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2011年7月の記事

2011年7月31日 (日曜日)

The Concert for Bangladesh

『The Concert for Bangladesh(邦題:バングラデシュ・コンサート)』(写真)は、ジョージ・ハリスン主催のチャリティ・コンサート『バングラデシュ難民救済コンサート』を収録したオムニバスのライブ・アルバム。1971年12月のリリースになる。

このコンサートのライブLPは3枚組で発表された。高校生当時、LP3枚組を手に入れるなんて、夢のまた夢。お年玉を当てにして、購入するしか手が無いが、当時、他に欲しいLPが沢山あった。LP3枚組に集中投資する強い気持ちも無く、金持ちの息子の友人にこのThe Concert for Bangladesh」のLP3枚組があると聞いて、友達3人くらいと聞きに行ったのを覚えている。

冒頭の2曲にはたまげた。「イントロダクション」〜「バングラ・デューン」。ラヴィ・シャンカールのシタールの演奏。約17分弱、延々と続くシタールの演奏。これは今でも辛抱できない(笑)。CDで聴く時は必ずスキップする。これは今の耳で聴いても、歴史的な記録として以上の意味は無いように思う。本来のロック・コンサート、加えて、チャリティー・コンサートの草分けとして様子は、正式には3曲目の「Wah-Wah」からとなる。 

このLP3枚組のライブボックス盤は、不思議な内容構成をしていて、一応リーダーとしては、ジョージ・ハリスンなので、ジョージの演奏と、このチャリティー・コンサートの客演者の目玉だった、ボブ・ディランの演奏とが、ほぼ8割を占め、後は当時人気だったレオン・ラッセルが2曲ほどメドレーで顔を出す程度。もう一人の客演者の目玉だったエリック・クラプトンは麻薬禍の為、ジョージの「While My Guitar Gently Weeps」での伴奏以外は目立たない(アルバムで聴く限りですが・・・。クラプトンはディランの曲を除く全曲で演奏してますよ。どこを観てる(聴いてる)んですか、との指摘がありましたので、文末の表現を自分の印象に正しく修正しました)。
 
 Bangladesh_lp

このライブ盤収録時点で、ジョージは、まだビートルズでの自作曲が数曲程度、そして、ソロ・ワークスでの最初の大ヒットアルバムとなった『All Things Must Pass』からの楽曲しか持ち曲が無く、このライブ盤では、なんだか『All Things Must Pass』の発売記念コンサートのような演奏曲構成となっている。

逆に、ボブ'・ディランは、既に米国ロック界にて確固たる地位を築いており、当時の代表曲を5曲ズラッと連ねて、かなり充実した内容のライブ演奏になっていて、このボブ・ディランの演奏を聴く限り、リーダーのジョージを完全に食っている。それほどまでに、このライブ盤でのボブ・ディランは好調。

ちなみに、僕はジョージとスワンプの関係は、若干ミスマッチだと思っているので、どうしても『All Things Must Pass』からの楽曲のライブ演奏に対して、心から乗ることが出来ないのだ。ライブ演奏自体も、ちょっとリハーサル不足というか、ちょっと自信なさげで、スワンプ独特の泥臭さとワイルドさが希薄なのがどうも気になる。特に、レオン・ラッセルの演奏と比較すると、やっぱり、ジョージにはスワンプはとことんは合わないなあ、と感じる。憧れと実際は異なるということかなあ、とも思ったりする。

Bangladesh

しかし、この「The Concert for Bangladesh」は、チャリティー・コンサートの草分けとしての歴史的意義は大きい。特に、1970年代、国際的な情報の流通がまだまだ充実していない時代、情報不足の時代に、このチャリティー・コンサートを通じて、バングラデシュの実情を世界に伝えた意義は大きい。それは、オリジナルのジャケット写真にも表れている。この栄養失調の子供の写真はインパクトが大きかった。高校1年生の時、このジャケット写真は衝撃だった。

この「The Concert for Bangladesh」のリリースから、早40年が経った。今年で40周年。もう遠く歴史の彼方の出来事である。今の耳で聴くと音楽的価値はほぼ無くなってしまったが、歴史的価値は十分に保っている。ロックの歴史的遺産として、長く記憶されるべきLP3枚組ボックス盤である。

ちなみに、このボックス盤のジャケットデザインの変遷は不思議なものがある。LP当時は赤系の背景色に子供の写真(写真上)、CD2枚組での初リイシュー時には白系の背景色に子供の写真(写真下左)、ここまでは、背景色は変わったがデザインは同一。しかし、今では、何の変哲も無いジョージの上半身の写真がドッカリと載っかっているだけの、何の味も無いジャケットになってしまった(写真下右)。

改悪である。先にも述べたが、この子供の写真に意義があったジャケット・デザインだけに、なぜ今、ジョージの写真にすり替わったのか、理解に苦しむばかりである。

 

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2011年7月30日 (土曜日)

西海岸ロックの裏方の仕掛け人

J.D.サウザー(John David Souther)は、ウエストコースト・ロックを代表するシンガーソングライター。ソロ・アーティストとして活躍する傍ら、多くのアーティストに楽曲提供をしている。1945年11月生まれなので、今年で66歳になる。う〜ん、サウザーも歳をとったなあ。

J.D.サウザーは、1970年代にブームとなったウエストコースト・ロックを影で支えた「裏方の仕掛け人」。ウエストコースト・ロックを代表するミュージシャン達、例えば、イーグルスやリンダ・ロンシュタット、ジャクソン・ブラウン等と、かなり密な交流を持っており、楽曲の提供、プロデュース、セッションへの参加など、ウエストコースト・ロックの「裏方の仕掛け人」として活躍(暗躍?・笑)しました。

J.D.サウザーは、特に、イーグルスとは深い関わりを持っており、「もうひとりのイーグルス」とも呼ばれています。イーグルスの幾つか有名なナンバーについて、フライ&ヘンリーとの共作で何曲も提供しているソングライターの存在でした。裏方の仕事としては楽曲提供だけでなく、バック・コーラスなどでも頻繁にゲスト参加を行っています。

さて、J.D.サウザーのソロ・アルバムといえば『You're Only Lonely』(写真左)。僕たちの世代としては、まずは、このアルバムでしょう。そして、極めつけは冒頭のタイトル曲「You're Only Lonely」ですね。このアルバムのタイトル曲が、70年代後半のAORブームにうまく乗って大ヒット。歌い手としても注目される存在となりました。何を隠そう、この私も、このアルバムのヒットで、J.D.サウザーという存在を認識した次第。
 

Youre_only_lonely

 
昔々、FMのエア・チェックが中心だった大学時代。FMから、この人のこの歌が流れてくると即座に聞き耳を立てたものです。とにかくAORのヒット曲として、FMで良く流れたなあ。その後、1991年だったか、ホイチョイ・プロの邦画「波の数だけ抱きしめて」 で使われて(これはずるいなあと思った・笑)、再び人気を博しました。あれから、既に20年経ってしまったんですね〜。

確かに、このアルバムの冒頭を飾る「You're Only Lonely」は良い。ロイ・オービソンのパクリと言っちゃえば「それまで」なんですが(笑)・・・。曲を彩るコーラスワークや「なりきりのバック」は、その雰囲気をバッチリ伝えていて、ウエストコースト・ロックの雰囲気からはちょっと外れるんですが、これはこれで、僕は大好きです。

アルバム全体の雰囲気は、LP当時、A面だった1〜4曲目は、当時のAORブームに乗った、ウエストコースト・ロックというよりは、ちょっとトロピカルなAOR的演奏で、ロックとして楽しむよりは、AORとして「トロピカルなムード」を楽しむ感じですね。

僕は、それより、LP当時、B面だった5〜9曲目の方が、ウエストコースト・ロックっぽくて好きですね。曲調がどれも同じ感じなので、ちょっと単調に聞こえるという向きもありますが、そんな「金太郎飴」的なところが、意外とウエストコースト・ロックっぽくて良いのではないでしょうか。

『You're Only Lonely』。僕にとっては、大学時代の後半、とにかく聴きまくったアルバムとして、ちょっと別格のJ.D.サウザーです。

 

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2011年7月28日 (木曜日)

1980年代チックの代表作

このところ、ちょっと涼しい日が続いている。先週の前半までは酷暑。先週後半、台風が来てから北風吹き込み、一気にクールダウン。気温の激変は身体に堪える。こんな時は自分の好きな楽曲で精神的に支える。

そんな時は、一番のお気に入りジャズメンにご登場願う。そう、チック・コリアですね。このところ、Chick Corea Elektric Bandを聴き直しているんだが、今日は『Eye of the Beholder』(写真左)を選択。

エレクトリック・バンドでの3枚目。1988年の作品。ちなみにパーソネルは、Chick Corea (p,syn), Eric Marienthal (sax), Frank Gambale (g), John Patitucci (b), Dave Weckl (ds), John Novello (syn)。エレクトリック・キーボード・トリオとして構想されたChick Corea Elektric Bandであったが、さすがに、キーボードの負担は大きく、サックスとギターを加えてのクインテット編成となっている。ちなみにシンセサイザーで参戦のJohn Novelloはゲスト・メンバー。

最初に言い切ってしまいますが、このアルバムは傑作です。エレクトリック・バンドの演奏フォーマットでありながら、チックのキーボードについては、ピアノがほぼ90%。エレピ関連は1割程度。ギャンバレのギターも生ギターが活躍、マリエンサルのサックスは当然、生楽器だし、パティトゥッチのベースはエレベだけど、ウェックルのドラムは当然、生楽器。

こうやって、楽器編成を眺めてみると、エレクトリック・バンドという雰囲気では無いですね。どちらかと言えば、8ビートを基調としたコンテンポラリー・ジャズでは無いか、と思うんですが、これが違う。リズム&ビートがしっかりとエレクトリック・ジャズしているので、どちらかと言えば、エレクトリックなリズム&ビートを基調としたメインストリーム・ジャズという面持ち。
 

Eye_of_the_beholder

 
演奏を聴くと、少なくとも、リズム&ビートがフュージョン・ジャズでは無い。Chick Corea Elektric Band独特の、デジタルチックでジャジーなリズム&ビートを基調としていて、結構、メンストリーム・ジャズ的な雰囲気が漂う。チックが作曲、編曲する旋律が実にメロディアスなので、一聴するとフュージョン・ジャズか、と思うが、聴き進めるにつけ、これって結構、硬派なエレクトリックな純ジャズではないか、と思うようになる。

