最近のトラックバック

« フュージョンは進化している | トップページ | ジャズの中の「ハーモニカ」の存在 »

2011年8月12日 (金曜日)

ジャズ喫茶で流したい・28

約2ヶ月ぶりの「ジャズ喫茶で流したい」シリーズ。今日は28回目。無名ではあるが、落ち着いて小粋な、我がバーチャル音楽喫茶『松和』でロングランな「ギター+ピアノ・トリオ盤」をご紹介したい。

ジャズは様々なフォーマットのアルバムが沢山あって、特に、ハード・バップなんて、1950年代中頃から現在に至るまで、様々なバリエーションの演奏があって、そのアルバムの数は膨大な量になる。その膨大な数のアルバムを少しずつ聴き進め、「おお、これは」と喜びの声をあげるようなアルバムに出会った時、ジャズ者であったことに感謝し、ジャズ者としての醍醐味を感じることが出来るのだ。

我がバーチャル音楽喫茶「松和」で、ちょくちょくかかるハードバップなアルバムがある。Roni Ben Hur With Barry Harris Trioの『Backyard』(写真左)。ピアノ・トリオ+ギターのカルテット構成。ちなみにパーソネルは、Barry Harris(p), Leroy Williams(ds), Lisle Atkinson(b), Roni Ben-Hur(g), Amy London(vo)。1995年3月の録音になる。

リーダー格のRoni Ben-Hur(ロニー・ベンハー・写真右)は、1985年にイスラエルから移民してきたギタリスト。ビ・バップなスタイルのギタリストです。日本ではあまり知られていないと想います。僕もこのアルバムで彼の名前を知りました。

彼のギターは、超絶技巧なんていう「大向こうを張る」タイプのギタリストでは無く、ギターのナチュラルな響きをそのままに、間の取り方、フレーズの自然さを前面に押し出した「粋なフレーズとテクニックを前面に押し出した」ギタリストである。このアルバム全編に渡って、ナチュラルで基本に忠実な「バップ・ギター」を心地良く聴かせてくれている。誠実なギターフレーズとでも形容できる、判り易く気持ちの良い、ギターのインプロビゼーションを堪能することが出来ます。

バッキングの要は、バリー・ハリス。ハリスのピアノは、言葉で表現するのが実に難しいピアニストではある。しかし、このアルバムを聴いていて、ハリスのピアノは徹頭徹尾「ビ・バップ」なピアノであり、その「ビ・バップ」なピアノに緩急織り交ぜ、リズムのアクセントを変幻自在に取り回し、テクニックよりは雰囲気優先、しかも基本に忠実なテクニックと相まった、実にクールな「バップ・ピアノ」を聴かせてくれる。

バリー・ハリスのピアノの本質は「ビ・バップ」、そして、リーダー格のロニー・ベンハーは「ビ・バップ」な雰囲気が特徴のギタリスト。
 
Backyard
 
双方とって相性抜群。このアルバムでは、ビ・バップを基調とした演奏家達がそれぞれに、ハードバップへの今風の展開を仕掛けていて、ハードバップへの効果的な応用の成果を沢山みせてくれます。リズム&ビートもスローな曲からミッドテンポの小粋な演奏まで、それはそれは落ち着いた、大人のハードバップを聴かせてくれます。

速いテンポの曲もありますが、速いと言っても、超絶技巧な圧倒的な速さでは全くありません。老練かつ職人芸的な、聴くジャズ者の耳に優しい、はっきりとしたテクニックが活かされる「時速80キロ」的な、安全でかつ落ち着いた「速いテンポ」。これがこのアルバムの最大の特色だと想います。ジャズは超絶技巧だけが全てでは無い。テクニックをグッと押さえた、味のある雰囲気のあるジャズだって、立派なジャズ。

途中1曲だけ、唐突に女性ボーカル入りの楽曲が展開される。8曲目「Something To Live For」で、他のインストナンバーが充実しているだけに、この女性ボーカルの存在にかなりの違和感を感じる。この8曲目「Something To Live For」は完全な蛇足だろう。なぜこの曲だけが女性ボーカル入りなのか。完全なプロデュースのミスだろう。

女性ボーカル参加の「ズッコケ」を我慢しつつ、他の演奏は、ミッドテンポからスローテンポのテンポの、「テンポの偏り」がはっきりとしたハード・バップな演奏。この「テンポの偏り」がポイント。しっかりと落ち着いた雰囲気の中、ロニー・ベンハーの堅実なバップギターとバリー・ハリスのバップピアノとの相性が抜群。「小粋なハードバップ」がこのアルバムの中に満載である。

良いアルバムです。何回聴いても決して飽きることの無い優れものです。決してジャズ本、ジャズ入門本にも載っていない地味なアルバムですが、これがかなりポイントの高い「掘り出し物」なんですね。これだからジャズは面白い、ジャズは裾野が広い。ジャズの奥深さを改めて感じさせてくれるアルバムです。

 

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」、「v_matsuwa」で検索して下さい。

Fight_3
 
がんばろう日本、がんばろう東北。自分の出来ることから復興に協力しよう。

保存

« フュージョンは進化している | トップページ | ジャズの中の「ハーモニカ」の存在 »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/80793/41185491

この記事へのトラックバック一覧です: ジャズ喫茶で流したい・28:

« フュージョンは進化している | トップページ | ジャズの中の「ハーモニカ」の存在 »

リンク

  • 松和 / ジャズ・フュージョン館
    ホームページを一新しました。「ジャズ・フュージョン館」と「懐かしの70年代館」の入り口を一本化し、内容的には、当ブログの記事のアーカイブを基本としています。  
  • 松和 / 懐かしの70年代館入口
    更新は停止し、新HPへ一本化中。新しいブラウザーではレイアウトが崩れたりと申し訳ありません。
2017年5月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31      

カテゴリー

常連さんのブログ

  • 70年代思い出の名曲
    music70sさんのブログ。タイトル通り、定期的に、70年代の懐かしのアルバムを紹介されています。なかなか、マニアックなアルバム選択、曲選択に、思わずニンマリしてしまいます。
  • いそいそジャズ喫茶通い
    yuriko*さんのブログ。都内のジャズ喫茶への訪問記録。ジャズと言えば『ジャズ喫茶』。敷居が高くて、と思っている方々に是非読んで頂きたいブログ。実際の訪問記録ですから読んでいて楽しく、実際の訪問時の参考になります。
無料ブログはココログ