夏になれば思い出すライブ盤
夏になれば、7月になれば、必ずと言って良いほど思い出すライブ盤がある。昔々、1976年7月5日にリリースされた、サディスティック・ミカ・バンド(SMB)のライブ盤『Live In London』(写真左)。
大名盤、伝説の『黒船』を手に入れ、その凄い内容におったまげて聴きまくっていたあの頃。1975年11月にリリースされた『HOT! MENU』のファンキーな内容に戸惑い、それでもSMBにけなげについていったのだが、その後、ほどなく加藤和彦・ミカの離婚により解散。
「はぁ〜?」と思って狼狽していたら、どうもライブ盤が出るらしいとの情報。それもSMBのロンドン公演のライブらしいとの情報。「はぁ〜?」と思った。SMBは既に解散している。どうしてライブ盤がでるのか、まだロック小僧駆け出し2年の僕には、さっぱり判らなかった。
それでも、このライブ盤は発売日に買ったなあ。ちなみに写真右は、『Live In London』のLPパッケージ。懐かしい。そう、このパッケージだった。日本の国旗と英国の国旗が並んであしらわれているところに、当時、心に「グッと」きたなあ。
そして、はやる心を抑えつつ、ワクワクしながら、アルバムに針を落とす。出てきた音が「悪い」。うわ〜失敗した、と思った。激しく後悔した。でも買ってしまったものは仕方が無い。聴くしかない。聴きつづけるしかない。暫くは我慢して聴いていた。が、その音が悪いのを除けば、その演奏内容はかなり凄いものではないか、と思うようになった。懐かしい高校3年生の頃の夏の想い出である。
音が悪いのは当然で、このライブ盤の音源がカセット・テープレコーダーによる録音の為だ。それでも、最近のリマスター技術は素晴らしいもので、最新のリイシューCDは結構、その音が改善されている。意外と聴ける、鑑賞に耐えるまでの音質になった。
音質の問題が改善されたCDでは、SMBのロンドン公演のパフォーマンスが十分に楽しめる。収録された曲は以下の通り。
1. どんたく
2. WA―KAH!CHICO(インスト)
3. ヘーイごきげんはいかが
4. 颱風歌
5. ミラージュ(インスト)
6. 快傑シルバー・チャイルド
7. 墨絵の国へ
8. 何かが海をやってくる(インスト)
9. 嘉永六年六月二日〜嘉永六年六月三日〜嘉永六年六月四日
10. 塀までひとっとび 〈CDエクストラ〉
まずは、2曲目「WA―KAH! CHICO」と5曲目の「ミラージュ」のインスト・ナンバーが聴きもの。全く持って、後の「サディスティックス」そのものな演奏が見え隠れする。そして、6曲目の「快傑シルバー・チャイルド」から7曲目の「墨絵の国へ」のシュールさは、まさにブリティッシュ・プログレッシブ。まるで、ロキシー・ミュージックの様だ。
そして、興奮するハイライトは、やっぱり大名盤『黒船』からの選曲、8曲目「何かが海をやってくる」からのメドレー「嘉永六年六月二日〜嘉永六年六月三日〜嘉永六年六月四日」。
大名盤『黒船』のA面の大半を占めるこのメドレーは、このライブ盤のハイライト。とにかく凄い演奏だ。整然としたプログレッシブなスタジオ録音も良いが、このライブ盤での疾走感、臨場感は凄い。そして、演奏するメンバーのハイテクニックなこと。特に高橋幸宏の「独特な間を持った」唯一無二なドラミングと高中正義の弾きまくりギターが凄い。当時のロンドンっ子達が驚喜したというが、それも納得の熱く激しい演奏だ。
ラストの10曲目の「塀までひとっとび」は、収録時間の長いCDならではのエクストラ。この疾走感溢れる、ファンキーで不思議な浮遊感のあるロックな曲が、ライブでより一層輝いている。後藤次利が凄い。フルスロットル・チョッパー・ベースでガンガンに飛ばしまくる。
カセット・テープレコーダーによる録音のため,音質はいまひとつ、という触れ込みに惑わされてはいけない。70年代ロックのマニアであるなら、このライブ盤は絶対に聴かねばならない。日本のロックが米英ロックと比較して、全くもって「ひけをとっていなかった」。それを証明してくれる凄いライブ盤です。
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初めてコメントさせて頂きます。
ミカバンドのライブ盤リリース時に購入されてリアルに聴かれたとは羨ましいです。
私は当時小学三年生でロックを聴き初める2年前で彼らのことは知りませんでした。
4年後にYMO の洗礼を受け、ユキヒロさんのドラムを聴きたいと思ってミカバンドに出会いアナログ盤全部揃えました、お年玉はたいて(笑)
バンド活動持に出会えなかったのが残念でなりません。
CD は音質向上してるなら買い直そうかな?
投稿: 偽比嘉 | 2015年7月10日 (金曜日) 17時18分