チックの作曲による楽曲がどれもメロディアスで美しく、そしてジャジー。しっかりとエレクトリック・ジャズしているリズム・セクションをバックに、ギターが上手く、そのエレクトリック・ジャズな雰囲気を後押しし、逆に、サックスが純ジャズ的な雰囲気を後押しする。

エレクトリックなジャズの演奏の中で、チックは生ピアノの使い方が実に上手い。というか、エレクトリックなリズム&ビートに乗せる生ピアノのセンスは、ジャズ界随一だろう。他の追従を許さない。そんなチックのセンスの良い、エレクトリックなリズム&ビートに乗った生ピアノをふんだんに聴くことできる。このアルバムでのチックのピアノは、本当に溜息が出るほどに絶品である。

しかも、このエレクトリックなリズム&ビートを基調としたメインストリーム・ジャズという演奏コンセプトは、ありそうで他に無い。これぞ、チック・コリアの独壇場。唯一無二なチック・コリアの世界である。ちなみに、チックお得意のスパニッシュ・テイストもしっかりと要所要所にあしらわれている。

良いアルバムです。チック・コリアの入門盤の一枚としても良いかと思います。1980年代のチック・コリアの代表作と言っても良いでしょう。 

 

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2011年7月27日 (水曜日)

やっぱり夏はフュージョン・ギター

やっぱり夏はフュージョン・ギターが良いなあ。それも、刺激的なエレギではなくて、爽快で軽やかなアコギの音が良い。アコギを聴かせるのには、エレギのようなアタッチメントで音を加工することが基本的に出来ないので、かなりのテクニックが必要。ギタリストとしての本質が試される。

今日は、Lee Ritenourの『Rio(イン・リオ)』(写真左)を聴く。リー・リトナーがリオ・デ・ジャネイロに飛び、ベーシックなリズムを収録。さらにロスとN.Y.で最高のミュージシャンを集めてオーバー・ダビングを重ねた国際多重盤。

そんな、このアルバムの録音の背景を聞いた時は「そんな、あほな」と思った(笑)。まあ、リトナーみたいな優れたスタジオ/ミュージシャン出身だからこそ出来る発想だろう。僕ならば、リズム・セクションは目の前にいて欲しい。しっくりいかないリズム&ビートに出くわしたら、即座にその場で修正したいからだ。

しかし、そんな想像だにしない録音背景を耳にして、このアルバムの演奏を聴くと、ソロイスト達の演奏に、何かしら不思議な緊張感が漂っているのを感じる。なるほど、既に録音されたリズム&ビートを前提に、ソロイストはインプロビゼーションを展開しなくてはならない。リズム&ビートの要求に合わせたソロイスト。なんだか立場が逆である。
 
 
In_rio
 
 
1979年のアルバムなので、デジタル臭さは蔓延してはいない。しかし、エッジの立った音像とメリハリの効いたアタック感はデジタル臭さそのもの。それでも、リトナーが奏でるギターは生ギターなので効果てきめん。生ギターが故に、アナログ的雰囲気が良い効果を発揮して、デジタル臭さを上手く相殺している。

タイトルが『Rio』なので、「全曲、ブラジルで録音」と思いきや、先に述べたように、思っていたのですが、リー・リトナーがリオ・デ・ジャネイロに飛び、ベーシックなリズムのみを先に収録。さらに、調べていくと、どうも調べていくと「Rainbow」と「Simplicidad」のリズムセクションがブラジル録音で、他はニューヨーク、あるいはカリフォルニアでの録音みたいです。そう言われてみれば、確かにリズム&ビートの雰囲気が違うように感じます。

なんだか、看板に偽りあり、って感じのアルバムですが、それでも、内容的には、ブラジリアン・テイスト満載。タイトル通りの演奏の雰囲気には脱帽です。実に良くプロデュースされた企画盤とも言えるかと思います。

収録曲の全曲がブラジリアン・テースト。夏にピッタリのアルバム。特に、涼しい夏風が吹き抜ける昼下がりの部屋で、構えること無く、自然な雰囲気で、ずーっと流し続ける、そんな雰囲気にピッタリの「夏盤」です。とにかく、リトナーの生ギターの音が秀逸。難しい理屈無く、良い雰囲気でブラジリアン・テーストを愛でる。良いアルバムです。
 
 
 
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2011年7月26日 (火曜日)

エレクトリック・チックの真髄

暑さが徐々に戻って来た。先週後半は5月下旬の陽気。これだけ寒暖の差が激しいと僕の身体が持たない。体調が優れない時、やはり、好きなジャズメンの演奏を聴くのが一番。そうくれば、僕の場合は「チック・コリア」。

僕はチックのアコースティックも好きだが、チックのエレクトリックの方がもっと好きだ。1980年代に入って、チックがエレクトリック・バンドを結成する、との報に接した時は、喝采の声を上げたものだ。

チック・コリア・エレクトリック・バンド。パーソネルは、Chick Corea (key), John Patitucci (b), Dave Weckl (ds)。それはそれは凄いエレクトリック・バンドだった。エレクトリック・チックの真髄に触れたような、それはそれはイマージネーション溢れるエレクトリック・バンドだった。

ここに『Live From Elario's (First Gig)』(写真左)というライブ盤がある。エレクトリック・バンド結成直後のライヴ録音。トリオでの演奏。ほとんど無名に近い存在であったJohn PatitucciとDave Wecklを従えて、エレクトリック・バンド第一作目の録音前、結成数日というフレッシュな状態でのライブ録音。

これがまあ、凄い内容のライブである。エレクトリック・キーボードを前提としたトリオ演奏なんて、あまり聴いたことが無い。旋律を担当する楽器が基本的にエレクトリック・キーボードしか無い、ということで、どこまで、マンネリ化せずに、飽きさせずにインプロビゼーションを聴かせるか、が勝負である。

チックは戦っている。シーケンサーを駆使しMIDIによって何種類ものデジタル機材をコントロールする。この時のチックの演奏する姿が見たかった。エレクトリック・キーボードと格闘する、美しいチックの姿が目に浮かぶ。
 

Live_from_elarios

 
エレクトリック・バンドの「音のラフスケッチ」の様な、イマージネーションを模索しながらの、圧倒的な内容の演奏です。実にスリリング。聴き耳を立てて、聴き入ってしまいます。縦横無尽なインプロビゼーション。エレクトリック・キーボードを操りながら、同時にイマージネーションを働かせてのインプロビゼーションの展開。

エレクトリックな楽器や機材を熟知し、超絶技巧なテクニックと圧倒的な歌心が無いと、これだけのエレクトリック・キーボードのインプロビゼーションは展開出来ない。

主に旋律を担当するのがエレクトリック・キーボードだけのトリオ演奏なので、楽器の音と音との間にフリーな空間が広がります。そのフリーな空間を浸かって、チックのインプロビゼーションも長尺なものが多く聴くことが出来、これまた、聴き応え十分です。

Dave Wecklの千手観音的な、そして、デジタルチックでポリリズミックなドラム。トリオのエレクトリック・バンドに個性的で強烈なリズム&ビートを供給する。タイトでシャープなJohn Patitucciのベース。圧倒的なテクニックで、旋律担当のチックを要所要所でサポートする。バックに回れば、強靱で弾くようなベースラインで、チックのインプロビゼーションを鼓舞する。

とにかく凄いエレクトリック・トリオな演奏です。とにかくチックが凄い。エレクトリック・チックの真髄、エレクトリック・チックの面目躍如。これほど凄いエレクトリック・キーボード・トリオは他に無いでしょう。

ほとんど編集無しのライブ盤への収録らしく、かなりマニアな音になっていて、内容的には「趣味性」が優先されるかな、とも思います。が、とにかく、チックのファンの方々はこのライブ盤を一度は耳することを是非是非お勧めします。

 

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2011年7月25日 (月曜日)

これぞ「大人のフュージョン」

台風の影響で季節外れの涼しさだったが、いよいよ暑さが戻ってきた。これだけ気温が激変すると体調が持たない。そんな時は好きなジャズやフュージョンを聴くのが良い。

最近、純粋なフュージョン系の音というのも少なくなった。スムース・ジャズ系やクラブ・ジャズ系の音は多々あるが、1970年代を席巻した純粋フュージョン系の音は少なくなった。それでも、まだまだ、純粋フュージョン系の音は脈々と受け継がれている。それも、日本のミュージシャンでの音とくれば万感な想いが駆け巡る。

PYRAMID(ピラミッド)というバンドがある。数多くのプロデュースや人気番組『世界遺産』のテーマで知られるギターの鳥山雄司、ニューズウィーク誌で「世界が尊敬する日本人100人」に選ばれたドラムスの神保彰、全盛期のT-SQUAREを16年間に渡り支えたピアノ・キーボードの和泉宏隆。この3人のユニット。

もとはと言えばこの3人は、慶応大学時代のバンド仲間。「昔に戻ってインストやらない?」と鳥山から他の2人にかかって来た電話からすべてが始まった、とのこと。良いなあ。なんて素晴らしいバンド結成の切っ掛けだろう。

PYRAMIDの音は、一言で言えば「大人のフュージョン」。実に良くアレンジされ、実に良くプロデュースされたフュージョン・ジャズである。鳥山雄司のギターの音が凄く良い、格好良い。和泉宏隆のピアノ・キーボードの音が素敵でフレーズが印象的。神保彰のドラムが個性的で現代的。この3人の音が交われば、フュージョン・ジャズの音とは言え、決して古くはない。それどころか最新の新しい響きがそこかしこに流れていて、それはそれは上質のフュージョン・ミュージックに仕立て上げられている。

彼らの最新作が『PYRAMID3』(写真左)。この作品は、1970年代のクロスオーバーやフュージョンへのオマージュとも言える作品である。1970年代のクロスオーバーやフュージョンをリアルタイムで体験した僕たちには堪らない内容となっているのだ。
 

Pyramid3

 
収録曲を見渡せば、2曲目の「Rhapsody In Blue」が先ず目を惹く。聴けば、そのアレンジは、デオダートのアレンジを踏襲している。しかも、リズム&ビートは今風で新しく、ギターの音は個性的。決して古くはない。現代のフュージョンの響きが溢れている。これ、結構聴きどころ満載です。デオダートのアレンジが如何に優れたものだったかを教えてくれる。

7曲目の「Hang Up Your Hang Up」は、ハービー・ハンコック&ヘッド・ハンターズの名曲・名演。これがまた、PYRAMIDのアプローチは素晴らしくて、決して、1970年代のファンク・ジャズの雰囲気を踏襲していない。まったく新しい、現代のリズム&ビート。そして、決して黒く無く、このPYRAMIDの演奏で漂うファンクネスは、しっかりと「黄色い」。むっちゃ格好良くて、むっちゃ日本人的なファンクネス。凄いアレンジ、凄い演奏テクニックです。

