあ。チックのキーボードをディ・メオラのエレギに置き換えて、大々的にディ・メオラのエレギをフューチャーすれば、そしてスパニッシュな要素を、タンゴや民族音楽的な要素に置き換えれば・・・ねっ。
良いアルバムだと思います。柔らかでメロディアスでありながら、そこはかとなく、しっかりとリズム&ビートを効かせたクールな演奏はなかなか雰囲気があって良いですね。ディ・メオラのギターも、円熟味が増し、超絶技巧なテクニックが全く耳につかなくなって、爽快感抜群、切れ味抜群、唯一無二なフュージョン・ギターの弾きまくり。近年のディ・メオラの傑作でしょう。
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