これぞ「大人のフュージョン」
台風の影響で季節外れの涼しさだったが、いよいよ暑さが戻ってきた。これだけ気温が激変すると体調が持たない。そんな時は好きなジャズやフュージョンを聴くのが良い。
最近、純粋なフュージョン系の音というのも少なくなった。スムース・ジャズ系やクラブ・ジャズ系の音は多々あるが、1970年代を席巻した純粋フュージョン系の音は少なくなった。それでも、まだまだ、純粋フュージョン系の音は脈々と受け継がれている。それも、日本のミュージシャンでの音とくれば万感な想いが駆け巡る。
PYRAMID(ピラミッド)というバンドがある。数多くのプロデュースや人気番組『世界遺産』のテーマで知られるギターの鳥山雄司、ニューズウィーク誌で「世界が尊敬する日本人100人」に選ばれたドラムスの神保彰、全盛期のT-SQUAREを16年間に渡り支えたピアノ・キーボードの和泉宏隆。この3人のユニット。
もとはと言えばこの3人は、慶応大学時代のバンド仲間。「昔に戻ってインストやらない?」と鳥山から他の2人にかかって来た電話からすべてが始まった、とのこと。良いなあ。なんて素晴らしいバンド結成の切っ掛けだろう。
PYRAMIDの音は、一言で言えば「大人のフュージョン」。実に良くアレンジされ、実に良くプロデュースされたフュージョン・ジャズである。鳥山雄司のギターの音が凄く良い、格好良い。和泉宏隆のピアノ・キーボードの音が素敵でフレーズが印象的。神保彰のドラムが個性的で現代的。この3人の音が交われば、フュージョン・ジャズの音とは言え、決して古くはない。それどころか最新の新しい響きがそこかしこに流れていて、それはそれは上質のフュージョン・ミュージックに仕立て上げられている。
彼らの最新作が『PYRAMID3』(写真左)。この作品は、1970年代のクロスオーバーやフュージョンへのオマージュとも言える作品である。1970年代のクロスオーバーやフュージョンをリアルタイムで体験した僕たちには堪らない内容となっているのだ。
収録曲を見渡せば、2曲目の「Rhapsody In Blue」が先ず目を惹く。聴けば、そのアレンジは、デオダートのアレンジを踏襲している。しかも、リズム&ビートは今風で新しく、ギターの音は個性的。決して古くはない。現代のフュージョンの響きが溢れている。これ、結構聴きどころ満載です。デオダートのアレンジが如何に優れたものだったかを教えてくれる。
7曲目の「Hang Up Your Hang Up」は、ハービー・ハンコック&ヘッド・ハンターズの名曲・名演。これがまた、PYRAMIDのアプローチは素晴らしくて、決して、1970年代のファンク・ジャズの雰囲気を踏襲していない。まったく新しい、現代のリズム&ビート。そして、決して黒く無く、このPYRAMIDの演奏で漂うファンクネスは、しっかりと「黄色い」。むっちゃ格好良くて、むっちゃ日本人的なファンクネス。凄いアレンジ、凄い演奏テクニックです。
他の楽曲も、どれもが1970年代のクロスオーバーやフュージョンのアレンジやアプローチを踏襲してはいるが、その演奏に漂う響きは最新のもの。特に、ドラムスの神保彰とピアノ・キーボードの和泉宏隆が受け持つ「リズム&ビート」が素晴らしい。むっちゃ現代風なのだ。特に神保彰のドラムは素晴らしい。個性的なポリリズムでありながら、デジタルチックな縦ノリ。といって、スティーブ・ガッドの様なシンプルなノリではない。実に複雑な味わいのあるビートにしばしウットリしてしまう。
クロスオーバーやフュージョンは、最終的には「リズム&ビート」が命となるが、このPYRAMIDの音は、この「リズム&ビート」が個性的。米国には無い、実に個性的な、実に日本的な「リズム&ビート」を聴くことができます。良い感じです。
ちなみに「Rhapsody In Blue」「Love Infinite」「Hang Up Your Hang Up」で、印象的でジャジーなインプロビゼーションを披露してくれるバイオリンは葉加瀬太郎。ベース・サポートは鳥越啓介。ゲスト参加のミュージシャンの好演も見逃せない。
良いアルバムです。1970年代のクロスオーバー&フュージョンのファンであれば、これは聴いて欲しいアルバムです。1970年代のクロスオーバーやフュージョンの名曲・名演が、「新しい響き」と「新しいリズム&ビート」によって、新たに、現代のフュージョン・ジャズの名演として生まれ変わっています。
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