他の楽曲も、どれもが1970年代のクロスオーバーやフュージョンのアレンジやアプローチを踏襲してはいるが、その演奏に漂う響きは最新のもの。特に、ドラムスの神保彰とピアノ・キーボードの和泉宏隆が受け持つ「リズム&ビート」が素晴らしい。むっちゃ現代風なのだ。特に神保彰のドラムは素晴らしい。個性的なポリリズムでありながら、デジタルチックな縦ノリ。といって、スティーブ・ガッドの様なシンプルなノリではない。実に複雑な味わいのあるビートにしばしウットリしてしまう。

クロスオーバーやフュージョンは、最終的には「リズム&ビート」が命となるが、このPYRAMIDの音は、この「リズム&ビート」が個性的。米国には無い、実に個性的な、実に日本的な「リズム&ビート」を聴くことができます。良い感じです。

ちなみに「Rhapsody In Blue」「Love Infinite」「Hang Up Your Hang Up」で、印象的でジャジーなインプロビゼーションを披露してくれるバイオリンは葉加瀬太郎。ベース・サポートは鳥越啓介。ゲスト参加のミュージシャンの好演も見逃せない。

良いアルバムです。1970年代のクロスオーバー&フュージョンのファンであれば、これは聴いて欲しいアルバムです。1970年代のクロスオーバーやフュージョンの名曲・名演が、「新しい響き」と「新しいリズム&ビート」によって、新たに、現代のフュージョン・ジャズの名演として生まれ変わっています。

 

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2011年7月24日 (日曜日)

ドゥービーのライブ音源再発

米国西海岸ロックは大好きなジャンルだが、今でも新しい音源が発掘されたり、廃盤音源が再発されたりと、ファンとしては嬉しい限り。今回は、大のお気に入りバンド、ドゥービー・ブラザースのライブ音源が再発された。

The Doobie Brothers『Live at The Greek Theatre 1982』(写真左)。今年結成40周年記念も兼ねて、1982年の解散の際に集大成として行なった「フェアウェル・ツアー」の最終日、カリフォルニア州バークレー、グリーク・シアターでのステージのライブ録音を再発リリース。ドゥービー後期のライブが聴けるのが嬉しい。

内容的には、解散が決まっているバンドのライブだけに、若干のモチベーションの低下が感じられるのはいざ仕方ない。しかも、「フェアウェル・ツアー」の最終日なので、メンバー全員、ちょっとお疲れの様子。ドゥービー全盛期の「カッ飛ぶ」ような疾走感溢れるワイルドな演奏と比べると、ちょっとダルで、ちょっとアンニュイな演奏になっている。

それでも、ドゥービー後期のナンバーがライブで聴けるのは、これはこれで楽しいもので、例えば、「Minute By Minute」「Takin' It to the Streets」「One Step Closer」など、後期ドゥービーの名曲がライブで聴けるのは嬉しい限り。この後期のドゥービーの曲はライブでの演奏では再現が難しいかと思っていたが、やっぱりドゥービーは上手い。後期の難しい楽曲をしっかりとライブで再現している。
 

Live_at_the_greek_theatre_1982

 
ツアー中に初めてのソロ・アルバムを発表したマイケル・マクドナルドは、大ヒット中だった「I Keep Forgettin'」を披露。後期のドゥービーが「マクドナルド・ドゥービー」であったことを再認識させてくれる。でも、僕はこの後期ドゥービー、「マクドナルド・ドゥービー」が結構気に入っています。このマクドナルドの「I Keep Forgettin'」もなかなかの内容。

そう言えば、CDのボーナストラックである「Little Darling (I Need You)」「One Step Closer」「Dependin' on You」「Real Love」の4曲は、後期ドゥービー、「マクドナルド・ドゥービー」時代の楽曲ですね。これがなかなか良いんですよ。今の耳で聴くと、後期ドゥービーは、ドゥービーの音をしっかりと引き継いだ「AORバージョン」なんですよね。本質的にはドゥービーそのままです。

若干のモチベーションの低下が感じられるバンドとは逆に、ライブに立ち会っているファンは、とにかく熱狂的。地元へ帰ってきての「フェアウェル・ツアー」最終日ということで、ファンは盛り上がりっ放し。「China Grove」では、バンドを離れていた、オリジナル・メンバー、トム・ジョンストンが登場する。その時のファンの熱狂と来たら、それはそれは凄い盛り上がり。

この『Live at The Greek Theatre 1982』は、なかなかのライブ音源だと思います。ドゥービーの前後期通じて、様々な優れた楽曲、演奏を楽しむことができます。ドゥービー・ファンは手にして損は無いと思います。まあ、後期ドゥービーの演奏が入っているので、硬派なドゥービーファンの方々にはお気に召さないかも・・・。でも、後期ドゥービーもなかなか良いと思うんですが・・・。

 

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2011年7月22日 (金曜日)

マイルスの全てが名盤では無い

マイルス・デイヴィスは「ジャズの帝王」。しかし、マイルスのリーダー作だからと言って、全てが全てジャズ界を代表する名盤ばかりという訳では無い。

特に、若かりし頃のマイルスのリーダー作については、マイルスも人の子、若さ故の、チャレンジ精神が先行しすぎた、意余って力足らずなアルバムも少なくない。

この『Miles Davis And Horns』(写真左)などは、その代表的存在。1951年1月と1953年2月のプレスティッジ・レーベルお馴染みに「セッション寄せ集め商法」。

ちなみにパーソネルは、1951年1月の録音は、Miles Davis (tp) Bennie Green (tb) Sonny Rollins (ts -1,2,4) John Lewis (p) Percy Heath (b) Roy Haynes (ds)。1953年2月の録音は、Miles Davis (tp) Sonny Truitt (tb -3) Al Cohn, Zoot Sims (ts) John Lewis (p) Leonard Gaskin (b) Kenny Clarke (ds)。

2つのセッションにおけるメンバーの共通点は無い。しかし演奏のコンセプトについては意外としっかりとしていて、基本的には「対西海岸ジャズ」である。当時の西海岸ジャズの「クールなアレンジ&アンサンブル」について、東海岸ジャズでも、もっとクールに出来るぞ、ってな意気込みが、このアルバムのアレンジと演奏に表れている。

基本的には、1949年録音の『Birth Of The Cool』のアレンジ&アンサンブルが根底にあるんだと思う。それでも、東海岸ジャズメン独特のアバウトさ、ラフさが災いして、西海岸ジャズに対抗できるだけの整然としたアンサンブルになっていないところがご愛嬌。

Miles_davis_and_horns

逆に、演奏の熱気、エネルギーは西海岸ジャズを凌駕するものがあり、西海岸ジャズと同じ土俵である「クールなアレンジ&アンサンブル」で東海岸ジャズが勝負するには無理がある、ということをこのアルバムは示唆してくれている様に僕は感じる。

そういう感想も、僕自身がマイルスのマニアであるからこそ持ち得るもので、普通のジャズ・ファンの方々であれば、この『Miles Davis And Horns』の内容については、全く好意的な評価をする気にはならないと思う。まず、このアルバムのトランペットがマイルスであることすら、思うことは無いのではないだろうか。それほど、このアルバムでのマイルスは個性が前に出ていない。

このアルバムを録音した時期は、マイルスは筋金入りの「ジャンキー」だった時代。アルバムを録音する気構えはあったんだろうが、輝かしいソロを吹ききるだけの気合いには欠けていたと思われる。無難には吹いてはいるが、それ以上の輝きは無い。他のメンバーの演奏も同様。無難に吹いてはいるが、無難に演奏はしているが、それ以上のものは残念ながら無い。

このアルバムは、マイルスのマニア向け。マイルスにはこんな時代もあったんだ、というマニアのコレクション的な目的の為のアルバムであると僕は思います。一般のジャズ者の方々には、決してお勧めすることは出来ません。ジャケット・デザインも意味不明なものですしね。閉口するという意味で「さすがはプレスティッジ・レーベル」orz。

マイルス者であれば、この時代のマイルスの「クールなアレンジ&アンサンブル」が体験できる貴重な盤ではありますが、それ以上でも無くそれ以下でも無い。マイルス者に取っても、手に取るタイミングとしては、他のアルバムに比べてプライオリティが低いアルバムだと思います。

マイルスのリーダー作だからと言って、全てが全てジャズ界を代表する名盤ばかりという訳では無い。でも、マイルスの成長過程を感じるには、避けて通れない盤ではあります。上級マイルス者向け。

 

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2011年7月21日 (木曜日)

新しい響きのバップ・ピアノ

台風の影響で、かなり涼しい千葉県北西部地方。5月下旬の陽気。これだけ涼しいと純ジャズもOKである。

なでしこジャパンのW杯制覇に代表されるように、最近の日本人女子の活躍は見事である。ジャズの世界でも、このところ、ずっと女性中心である。出てくる若手有望株は、ほとんどが女子。ピアノ、サックス、フルート、トランペット・・・。一昔前は、女子ジャズ・ミュージシャンと言えば、ピアノがほとんどだったが、担当楽器も幅が出てきた。

最近、我がバーチャル音楽喫茶『松和』で良くかかる日本人女子のピアノ・トリオ盤がある。松本 茜の『Playing New York』(写真左)。2009年10月の録音。ちなみにパーソネルは、松本 茜 (p), Nat Reeves (b), Joe Farnsworth (ds)。

これがまあ、聴いて頂くと判るのだが、実にユニーク。冒頭の「Playing」のピアノを聴くと「あれっ」と思う。最近のジャズ・ピアニストの定番スタイルである、ビル・エバンス〜チック・コリア路線、若しくは、ビル・エバンス〜ミッシェル・ペトルチアーニ路線では全く無い、明らかな「バップ・ピアノ」なのだ。2曲目のバラード曲「Twilight」を聴くと、さらにその印象は強くなる。これ、絶対にバップ・ピアノだよな。

これだけあからさまな「バップ・ピアノ」は最近、なかなか聴けない。よって、これは誰が弾いているんだか、さっぱり判らない。テクニックも優秀。指の回りも良く、タッチもしっかりしている。ただ、黒人独特のタッチの粘りが無いので、このピアノは黒人のものでは無いことだけは辛うじて判る。
 

