内省的な不思議な浮遊感 『New Chautauqua』
今日はやっと雨が降って、涼しい空気が流れ込んできた我が千葉県北西部地方。でも、暫くすると、また残暑がぶり返しそうな気配。まあ、今年は異常なまでの酷暑ですので、厳しい残暑がまだまだ残っているかも、というのも仕方の無いことかと。
そんな、残暑厳しい昼下がり。日陰に入って冷たいものでも飲みながら、外の強い日差しを眺めながら一服する時のお勧めジャズアルバムをご紹介します。聴いていて汗が飛んできそうな熱いジャズ演奏も魅力ですが、日本の夏には合いません。とにかく、日本の夏を乗り切ることに一役買うような、清涼感抜群のジャズのアルバムは無いのか、と思いを巡らせてみると・・・。
ちなみに、僕は夏の昼下がりに、結構、ギター・ソロのアルバムを良く聴きます。ギターの音色が風鈴の音色みたいに響いて、暑苦しいドラムの音もベースの音もなく、ひたすら爽やかに、ひたすら煌びやかに、日陰での一服のひとときを演出します。
そんな清涼感抜群なギター・ソロのアルバムのイチ押しの一枚。まずは、Pat Methenyの『New Chautauqua』(写真左)。「ニュー・シャトークア」と読みます。1978年にオスロで録音されたソロ・アルバム。彼の故郷であるミズーリへの想いをテーマに綴られた温かく牧歌的な雰囲気の作品。オーヴァー・ダビングも効いた美しいメロディ満載の1枚。パット・メセニーの初のソロ・ギターによるアルバム。
パットは、陽気なアメリカンを思わせる明るいあっけらかんとした音と、ヨーロッパの秋〜冬を思わせる、明るく、くすんだ音が織り交ぜる、独特の音が特徴。このアルバムでは、彼独特の音を支えるギター・シンセサイザー、アコースティック・ギター、12弦ギター、15弦のハープギター、電気ベースと、それぞれの音色の異なるギターを駆使し、パット独特の拡がりのある音世界を展開する。
とにかく、パットの音は「アメリカ」なのだ。出だしの1曲目「ニュー・シャトークア」を聴けばそれが判る。とにかく明るいギター・シンセサイザーの音色、弾むようなリズム感、風が吹き抜けていくような疾走感。彼の出身のミズーリの雄大の自然の中、広い草原の中を一陣の爽やかな風が吹き抜けていくような、そんな爽快感。まず、この出だしの1曲で、ほっとする。リラックスできる。
2曲目になると、ぐっと落ち着いた感じになって、またまたリラックス。アコースティック・ギターとスチールのユニゾンで、これはもうクラシック・ギターの世界を想起させる、静かで優しい演奏。夏の日陰での一服といった風情でたまりません。
そして、3曲目から4曲目は、もう「まどろみ」の世界。夏の昼下がり、涼しい風の吹き抜ける日陰で、日向に照りつける強い射るような日差しを眺めながら、ハンモックで昼寝をしているみたいな、ゆったりとした、まどろむような音世界が心地よい。
5曲目は、ギターの音も心地よい、日陰でゆったり昼寝をしているところに、一陣の涼風が吹き抜けていくような、そして、その風が、木々の木の葉を揺らし、囁きかけるような音が降り注ぐような、そんな情景が浮かぶ、そんな名演。
最後を飾る6曲目は、その名もズバリ「デイ・ブレイク」。もう、この世界は、アメリカの田園風景まっただ中。強い日差し、吹き抜ける風、風に揺れる木立、その木立の日陰でまどろむ人々。
このパットのソロアルバム、彼のあらゆるギターの技法を惜しみなく披露した、ソロへの積極的な挑戦は、内省的な不思議な浮遊感を持った味わいであり、その音風景は見事なものである。夏の昼下がりにベストなアルバムです。残暑を乗り切る必須アイテムの一枚でもあります。
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