フロント楽器への大慰労大会
チック・コリアは、様々な「音の引き出し」を持っている。カメレオンとか節操が無いとか揶揄されるが、それぞれの「音の引き出し」で、水準以上の内容を必ず出し、必ず期待以上の成果を上げる。これはチックの才能に成せる技であり、それがチックのファンにとっては堪えられない訳だから仕方ない(笑)。
Chick Corea Elektric Band(CCEB)の4作目『Inside Out』(写真左)。チック・コリアは、エレクトリック・バンドでも、様々な「音の引き出し」を披露してきた。第1作目は「完全なエレクトリック・バンド」、第2作目は「ちょっと無理しているエレ・ファンク・バンド」、3作目は「純ジャズ・テイストなコンテンポラリー・ジャズ」。
そして、この第4作目は「時代の先端を行くコンテンポラリー・ジャズ」。1990年の録音。ちなみにパーソネルは、Eric Marienthal (sax) Chick Corea (p, syn) Frank Gambale (g) John Patitucci (el-b) Dave Weckl (ds)。
時代の先端を行くコンテンポラリー・ジャズは、パティトゥッチのベースとウェックルのドラムで供給されるリズム&ビートが基本。バッシバシと切れ味鋭い、デジタルチックな縦ノリのビートを供給する、このリズム・セクションは強烈。痛快極まりない。
その強烈なリズム&ビートに乗って、フロント楽器を司るマリエンサルのサックスとギャンバレのギターが疾走する。そう、このCCEBの第4作目『Inside Out』は、このマリエンサルのサックスとギャンバレのギターを大々的にフィーチャーしている。
いやいや、マリエンサルはブワーッと吹き上げるわ、ギャンバレはギャンギャン弾きまくるわ、CCEBのフロント楽器への大慰労大会である。
チック御大は、パティトゥッチのベースとウェックルのドラムで供給されるリズム&ビートに混じって、ニコニコしながら、フロントの活躍を見守っているが、要所要所で、さりげなく生ピアノを弾きまくっています。
結構な高速弾き回しで、ちょっとアブストラクトな響きもあって、なかなか凄いです。通常は一歩引いて演奏を見守っているが、時々、思いついたように要所要所でさり気なく弾きまくるって、なんだかマイルスみたい。
かなりの水準を行く「時代の先端を行くコンテンポラリー・ジャズ」で、さすがはチックというところでしょう。
でも、このアルバムでは、チックは裏方に徹していて(フロント楽器への大慰労大会だからね)、チックの個性というのは、あまり露わになってはいません。アルバム全体のコンセプトに則って、しっかりと裏方に回って、バックを支えるチック。なかなか出来ることではありません。懐が深いなあ。
ということで、このアルバムは、チック者(チックのファン)の方々には一度は聴いて欲しいアルバムですが、一般のジャズ者の方々には「是非とも」という類のアルバムではありません。あしからず(笑)。
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