Playing_new_york
 
5曲目の「Relaxing At Camarillo」の選曲を見るだけで、これはもう口元が緩む。「Relaxing At Camarillo」と言えば、トミー・フラナガンの大名盤『オーバーシーズ』での演奏が真っ先に浮かぶ。これもバップ・ピアノ。ラストの「Sunset And The Mockingbird」のバラード演奏を聴いて、やっと、これは最近デビューした、若手ジャズ・ピアニストのものであると確信する。音の響きとアドリブのアプローチが「今様」。

この「バップ・ピアノ」を弾きこなす松本茜とはいかなる女子か。2008年5月、弱冠20歳で自身のトリオでアルバム・デビュー。当時、まだ現役の女子大生という正真正銘の新世代ジャズ・アーティスト。2010年春には大学も卒業。卒業前年の2009年の秋、ニューヨークに渡り、現地のベテラン・リズムセクションを従えて録音した作品が、2枚目のリーダー作『Playing New York』。
 
いろいろなインタビュー記事を読んでいると、小学生の時に、オスカー・ピーターソンを聴いてジャズ・ピアノに目覚め、様々なピアニストを聴き進め、そして、出会ったお気に入りのピアニストがフィニアス・ニューボーンJr.。う〜ん渋い。というか、珍しい。フィニアスかあ。エロール・ガーナーやアート・テイタムなどもお気に入りというから、最近の若手ピアニストとしては異色。

ただ、フィニアス・ニューボーンJr、エロール・ガーナー、アート・テイタムと言われて合点がいった。なるほど、フィニアス仕込みのバップ・ピアニストなスタイルだし、和音の響きはガーナー仕込み。良く回る右手は、確かにテイタム・ライク。それでも、彼らのコピーに留まらず、しっかりと彼女の個性を織り交ぜて、現在のジャズ・ピアノシーンの中で、独特の個性を確立している。

とにかく聴いていてとても楽しい。「新しい響きのバップ・ピアノ」とでも形容しようか。速いテンポのバップ・チューンは確かなテクニックと良く回る右手で「爽快感抜群」。しみじみとしたバラード曲はしっかりとしたタッチと女性らしい繊細な響きが「透明感抜群」。女性ならではの「ひ弱さ」は全く微塵も無い。僕は最初聴いた時は、男性ピアニストだとばっかり思っていた。

ラストのエリントンナンバー「Sunset And The Mockingbird」が絶品です。この曲での松本のピアノは、バップ・ピアノのマナーを漂わせながらも、クラシカルな独特な響きのタッチを織り交ぜて、なかなかに正統派ジャズ的な、個性溢れる演奏を聴かせてくれる。

うむむ、松本茜。彼女は「ただもの」では無い。既に、次のリーダー作が楽しみだ。

 

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2011年7月20日 (水曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤・22

マル・ウォルドロンのタッチは硬質で端正。当初は、欧州系のジャズ・ピアニストだと思った(事実、マルは1965年に渡欧し、1966年にはイタリアに定住、晩年にはベルギーに移住している)。

しかし、硬質なタッチの底に、もやっとした黒いブルージーな雰囲気が横たわっている。そして、端正な弾きこなしの端々にラフな指さばきが見え隠れする。この「黒い情感と適度なラフさ」がマルの特徴。

そんなマル・ウォルドロンの特徴をガッチリと感じる事の出来るトリオ盤がある。ECMレーベルにとって記念すべき第1弾となった作品。そのタイトルは『Free at Last』(写真左)。

タイトルだけみると、フリーキーな内容のアルバムか、アブストラクトな内容の演奏か、と構えそうになるが、そうではないのでご安心を。1969年11月24日の録音である。ちなみにパーソネルは、Mal Waldron (p), Isla Eckinger (b), Clarence Becton (ds)。今から思えば、ベースとドラムの二人は無名と言えば無名。

5曲目のスタンダード「Willow Weep For Me」を除けば全てマル・ウォルドロンのオリジナル。しかし、5曲目のスタンダードが一番、マルのピアノの特徴を強く感じることが出来る。それがまた、スタンダード曲の良いところ。他のピアニストの演奏と比較することが出来る。

マルのタッチは硬質で端正。でも左手が凄くラフ。右手の旋律が特徴的で、意識的にではあるんだろうが、必ずマイナーに傾く。そのマイナーなタッチが「黒い情念」と表現される所以。しかし、その左手のベースラインとタッチは、どちらかと言えば「ラフ」。

そういう意味で、そのベースラインをガッチリ支える、はっきりと判り易く存在感のあるベーシストが必須になる。そういう意味で、ベーシストのIsla Eckingerは実に健闘している。

Free_at_last

左手がラフだと、リズム&ビートがラフになる。そういう意味で、確実にリズム&ビートを刻みキープするドラマーが必要になる。そういう意味で、ドラマーのClarence Bectonは実に健闘している。

マル・ウォルドロンのピアノが「黒い情念」として輝くには、はっきりと判り易く存在感のあるベーシストと確実にリズム&ビートを刻みキープするドラマーが必要となる、と僕は思う。そういう意味で、この『Free at Last』は、マルの代表的名盤に挙げられる。

しかし、マルのタッチは一本調子と言えば一本調子。そういう意味で、この『Free at Last』はマルの代表盤ではあるが、これ以上の内容のトリオ盤は無い、ということも言える。逆に、マルのピアノをガッチリと感じるには、実はこの『Free at Last』一枚で十分とも言える。後の楽しみは「企画盤」。

確かに、この『Free at Last』は実に良く出来たピアノ・トリオ盤である。本当にマルのピアノの特徴を如実に現している。そう言う意味で、さすがECMレーベル、さすがはECMの総帥マンフレット・アイヒャーである。

十分に打合せされ、十分にリハーサルを積んだことが、このアルバムの出来を聴いてとても良く判る。他のマルのピアノ・トリオ盤とは違う「出来の良さ」「きめ細やかな配慮」「堅実なプロデュース」を感じる事が出来る。このアルバムがECMレーベルにとって記念すべき第1弾だったこと十分に実感出来る。

マル・ウォルドロンのタッチは硬質で端正。しかし、硬質なタッチの底に、もやっとした黒いブルージーな雰囲気が横たわっている。そして、端正な弾きこなしの端々にラフな指さばきが見え隠れする。この「黒い情感と適度なラフさ」がマルの特徴。

そのマルの特徴が如実に理解出来る、この『Free at Last』はマルの代表作。しかし、マルのピアノは決してメロディアスでも無ければ、ロマンティックでも無い。ちょっと取っつき難いのは確か。ジャズ者初心者の方々には「是非に」とは言いません。ジャズを聴き始めて5〜6年経って、なんだかジャズが面白くなった、というジャズ者中級者の方々にお勧めの名盤でしょうか。

 

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2011年7月19日 (火曜日)

酷暑の夏は「バイオリン・ジャズ」

今年の夏は酷暑。しかも蒸し暑い。もうハードな純ジャズは駄目。暑くて駄目。出来る限り爽快感のあるシンプルなジャズが良い。爽快感ってなあ、っと思案投げ首していたら、「バイオリン・ジャズ」を思い出した。バイオリンの音って、シンプルな爽快感がありますよね(ちょっと強引か?)。

ジャズにおけるバイオリンの存在は、かなり異端な存在で、海外でも、ジャズ演奏家としての有名どころは、ステファン・グラッペリをはじめ、数名を数える程度。楽器としては、基本的には、ジャズ・ベースと同じ弦楽器なので、楽器としての構造上、ジャズの旋律が弾きにくいという訳ではないのだが、なぜか、ジャスのジャンルで、バイオリンをソロ楽器として、弾きこなすミュージシャンはとても少ない。

その、なぜか異端的な楽器、バイオリンを引っさげて、寺井尚子がデビューしたのが、1998年。まず、そのデビューに関する記事を雑誌で見たときは、その顔立ちとスタイルの良さとバイオリンによるジャズ演奏という物珍しさから、人気優先型のいわゆる「レコード会社によって、売るために作られたミュージシャン」だと思った。
 

Thinking_of_you

 
そのデビュー盤が『Thinking of you』(写真)。寺井尚子の顔立ちの良い容貌と「ジャズでバイオリンを弾きこなす」ということが何故かアンバランスで、実に作為的に感じたのだった。故に、当初は避けて通った。が、このデビュー盤の1曲目と3曲目、10曲目を見て、「これはちょっと聴いてみるか」という気になった。

その1曲目は、名盤「ブルースの真実」中の名曲「ストールン・モーメンツ」。そして、3曲目は、ビ・バップの名曲、チャーリー・パーカーの名演で有名な「ドナ・リー」。10曲目は、ジャズの高僧、その特徴的な旋律で、ワン・アンド・オンリーな光彩を放ち続けるセロニアス・モンクの「ストレイト・ノー・チェイサー」。

いずれの曲も、正統派ジャズの代表的名曲中の名曲で、この名曲を、デビューアルバムで、しかも、バイオリンで演奏するなんざあ、ひ弱なタレント・ミュージシャンのすることでは無い、と感じたのだ。

そして、「買って正解、聴いて正解」。そのテンションの高い、チャレンジブルな内容は、特筆に値する。バイオリンを使ったジャズ演奏が、こんなに楽しいものとは知らなかった。特に、10曲目の「ストレート・ノー・チェイサー」なんぞは「かっこええなあ」の一言。彼女自身の自作の曲もなかなかの出来で満足。見かけで判断は禁物、まずは聴くべし。

 

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2011年7月18日 (月曜日)

なでしこジャパン、世界一じゃ〜

いやいやいやいやいや、世界一です。W杯を取りました。なでしこジャパン、快挙です。PK戦を制した瞬間、いや〜久しぶりに思わず大声で「歓喜の雄叫び」をあげました。「うぉぉぉ〜勝ったぁ」。

思い起こせば、1995年、第2回FIFA女子世界選手権スウェーデン大会での準々決勝敗退を見守って以来、3大会連続、W杯に出るには出るんだが予選リーグ敗退が続き、やはり、男子でもしんどいW杯、女子でもやっぱりだめか、と思い始めていたら、昨年のアジア競技大会サッカー競技で北朝鮮を破って優勝したことで、今回はいけるかなと思い出した。

そして、W杯ドイツ大会である。僕は、初戦が全てだったと思っている。ニュージーランド戦は引き分けで終わると諦めていたところで、宮間のフリーキック一発。W杯初戦はどれだけ強いチームでも勝ちきるのが難しいというが、強いチームというのは、優勝するチームというのは、必ず決めるところで決めて勝利を手にする。それが出来た。今年のなでしこは違うと思った。

