オールマンズ 『at Fillmore East』
若い方々は「オールマン・ブラザース・バンド(The Allman Brothers Band・以降オールマンズと略す)」というバンド名や、デュアン・オールマン(Duane Allman)という天才ギタリストの名前は、全く、耳にしたことが無いと思う。
が、この文章をお読みのロック好きの方々は一度で良い、このライブ盤を耳にして欲しい。このアルバムには打ち込みは全く無し、PCなど存在しない時代の、人間が演奏するロックの古き良き姿がここにある。音は全てアナログ。音は野太く、美しく、そして、耳に優しい。
The Allman Brothers Band『The Allman Brothers at Fillmore East』(写真左)。1971年3月12〜13日、NYのFillmore Eastでのライブ録音。アルバムとしては、1971年7月のリリース。今では、コンプリード盤を始めとして、様々な編集のアルバムが出ているが、やぱり一番想いが入るのは、オリジナル盤の編集でしょう。確認の為に、収録曲を以下に並べておきます(LP時代の編集です)。
【Side One】
1.Statesboro Blues
2.Done Somebody Wrong
3.Stormy Monday
【Side Two】
1.You Don't Love Me
【Side Three】
1.Hot 'Lanta
2.In Memory of Elizabeth Reed
【Side Four】
1.Whipping Post
このライブ盤は、ロック史上、屈指の傑作である。これほど、内容に富み、テクニック抜群、演奏も完璧、音も良く、アルバムとしての編集も良し、と非の打ち所の無いライブ盤はなかなか無い。
このバンドのリーダーであり、天才ギタリストであるデュアン・オールマンの無骨で迫力のある、野太いスライドギターが鳴り響く。ボトルネック奏法の好きな方は必聴です。スライドギターの迫力ある「くすんだ」音と、アメリカ南部のブルースに付き物のブルージーなハーモニカがユニゾンする。
全編、無骨に雄々しく、グイグイ押すかと思いきや、3曲目の「Stormy Monday」が渋い。ジャズ・ミュージシャンも取り上げるこの曲を、オールマンズは落ち着いたスローテンポのシブいブルース調で攻める。これが単純なロック野郎の演奏との違い。ワイルドな演奏から来る印象を覆す、なかなかにオールマンズはインテリジェンスがある。うう〜ん、渋い。
Side Threeの「Hot 'Lanta」からは、ジャムセッション調の迫力あるアドリブが売りの名曲が並ぶ。「Hot 'Lanta」はオルガンの出だしから、ギターのユニゾンへ、その展開がぞくぞくする。「In Memory of Elizabeth Reed」は、ディキー・ベッツとデュアンのツイン・リードギターのアドリブの応酬。ダブルドラムの躍動感溢れる、沸き立つようなリズム。ブルージーでゴスペルチックなグレッグ・オールマンのオルガン。サザンロックの真髄が目一杯詰まっている。
そして、心底感心するのは、ワイルドにグイグイ押せ押せの演奏、長いレンジのアドリブの応酬にも拘わらず、演奏の乱れがほとんど無いこと。凄い演奏テクニックだと思います。バンドとしてのライブ演奏の完成度が非常に高い。この初代オールマンズが「伝説のライブバンド」と呼ばれる所以です。
ちなみに、私が、オールマンズにのめり込むきっかけとなったのは、デレク・アンド・ドミノスの名盤『Layla and Other Assorted Love Songs』で、デュアン・オールマンのギターを体験したことです。初めて聴いた時はビックリした。聴き込むにつけ、クラプトンのギターがどんどん霞んでいたことを覚えている。これ誰だ・・・って思った。
そういう人って結構多いのではないでしょうか? あのタメのきいた、糸を引くような独特のスライド・プレイはやはり一度聴いたら耳から離れませんよね。
そして、当時、高校時代の先輩に教えを請うて、貸して貰った最初のオールマンズのアルバムが『The Allman Brothers at Fillmore East』。家に帰って、ターンテーブルに載せて、針を降ろして、出てきた音が、野太いスライドギターの迫力ある「くすんだ」音と、アメリカ南部のブルースに付き物のブルージーなハーモニカ。余りに凄い演奏と迫力に、ひっくり返りました(笑)。
しかし、このライブの後、このオールマンズに不幸が訪れる。デュアンのギターを全編堪能できるアルバムは、このアルバムが最後になるのだった。次作アルバム『Eat A Peach』の制作中に、デュアンはバイク事故で他界する。
このライブ盤が残っていて良かった。デュアンのギター・パフォーマンスが、ライブ盤という「記録」で残っていて良かった。僕たちは、このライブ盤がある限り、いつでもどこでも、デュアンのギター・パフォーマンスを堪能できる。初代オールマンズのライブ演奏を堪能できる。幸せなことである。
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