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2011年8月31日 (水曜日)

ビル・エバンス 『Jazzhouse』

タッチの強い、バップ系なスタイルのビル・エバンスを感じるには、1970年前半の録音のライブ盤が良い。ハードボイルドにリリカルに、限りなく美しい。

そんなライブ盤の一枚。1969年11月、コペンハーゲン、モンマルトルでのライブ。タイトルは、シンプルに『Jazzhouse』(写真)。パーソネルは、Bill Evans (p) Eddie Gomez (b) Marty Morell (ds)。

このアルバムでは、速いテンポで、ダイナミックに弾きまくるエバンスと、しっかりとしたタッチで耽美的にリリカルにバラードを弾き上げるエバンスと、2つの顔のエバンスを楽しむことができる。

エバンスの本質とした、タッチの強い、バップ系なスタイルについては、4曲目の「Autumn Leaves(枯葉)」を聴くことによって実感できる。  かの伝説的名盤『Portrait In Jazz』で初出だった「枯葉」と、この『Jazzhouse』での「枯葉」と聴き比べると、この頃のエバンスが如何にダイナミックで、如何に強いタッチで弾きまくっているかが判る。

タッチが強いとは言っても、力ずくで叩きつけるように、ピアノを弾く訳では無い。しっかりと鍵盤を深く最後まで押さえる、と言った方が良いかもしれない。それが速いパッセージだとダイナミックな響きとなり、それがスローなバラードだと旋律が印象的にクッキリ響く。

エバンスは、ライブ盤では、モーダルな演奏はあまりしないので、基本はハードバップな演奏になる。そのフォーマットの上では、エバンスのピアノはタッチの強い、バップ系なスタイルでグイグイ押すのだ。しかし、力まかせにグイグイ押すのでは無い。しっかりと鍵盤を押し切る様に、堅実に誠実にグイグイ押すのだ。

Jazzhouse

アルバム全体の所要時間は40分弱。1曲が4〜5分の曲が9曲。ちょっと上品で大人しめで、耳に優しい録音で、ゆっくり座っての「ながら聴き」に最適です。僕は本を読みながら、とかPCをしながらの「ながら聴き」に、この『Jazzhouse』を愛用しています。

選曲も良いです。ちなみに、収録された曲を並べると以下の通り。どうです。魅力的でしょう。

1. How Deep Is The Ocean
2. How My Heart Sings
3. Good Bye
4. Autumn Leaves
5. California, Here I Come
6. Sleepin' Bee
7. Polka Dots And Moonbeams
8. Stella By Starlight
9. Five (Theme)

ジャケットは、写真左の飛行機のタラップを降りてくるポーズでの、記念写真の様なジャケットがオリジナルです。写真右の、いかにもビル・エバンスのイメージ的な写真のジャケットは、日本でリイシューされた時の日本限定のジャケット。

日本限定のビル・エバンスのイメージ写真のジャケットが人気ですが、僕はなんだか、ビル・エバンスのイメージを、本人の本質・個性とは関係無く、日本のレコード会社がイメージを捏造しているようで、僕は余り好きではありません。この日本限定のビル・エバンスのイメージ写真こそが、ビル・エバンスは「耽美的」なピアニストの代表という、ちょっと誤った評価のイメージそのものに感じるんですね。

なんだかんだ言っても、アルバム・ジャケットはオリジナルを尊重すべきでしょう。レコード会社があれこれとジャケットを差し替えたら、後になって紛らわしくてしょうがない(笑)。

ビル・エバンスのタッチが、よりワイルドに、よりダイナミックに展開する。そして、バックのエディ・ゴメスのベースも、マーティ・モレルのドラムも、ダイナミックさを増して、エバンスに追従する。このライブ盤『Jazzhouse』でも、ビル・エバンス・トリオのダイナミズムの真髄を十分に感じる事ができる。

 

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