それからの快進撃は皆さんの知るところ。イングランド戦の敗戦も良い方向に解釈できて、ドイツ、スウェーデンを連破。でも、米国に勝てるとは思っていなかった。65%の確率で敗戦すると予想していた。それが、である。延長引き分け、PK戦の末の勝利。特に、日本はPK戦に弱いだけに感無量である。

世界一です。なでしこジャパン。おめでとう。ワールドカップを取りました。世界一です。素晴らしい。いかなる経緯(例えばPK戦)であれ、カップ戦を勝ちきったことが素晴らしい。他のチームも条件は同じですから。戦術・テクニック・メンタル面、そして選手達の人格。全てが備わっての世界一です。素晴らしい。

日本サッカー史上、初めての世界一。女子だからとか、男子とレベルが違う、とか見当違いなことを言ってはいけません。日本女子サッカーは強化を初めてまだ10年程度。世界のレベルからは、まだまだ発展途上のレベルでした。それを乗り越えての世界一。選手・スタッフ一丸となった努力の成果です。

Womens_wc

こんな時の音楽は、まずは「FIFA アンセム」でしょう。これはサッカーを愛する者たちにとっては「聖歌」のようなもの。時代毎に様々なアレンジが施されていますが、やはり最新版でしょう。国際Aマッチでしか流れない「聖歌」。当然W杯の試合ではこれが流れる。1970年代〜1980年代は、僕たちにとっては憧れに過ぎず、1990年代は現実のものにはなったが、成果を上げるにはほど遠い「世界との差」。「FIFA アンセム」を勝利の曲としてきく強豪国を羨ましく思ったものです。

そして、21世紀になっても「世界との差」を痛感させられたが、男子はやっと昨年、W杯南アフリカ大会で2度目のベスト16を体験。やっと「世界との差」も縮まっていくだろう、との実感を持つことが出来、そして、今年の女子W杯ドイツ大会である。うまくやればカップは取れるか、とも思ったら、やはり本戦は厳しい戦いの連続たっだ。しかし、まだまだ「伸びしろ」を残したチームでの世界一は、まだまだこれからが期待できます。

感無量です。今でも、PK戦を決めた瞬間を思い出すと目頭が熱くなります。生きている間に男女に限らず、サッカーのW杯でカップを取る瞬間を、この目で見ることが出来るとは思いませんでした。しかも、日本の苦手なPK戦を制してのW杯制覇。長生きはしてみるもの。思いは諦めないもの。やっぱり、ファイナルに出たからには世界一じゃないといけない。やっぱりファイナルは勝たないといけない。

なでしこジャパンがW杯を取ったら何を聴こうかと思っていたが、サッカーで勝利を収めたらやっぱりこれだろう。クイーンの「伝説のチャンピオン(We Are The Champions)」。クイーンの第6作目のアルバム『世界に捧ぐ(News Of The World)』の2曲目に収録された、名曲中の名曲である。最近、採用されないケースが多くなったみたいだが、以前は、FIFAまたはUEFA主催のサッカー大会にて、決勝戦の表彰式のBGMに使われていた。

この曲をバックにW杯を高く掲げることができるのは、決勝戦での勝者のみ。そして、今日、日本人として初めて、なでしこジャパンがこれを達成した。感無量である。

We are the champions - my friends
And we'll keep on fighting
Till the end
We are the champions
We are the champions
No time for losers
'Cause we are the champions of the World

 

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2011年7月17日 (日曜日)

真夏向けの「爽やかなデュオ盤」

暑い。酷暑とはこのことである。節電モードで、出来る限りエアコンは控えようと思うのだが、これだけ暑いとそれもままならない。流石に今日は日中、エアコンの設定温度を限界まで上げて、ちょっとだけエアコンを入れてみた。一息つく。熱中症には気を付けなければ・・・。

エアコンのお陰で一息ついて、ジャズのアルバムを聴いてみる。酷暑の夏に、熱気ムンムンのハードな純ジャズは御法度。実は、酷暑向けのジャズ盤というのもいろいろと選択してある。例えば、Charie haden & Pat Metheny『Beyond The Missouri Sky』(写真)。

邦題は『ミズーリの空高く』。ジャケットもアメリカ中西部の突き抜けるような夕空の写真があしらわれていて、このアルバムはタイトルからして、夏の高い空をイメージするようなタイトルだ。

アメリカのあっけらかんとした、どこまでも続くような広大な大地と、その上に、あくまで高く、様々な表情を浮かべながら広がる青空と雲。そして、頬をなでながら、髪を揺らしながら、大地を駆け抜けていく風。夏の季節の中、そんな気分を感じながら、耳を傾けることのできる名盤。

淡々と、チャーリー・ヘイデンのベースとパット・メセニーのギターが対話を繰り広げる。

Beyond_the_missouri_sky

静謐な、凛としたデュオ。夏の昼下がり。静かな縁側に、遠くで聞こえる風鈴のような、そんな涼しげなデュオが、淡々と繰り広げられる。俗世の煩わしさを何もかも忘れて、ボケーッとして聴き入ってしまう、そんな純粋な演奏。

そして、時折、ギターの躍動感溢れるリズムに乗って、アメリカの広大な大地を彷彿とさせる、爽やかに吹き抜ける風のような曲が現れて、聴く者をハッとさせ、ニッコリとさせる。

このアルバムは夏に疲れた心にピッタリ。たまの休みの昼下がり。時には、ビールを奢って、一杯やりながら、このアルバムに耳を傾ける。

「今日も夏空が高いなあ」
「蝉の鳴き声をじっくり聞くのは何年ぶりだろう」
「昔も今も入道雲は想像力をかきたてるなあ」 
「ああ、かき氷が食べたいなあ」
「風に吹かれて、昼寝でもするか」 
「風鈴の音って、涼しいんだ」

なんていう心の独り言が出てきたら、あなたの心は充電完了。そんな充電作業を手助けしてくれるグッドなアルバムです。

 

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2011年7月16日 (土曜日)

コンセプトは「フィリー・ソウル」

フィラデルフィア・ソウル、略して「フィリー・ソウル」。1970年代前半に一世を風靡したフィラデルフィアを拠点としたソウル・ミュージックの1ジャンル。

そのフィリー・ソウルの中核、フィラデルフィア・インターナショナル・レコードの設立者であり、プロデューサー&ソングライターであるケニー・ギャンブル&リオン・ハフ、略して「ギャンブル&ハフ」。その最盛期は「12分ごとに世界のどこかでギャンブル&ハフの曲がラジオから流れている」とまで言われた。

そんなフィリー・ソウルを、ギャンブル&ハフの大ヒット曲集を中心にカバーした秀逸なフュージョン・ギター盤が出現した。ラリー・カールトン(Larry Carlton)の『Plays the Sound of Philadelphia - A Tribute to the Music of Gamble&Huff and the Sound of Philadelphia』(写真左)。えらく長いタイトルやなあ(笑)。

確かに、1970年代前半、深夜ラジオやFMで、フィリー・ソウルの代表曲はしばしば耳にした記憶がある。ソウル・ミュージックが好きだったからなあ。モータウンと共に「フィリー・ソウル」は大のお気に入りである。

時は流れて2011年。ラリー・カールトンが、このフィリー・ソウルの有名曲の数々をカバーした企画盤をリリースした。これがまあ、実に素晴らしい内容なのだ。
 
Play_philadelphia
 
ありそうでなかなか見当たらなかった、フィリー・ソウルのカバー、フィリー・ソウルを題材にしたジャズ。この素晴らしい企画盤で、ラリー・カールトンは、伝家の宝刀であるギブソン・ES-335で、フィリー・ソウルの名曲の数々を歌い上げていく。

さすがはカールトン。ギブソンES-335の芯の入ったメロウな響きを駆使して、フィリー・ソウルの名曲のフレーズを慈しむように歌い上げていく。1970年代米国ポップの王道の旋律を歌心溢れるインプロビゼーションで彩っていく。

こうやって聴いていると、どうして今までこの企画が眠っていたのだろう、と思う。とにかく、カールトンのギブソンES-335の音色は「フィリー・ソウル」にピッタリ。

収録されている曲はどの曲も素晴らしい出来で甲乙付け難い。見事である。米国ポップの雰囲気がプンプンして、米国ルーツ・ミュージック好きには堪えられないカバー盤です。フュージョン・ファンにとっては、手にして決して後悔はしないと優秀盤だと思います。

もちろん、松和のマスターである私も、米国ルーツ・ミュージックの大ファンですので、このカールトンの『Plays the Sound of Philadelphia』はキッチリとヘビーローテーションな一枚になっています。

 

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2011年7月15日 (金曜日)

中堅ベーシストの優れたライブ盤

暑い暑いと言っていても始まらないので、爽快感溢れるライブ盤を。Christian McBride『Live At Tonic』(写真左)。

つい先日、ベーシストのリーダー作は難しいという話をしたが、当然、優れた盤もある。マクブライドはベーシスト。このライブ盤、重量感+爽快感溢れるコンテンポラリー・ジャズ。ロウワー・イーストサイドのライブハウスTonicでの2005年1月の3枚組のライブ盤である。

ちなみに、パーソネルは、Christian McBride (ac-g, el-g, ac-b, el-b), Jenny Scheinman (vln), Rahsaan Patterson (tp), Geoff Keezer, Jason Moran (p, key), Terreon Gully (ds); Scratch (back-vo), Eric Krasno, Charlie Hunter (g), DJ Logic (turntables)。

1枚目はマクブライドのバンドだけでの演奏。これが良い。メインストリーム・ジャズを基本としながらの、新しい響きを宿した上質なコンテンポラリー・ジャズとなっており、いかにも今風のジャズ、21世紀の純ジャズという雰囲気が実に格好良い。

マクブライドはリーダーとして、演奏の全体をしっかりと統率している。しかも、マクブライドの重低音ベースは、それぞれの演奏にしっかりとメリハリを付けている。意外と目立つマクブライドの重低音ベース。

2枚目はチャーリー・ハンターらをゲストに迎えたフリージャムっぽい演奏。これもまた良い。メインストリーム・ジャズというよりは、純ジャズの雰囲気を隠し味にしたフュージョン・ジャズという音が、これまた実に格好良い。
 

Live_at_tonic

 
途中で、どこかで聴いたことがある、というか、かなり聴いたことがあるフレーズが出てくる。そう、これは「Bitches Brew」。マイルスの大名曲を21世紀のジャズメンが演奏する。良い雰囲気だ。さすが、ライブならではの面白さ。

3枚目はターンテーブルでのスクラッチなどを前面に押し出したクラブ系の演奏。スクラッチを大々的にジャズ化したのは、ハービー・ハンコック。1983年のことだった。21世紀に入ったこの演奏では、もうスクラッチには違和感は無い。

ただ、スクラッチは目に見えるパフォーマンスと相まって楽しさ倍増になるんだが、ライブ盤ではそのパフォーマンスは目にすることができないので、好くタッチの演奏が続くと、ちょっと冗長な感じがするのは仕方の無いことかな。でも、熱気はビンビンに伝わってくる。

総合的に聴いて、曲毎のアレンジがとても良く、マクブライドの優れたリーダーシップが見事。良いライブ盤です。

この『Live At Tonic』を聴いていて、こんな洒落たライブがNYでは、夜な夜な、ライブハウスで繰り広げられているんやなぁと羨ましくなった。よくよく聴いていると、相当、高度で内容のあるパフォーマンスばかり。これ、本当に凄いことです。

そして、このCD3枚組は実にリーズナブルなお値段。約2500円程度とはお買い得。ライブの様子を、いじることなく丸々収録しているようで、確かに手がかかっていない。それが、恐らくお買い得価格の理由なんだろうが、部分的に冗長なところがあるだけで、内容はかなり良い。よって、今風の、今のコンテンポラリーなジャズを体験するには打ってつけのライブ盤だと思います。

 

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2011年7月13日 (水曜日)

真夏の夜の「エレ・ハンコック」

今でも真夏になると決まって思い出す。そして、またCDプレイヤーのターンテーブルに載せる。そして、その内容に改めて感じ入る。そして、このアルバムを聴きまくった、今からかれこれ30年前の真夏を思い出す。

そのアルバムとは、Herbie Hancockの『Mr.Hands』(写真左)。1980年9月のリリース。内容的には、それまでのレコーディング・セッションでお蔵入りになっていたテイクの中からの選曲。いわゆる「アウトテイク集」である。

しかし、このアルバムの内容は普通の「アウトテイク」の集まりでは無い。アルバム全体に統一感があり、その内容たるや、1970年代エレクトリック・ハンコックの集大成と呼べる、素晴らしい内容の「アウトテイク集」である。

5曲が選曲されている。アウトテイク集なので、曲毎にパーソネルは異なる。Ron Carter (b), Leon Chancler (ds), Paul Jackson (b), Harvey Mason (ds), Alphonse Mouzon (ds), Jaco Pastorius (b), Bill Summers (per), Wah Wah Watson (g), Tony Williams (ds)等々、凄いメンバーばかり。

これだけ凄いメンバーが集って、それぞれの演奏を担当するのだ。そりゃ〜、その内容足るや、素晴らしいものばかりなのは当たり前と言えば当たり前。しかも、ハンコックのエレピとアコピのパフォーマンスが凄い、ときている。このアルバムに収録されている演奏の「どこがアウトテイクなのか」と思ってしまう位だ。
 
 
Mr_hands
 
 
例えばラストの「Textures」は、ハンコック一人のオーバーダブによる作品。これがまた、キーボード・チューンとして秀逸の出来。ハンコックのキーボーディストとしての才能全開である。凄い。決して目を見張るような超絶技巧なテクニックが展開されている訳では無い。でも、音の選び方、間合いの取り方、フレーズのバリエーション。どれをとっても「只者では無い」ことが判る。

他の曲もハンコック本人含めて、オーバーダブが施されているそうだが、そんなの全く気にならない。それほどに趣味の良いオーバーダブが施されていて、その効果たるや抜群である。だって、オーバーダブされているのが判らないんだからね。

僕は特に、ジャコ・パストリアスが参加した「4 A.M.」が大のお気に入り。このアルバムに収録されている演奏は全てそうだが、従来のエレ・ハンコックの様なファンク色は少なく、内容的には、メインストリーム・ジャズと言って良いほどの、「純ジャズ」的な要素を演奏の底に織り交ぜた、実に硬派なコンテンポラリー・ジャズである。

実は、僕は、この「アウトテイク集」を聴いて初めて、ハンコックのエレクトリック・キーボーディストとしての才能に感服した。脱帽である。このアルバムについては「説明はいらない」。とにかく、ジャズ・キーボード、フュージョン・キーボードの好きな方は、一度はこのアルバムは聴いて欲しい。素晴らしい内容です。聴けば判る。

30年前の夏、昼は就職活動、夜は卒論執筆というハードな環境の中で、この『Mr.Hands』はヘビー・ローテーションな一枚だった。暑い夏だった。この『Mr.Hands』は卒論執筆の「ながらの友」。きっとその体験がずっと頭の中に残っていて、今でも真夏になると決まって思い出す。そして、またCDプレイヤーのターンテーブルに載せる。そして、その内容に改めて感じ入る。
 
 
 
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2011年7月12日 (火曜日)

メル・トーンズの楽しいヴォーカル

暑いさなか、汗が飛び散るような純ジャズは、ちょっと辛い。お洒落にアレンジされた西海岸ジャズに手が伸びる。

マンハッタン・トランスファーを聴き直して以来、ちょっとボーカル・グループづいている。たしか、アート・ペッパーが伴奏を務めた、ボーカル・グループのアルバムがあったなあ。確か、メル・トーメが絡んでいたような・・・。

そうそう、ジャズ・コーラスの元祖メル・トーンズ! そして、アート・ペッパーら、当時の西海岸ジャズの一流ジャズメンがバックを務めたアルバム『Back in Town』(写真左)。そうそう、あったあった。これこれ。

メル・トーンズと言えば、男性ボーカリストの雄、メル・トーメをリーダーに他4人の、合わせて5人のコーラスグループ。これがなかなか、お洒落で端正なコーラスで、西海岸ジャズのお洒落で良くアレンジされたバックとピッタリの相性で爽快感抜群。

1959年4月、ロスでの録音。メル・トーンズの楽しいヴォーカルをバックアップするのが、アート・ペッパー、ジャック・シェルドン、ヴィクター・フェルドマンなどを擁するマーティ・ペイチ楽団。ちなみにパーソネルを改めて列挙すると、Victor Feldman (vib), Marty Paich (p,org), Art Pepper (as,ts), Jack Sheldon (tp), Bobby Gibbons (g), Joe Mondragon (b), Mel Lewis (ds)。
 

Back_in_town

 
アート・ペッパーは、珍しくテナーとアルトの両方を吹いている。伴奏に徹しているので、長々とペッパーのソロを聴ける訳では無いが、伴奏での瞬間芸の様な、短いソロ・パートが実に魅力的。

多くは語らないが、短い語り口で言いたいことを全て言い切っているような、素晴らしいソロ・パートが輝いている。トランペットのジャック・シェルドンも好演。ペッパーと同じく、短いソロ・パートが実に魅力的。ペッパーもシェルドンもとても楽しそう。

そして、徹頭徹尾、西海岸ジャズしていて、お洒落に端正にアレンジされた、マーティ・ペイチのアレンジが実に良い。そして、ころころと転がるような、綺麗な音色のペイチのピアノも良いんだなあ。珍しくオルガンも弾いている。これもなかなか端正でお洒落。

決して出しゃばらないバックバンド。あくまで、フロントのボーカル・グループを盛り立てる。それでいて、しっかりと存在を主張するアレンジ。参考になる。一度、スコアを真似して書いてみたい。そして、演奏してみたい。それほどまでに、ペイチのアレンジは良い。お気に入りである。

よくアレンジされた、クールな西海岸ジャズをバックに、メル・トーメをリーダーに他4人のお洒落で端正なコーラス。これがなかなかでお勧め。シンプルでふくよかな爽快感で涼を誘ってくれる。いやいや、西海岸ジャズもなかなか良いなあ。 

 

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2011年7月11日 (月曜日)

熱気溢れるジャズで爽快感

暑い。いきなり梅雨が明けてしまった我が千葉県北西部地方。一昨日から酷暑の毎日。湿気ムンムン、熱風ムンムン。ここまで蒸し暑くなると、音楽を聴く気も無くなる。出来るだけ涼を呼ぶ選盤を、と思うが限度がある。そんな時は、もう暑いのを逆手にとって、熱気ムンムン、熱気溢れるジャズに走るって言うのも、逆効果で良いかも・・・(笑)。

暑い夏に、熱気ムンムン、熱気溢れるジャズで爽快感を、という向きには、やはりラテン・ジャズ、そして、ジャズ・ロック。ブラス炸裂のラテン・ジャズ、若しくは、ジャズ・ロックが良いよな〜。

そんなことを思いつつ、なんか良い盤ないかなあ〜、なんて物色していたら、おぉ、あったあった。最近、リリースされた盤。Yuji Ohno & Lupintic Five『Let's Dance』(写真左)。

Yuji Ohno & Lupintic Five。ちなみにパーソネルは、大野雄二 (p), 江藤良人 (ds) ,俵山昌之 (b),松島啓之 (tp), 鈴木央紹(ts), 和泉聡志 (g)。ゲストヴォーカルに中納良恵(EGO-WRAPPIN’)が参加。オリジナルとしては約2年ぶりの「ルパン・ジャズ」の最新作になる。

Lets_dance

とにかく楽しいアルバム。ラテン・ジャズあり、ジャズ・ロックあり、ジャズ・バラードあり、ボサノバ・ジャズあり、徹頭徹尾、「趣味の良い粋な遊び」に満ちており、聴いていて「とても楽しい」。とにかく「とても楽しい」。爽快感抜群である。

全編に渡ってブラス炸裂ってところが格好良い。ジャズ・ロックな演奏では、ギンギンのエレギが実に格好良い。底を支えるリズム&ビートは、紛れもないジャズ。そんなベースとドラムが奏でる「ジャジーなリズム&ビート」が格好良い。中納良恵のボーカルも「ルパン」って感じで格好良い。雰囲気抜群。このアルバムの演奏は、ジャズだフュージョンだ、という前に「格好良さ」が満ちあふれている。

暑いのを逆手にとって、熱気ムンムン、熱気溢れるジャズに走る。そんなジャズって、フュージョン的な取っ付き易さと、爽快感抜群のスピード感、そして、底にしっかりと流れる「ジャジーなリズム&ビート」。とにかく楽しいジャズが良い。とても楽しいジャズが良い。そんな「とても楽しいジャズ」を具体的に音に出して、惚れ惚れとさせてくれるのが、この『Let's Dance』。

難しい理屈はいらない。これもジャズ。踊れて楽しい。それだけでジャズ。それだけでジャズで・・・良いじゃないか。『Let's Dance』を聴いて改めてそう思った。ジャズを楽しむのに難しい理屈はいらない。

 

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がんばろう日本、がんばろう東北。自分の出来ることから復興に協力しよう。

2011年7月10日 (日曜日)

マーキュリー時代の力業的佳作

ロッド・スチュワート(Rod Stewart)が、実のところ、やりたい音楽を好きなだけやり尽くしたファースト・アルバム『An Old raincoat Won't Ever Let You Down』。しかし、セールスはふるわなかった。全米139位。

セカンド・アルバムについては、やはりロッドは売りたいと思った。売れたいと思った。そう解釈せざるをえないほど、キャッチャーな内容に大変身した、ロッド・スチュワートのソロ・セカンド・アルバム『Gasoline Alley』(写真左)。トラディショナル・フォークやブルースに傾倒した音楽性をそのままに、聴き易くキャッチーに仕立て直したロッドの傑作。1970年のリリース。

冒頭のタイトル曲「Gasoline Alley」を聴けば良く判る。音の響きが、なんとなく郷愁をそそる。アイリッシュ的な雰囲気というか、スコットランドのフォーキーな雰囲気というか、とにかく英国のトラッド・フォークな雰囲気がそこはかとなくする。これが英国人の心の中の音楽的郷愁を刺激する。

これが功を奏したか、全英62位・全米27位。全英62位はちょっと不満だったろう。しかし、渡米したピルグリム・ファーザースの末裔の英国人の心を刺激したのか、全米27位は大躍進。おそらく、アルバムを「売る」ということについては、ロッドは、このアルバムで「コツ」を掴んだに違いない。次のサード・ソロ・アルバムで大躍進を遂げることになるのだが、それについてはまだ後日。
 
Gasoline_alley
 
土臭いフォーク・ロックがロッドには良く似合う。ロッドの好みはR&Bであることは良く判るし、R&Bを歌うロッドは実に魅力的ではあるが、R&Bはアフリカン・アメリカンの血が成せる音楽ジャンル。所詮、ロッドはそのカバーに過ぎない。しかし、英国のトラッド・フォークをベースにしたフォーク・ロックは自家薬籠なもの。R&Bの泥臭さを掛け合わせた英国のトラッド・フォーク・ロックは、ロッド・スチュワートの最大の個性になった。

この『Gasoline Alley』は、ロッドのディスコグラフィーでは、ロッドのマーキュリー時代の最高作とされる。しかしなあ・・・。全英62位・全米27位というチャート・ランキングが物語るように、まだまだ大衆性という部分で課題をはらんでいる。

僕は、ロック入門本でよく語られるような、この『Gasoline Alley』は、ロッドのマーキュリー時代の最高作である、という意見には異論がある。どうしても強引さが見え隠れするところがねえ。しかし、内容的にはなかなかの内容なので、所謂、力業的な佳作だと思います。

いろいろと違和感は残るが、力でねじ伏せたような、ロッドの力業を感じる事ができるアルバムです。もう少し自然で円やかな表現にならないか。それは次作、サードアルバムで、ロッドはさらりと実現してしまいます。
 
ちなみに、アルバム・ジャケットのデザインは2種類あります。写真左は「米国盤仕様」、写真右は「英国盤仕様」。昔から日本で馴染みがあるのは「米国盤仕様」。個人的にデザインが好きなのは「英国盤仕様」です。 
 

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2011年7月 9日 (土曜日)

フリーの「1st.アルバム」

さて、土日は、バーチャル音楽喫茶『松和』の「懐かしの70年代館」の日。今日は「ロックの1st.アルバム」シリーズの話題。

久しぶりに、Freeのデビュー盤『Tons Of Sobs』(写真)を聴いたが、その尖った内容に驚いた。基本はブルース・ロックだがエッジが立って切っ先鋭く、ハードなブルース・ロック。半端じゃない。こんな硬派な盤が1968年にリリースされていた・・・。ロックもなかなか奥が深い。

改めて、Freeとは、ブルースを指向するミュージシャンによって結成されたイギリスのロックバンド。1967年に結成され、1度解散し72年にオリジナルメンバーで再結成された1973年に解散(Wikipedia)とある。なんだか判ったような判らないような説明だが、このFreeというバンドの特徴は、ファーストアルバムである『Tons Of Sobs』を聴けば、たちどころに判る。

このFreeの『Tons Of Sobs』は1968年のリリースではあるが、70年代ロックの基本コンセプトの一つである「ブルース・ロック」の起点となるアルバムのひとつなので、70年代ロックの範疇に加えて良いだろう。

音数が少なくシンプルだが、個性的でパワフル。「地味さ」と「暗さ」が共存し、タイトル通り「悲しみ」がアルバム全編を覆う。これが、二十歳そこそののメンバーが創ったファーストアルバムなのか、とつくづく思う。どう考えたって「老成」している。こんな渋いアルバムが二十歳そこそこのメンバーが創るなんて・・・。当時の英国ロック・シーンの懐の深さを実感する。
 

Tons_of_sobs

 
ブルースを基調としながらも、当時の流行であったプログレ&サイケの雰囲気を織り交ぜて、実に攻撃的なブルース・ロックを表現している。とにかく「激しい」。触れば切れそうな、触れば怪我をしそうな「激しさ」である。この「激しさ」は、70年代ロックのビギナー向けでは決してない。70年代ロック、特にブルース〜スワンプ・ロックのマニアの方々に聴かれるべき、英国ブルース・ロックの名盤である。

ベースのアンディ・フレイザーの柔軟かつ堅実で、テクニック溢れるベースラインは特筆もの。サイモン・カークの切れ味の良い、クールなドラミングがアルバム全体の雰囲気を支配する。ポール・ロジャースのボーカルは天才的。ロッド・スチュワートに次ぐ、ロック界の天才的なボーカルを惜しみなく披露する。

しかし、やはり凄いのは、今は亡きポール・コゾフのギターだろう。まだまだ重度のジャンキーに陥る前(まあジャンキーではあったんだろうが・・・笑)、このアルバムでのコゾフのギターは、とにかく凄い。ブルース・ロック・ギターの最高レベルのプレイを満喫できる。クラプトンなんてなんのその。ジェフ・ベックですら真っ青な「狂気のフレーズ」が炸裂する。

改めて聴いて、やはり凄いブルース・ロックなアルバムです。その内容は実に「玄人好み」な内容が満載。逆に、ロックのビギナーにはちょっとハードすぎる内容だと思います。しかし、このアルバムの内容は、70年代ロックを代表する内容のひとつ。

「商業ロック」なんて有り難くないレッテルを貼られがちな70年代ロックですが、70年代ロックが、ここまでストイックにアーティスティックな側面を追求することの出来る音楽ジャンルだった、ということを認識させてくれる、凄いアルバムです。

 

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2011年7月 7日 (木曜日)

梅雨時の「千手観音ドラマー」

梅雨時は、ハードな純ジャズより、ちょっとソフト&メロウな雰囲気漂うフュージョン・テイストのエレクトリックな純ジャズが良い。特に、丸いエッジのソフト&メロウなシンセやローズの音があって、そして、要所要所で純ジャズ的な、ピリリと締まった、ハードなインプロビゼーションがあれば言うこと無し。

2年ほど前、たまたま、iTunesを徘徊していて、このアルバムを入手して以来、気が付けば、梅雨時から夏の季節に良く聴くアルバムになっていた。Billy Cobhamの『Focused』(写真)。ちなみに、このアルバム、コブハムのアルバムの中では、かなりマイナーな扱いで、なかなかお目にかかれない(お耳にかかれない?・笑)。

1999年3月のリリース。ちなみにパーソネルは、Billy Cobham (ds,per), Randy Brecker (tp,flh), Gary Husband (key), Carl Orr (g), Stefan Rademacher (b) のクインテット構成。ランディ・ブレッカーの参加が目を惹くが、他のメンバーはあまり知らない、というか、知らない。

ちなみに、ネットの僅かな情報を辿ると、このメンバー構成はコブハムを中心として、気心知れたメンバー構成らしい。確かに、このアルバムの演奏はプレイ的にもサウンド的にも完成度が高い。なるほど、気心知れたメンバーだからこその内容ですね、うん納得納得。
 

Focused

 
1曲目の「Mirage」が良い。コブハムの特徴的なドラムに乗って、Rademacherの心地良く趣味の良いブヨンブヨンなベースが入ってきて、Husbandの印象的でメロウなシンセが入ってきて、それはそれはタイトで格好良い、ソフト&メロウながら、しっかりと硬派な純ジャズ的要素を漂わせた、極上のコンテンポラリーなジャズが展開される。

この1曲目の「Mirage」が、このアルバムの内容を代表してくれている。収録されている曲はいずれも、ちょっとソフト&メロウな雰囲気漂うフュージョン・テイストのエレクトリックな純ジャズ。要所要所で、ハードで硬派な純ジャズ的なインプロビゼーションが展開されていて、それがまた「癖になる」。

ランディ・ブレッカーのペットが好調。純ジャズ的なハードで硬派なランディのペットを堪能できるということだけでも、このアルバムの価値がある。

千手観音ドラマー、コブハムのコンテンポラリー・ジャズな一枚。Randy Breckerのペットが輝き、Gary Husbandのシンセがセンス良し。Carl Orrのギターがモダン。梅雨時から夏の季節にピッタリなアルバムです。

 

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2011年7月 6日 (水曜日)

夏だ、ミカバンドだ、高中だ

今朝、ふと思ったんだが、関東地方、梅雨明けてるんやないかなあ、と・・・。そう言えば、夕立の様な雨はあるが、梅雨のように、しとしと一日降り続く雨は久しく「無い」。また、例の如く、気象庁が「梅雨明け宣言」をし損ねているだけやないかなあ、と・・・。

さて、梅雨が明ければ「夏本番」。7月2日のブログ(左をクリック)で語った、サディスティック・ミカ・バンドの『LIn London』を聴き込んだ影響なんだが、とにかく、サディスティック・ミカ・バンドの音が聴きたい。といって、ズバリ『黒船』を聴くのも芸が無い。なんか良いアルバムは無いか・・・。

今朝、ふと思ったんだが、関東地方、梅雨明けてるんやないかなあ、と・・・。梅雨が明ければ「夏本番」。「夏本番」かあ、「夏」、夏と言えば「TAKANAKA」。そう言えば、昔、「夏だ、海だ、高中だ」というキャッチ・コピーがあったなあ。そうか、高中正義か。そう言えば、あったあった。『SADISTIC TAKANAKA』(写真左)。

高中正義のライブ・ツアー「SUPER TAKANAKA LIVE 2006」のライブ音源を基に編集された優れもの。「タイムマシンにおねがい」「塀までひとっとび」「どんたく」他、サディスティック・ミカ・バンドの名曲を、オリジナル・メンバーの高中正義がラテン・フレイバー基調でカバーしている。

元祖サディスティック・ミカ・バンドの音は、英国系グラム&プログレな音なんだが、高中がカバーすると、完璧に「ラテン・ロック化」するから、あら不思議(笑)。冒頭の「サイクリング・ブギ~MESA BOOGIE」から、もう「夏、全開」である。ブギーでありながら、ラテンな雰囲気満載。さすが「夏だ、海だ、高中だ」と言われただけはある。

 

Sadistic_takanaka

収録された曲が、それはそれは素晴らしい。サディスティック・ミカ・バンドのマニアであれば、これは「感動モノ」である。かの大名盤『黒船』からの選曲をメインに、ファーストアルバムから再々結成のアルバムまで、要の曲をしっかりと選んでいるところはさすがである。

しかし、全編サディスティック・ミカ・バンドの曲ばかり、かと思ったら、唐突に、5曲目に、高中も参加した、井上陽水の代表作『氷の世界』に収録された「帰れない二人」が入っているのは「なぜだ?」(笑)。そして、ラストにこっそり、高中のソロデビュー作『SEYCHELLS』より「トーキョーレギー」をボッサアレンジでやっている(笑)。その2曲以外、サディスティック・ミカ・バンドの曲ばかり。

でも、この2曲が良い。特に、インストの「帰れない二人」はグッとくる。叙情的なバラードなインスト。スローなギターインストの「帰れない二人」は良い。凄く良い。夏の夕暮れ時にピッタリ。そして、ラストの「トーキョーレギーボッサ」がまた良い。もう夏全開である。高中正義の夏ギター全開である。 

そして、他のサディスティック・ミカ・バンドの曲は、それはそれは素晴らしい「ギター・インスト・パフォーマンス」。時々、部分的に、いきなりボコーダーで歌ってしまったりしているところが、これまた良い。上手くはないが味のあるボコーダーは、結構、聴きもの。そして、高中正義がラテン・フレイバー基調でカバーしていて、演奏の雰囲気は「夏全開」。サディスティック・ミカ・バンドの夏バージョンである(笑)。

ラテン高中にかかって、夏の音と化したサディスティック・ミカ・バンドの名曲達。これがまた聴きもので、これがまた、夏の季節にピッタリなんですね。「夏だ、ミカバンドだ、高中だ」って感じです(笑)。ロックだからと言って決して暑苦しくない。それでいて、結構「ノリノリ」です。今日はこの『SADISTIC TAKANAKA』で暑い日中を乗り切りました。

 

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2011年7月 5日 (火曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤・21

昨日、「パウエル派」という言葉が話題になったので、典型的なパウエル派のジャズ・ピアニストのトリオ盤が聴きたくなった。

さて、と思っていたら、George Wallington(ジョージ・ウォーリントン)の『Knight Music』(写真左)が目にとまった。
 
ということで、今日はこのトリオ盤のお話しを。「ピアノ・トリオの代表的名盤」シリーズの第21回目。ちなみにパーソネルは、George Wallington (p), Teddy Kotick (b), Nick Stabulas (ds)。1956年9月の録音。

ジョージ・ウォーリントンは白人ながら、典型的なバップ・ピアニスト。1940年代から頭角を現し、1960年に家業を継ぐために引退。約20年間、ビ・バップからハード・バップ時代に活躍した。

このアルバムでも、バップ・ピアニストの個性全開である。そのスタイルは、明らかに「パウエル派」のものであり、明らかに「パウエル派」の特徴が手に取るように判る。しかし、バド・パウエルの音色とは明らかに異なる。弾き方はバド・パウエル、音色はジョージ・ウォーリントン。

これがジョージ・ウォーリントンの凄いところ。パウエル派であれば、まずはパウエルの真似、パウエルそっくりに弾きこなすところなんだが、ジョージ・ウォーリントンは既に自身の個性を確立していたことが凄い。

Knight_music

そのジョージ・ウォーリントンの個性とは、音がウォームなところ。暖かいんですね。パウエルは切れ込むような、叩き込むような激しいタッチ、一瞬一瞬が全て勝負の様な、そんな硬質なタッチが凄いんですが、ジョージ・ウォーリントンの音は「丸い」。きめ細やかで上品なタッチは、本家パウエルとは正反対。でも、速いフレーズの疾走感、切れ味はパウエルそのもの。この辺が面白い。

この丸くて、きめ細やかで、上品なタッチは、ピアノ・トリオでこそ堪能できる。そういう意味で、この『Knight Music』は、ジョージ・ウォーリントンの個性を十分に感じる事ができる優秀盤ということになる。

タイトルを直訳すると「騎士の音楽」。ジョージ・ウォーリントンの典雅なピアノ・タッチを聴いていると、中世騎士の気骨溢れる、優雅で優しい雰囲気が浮かび上がってきて、このアルバムのタイトル『Knight Music』について、なるほどと思ってしまいます。なかなか、ジャズでは珍しいネーミングですね。名は体を表すと言いますが、この盤については「けだし名言」。

演奏フォーマット的には「ビ・バップ」です。トリオを構成するメンバーが3者台頭に、そのテクニックを、その個性を披露するハードバップなスタイルではありません。リーダーであるピアノを前面に押し出して、バックでベースとドラムがそれを支えるという、ビ・バップ的な展開が主です。

しかし、それがかえって幸いして、ジョージ・ウォーリントンのピアノの個性を心ゆくまで楽しむことができるんですね。しかも、技が全てのビ・バップ的演奏とは違い、インプロビゼーションを聴かせる展開になっているところが、これまた、このトリオ盤の優れたところ。激しいだけが、硬派なだけが、パウエル派ではありません。

良いピアノ・トリオ盤です。なかなか入手しづらい盤ですが、iTunesなどでダウンロード出来るので、ピアノ・トリオのファンの方々には一度は聴いて頂きたい逸品だと思います。

 

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2011年7月 4日 (月曜日)

パウエル派の「ならではの個性」

ジャズ・ピアノのスタイルは旧来より、パウエル派・エバンス派の2派に大別されてきた。しかし、ジャズの歴史もハードバップ以降、約60年を経過し、既に、この分類も過去のものになっている。ハードバップ時代、パウエル派と呼ばれたピアニストもそれぞれ絶対的個性を確立、21世紀となった今、ジャズ・ピアノの系譜も新たな世代に入っている。
 
パウエル派という表現は、ハードバップ時代から継続して活躍する、大ベテランのジャズ・ピアニストに対してのみ、適用されるスタイルだろう。しかし、ハードバップ時代から既に約60年。以前、パウエル派と呼ばれた大ベテランのジャズ・ピアニストも、既にそれぞれの独特の個性を確立している。
 
バリー・ハリスも、ハードバップ時代は「パウエル派」。ハードバップ時代のバリー・ハリスは、バド・パウエルのスタイルを完璧に踏襲しつつ、パウエルの様に攻撃的では無く、ブルージーで優雅で優しいフレーズが唯一の特徴だった。
 
ここに『Barry Harris In Spain』(写真左)というアルバムがある。1991年のリリースになる。ハードバップ時代から既に約40年が経過。ここでの、バリー・ハリスは、既にバド・パウエルのスタイルから、完全に脱皮している。確かに、歌う右手と合いの手程度の左手、右手勝負というスタイルは、パウエル派の名残りを残してはいるが、パウエルほど極端ではない。
 
Barry_harris_in_spain
 
語る右手と効果的に合いの手を入れるような左手のバランスが実に巧み。歌う右手は、哀愁を帯びたマイナー調で、堅実なテクニックに裏打ちされた端正な響き。これはもう「バド・ハウエル」とは似ても似つかぬ個性。
 
冒頭1曲目の「Sweet Pea」を聴くだけで、これはもうバリー・ハリスならではの個性で、この個性が「バド・パウエル」の影響を強く受けているとは、全く持って思わない。バリー・ハリスの哀愁を帯びたマイナー調は、その響きに「黒さ」を醸し出す。そして、パウエル派としてならした時代に身につけたハイ・テクニックは、動く右手を「歌う右手」に昇華させる。
 
ちなみにパーソネルは、Barry Harris (p), Chuck Israels (b), Leroy Williams (ds)。イスラエルズとウイリアムスのリズム・セクションも素晴らしいバッキングを聴かせてくれる。優れたピアノ・トリオのアルバムは、ピアニストだけで成立するものではない。リズム&ビートをしっかりと担い、主役のピアノを盛り立てるベースとドラムの存在があってこそ、である。 
 
良いピアノ・トリオのアルバムです。バリー・ハリスの「歌う右手」が堪能出来る優れたアルバムだと思います。バリー・ハリスの歌う右手は、哀愁を帯びたマイナー調で、堅実なテクニックに裏打ちされた端正な響き。

バリー・ハリスのピアノは個性が乏しくて判り難い、なんていう評もあるんですが「とんでもない」。このアルバムに収録された演奏はどれもが、バリー・ハリスというピアニストの個性を十分に堪能出来るものです。理屈はいらない。ジャズ者の皆さんに、是非、一度は聴いて頂きたいピアノ・トリオ盤です。
 
 

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2011年7月 3日 (日曜日)

忘却の彼方・伝説のギタリスト

70年代前半、英国ロックに「フリー」というバンドがあった。完璧にブルースを基調にしたロックバンド。しかも当時としてはハイテク集団。1967年に結成、1度解散、72年に再結成されたが、結局1973年に解散。
 
デビューが早すぎた早熟なギター・バンドと言える。今の耳で聴けば、それはそれは内容のあるパフォーマンスを繰り広げている。当時は、録音環境も悪かったし、特に再生系の問題は大きかった。今では、リマスタリングの施されたCDが出回っており、演奏の詳細に渡って、十分に聴き込める環境になった。「フリー」はもっと評価されるべきだと思っている。
 
そんな「フリー」のオリジナル・ギタリストがポール・コゾフ。コゾフが真っ当な人間であれば、ペイジ、クラプトン、ベックという「三大ロックギタリスト」に比肩するギタリストとして勇名を馳せいていたと思う。しかし、彼は筋金入りのジャンキーだった。結局、ドラッグ癖が原因で1976年、心臓病により死去してしまった。 
  
しかし、まともな時のポール・コゾフは凄い。完璧にブルースを基調とした、クールな「泣きのギター」が特徴。他のブルース基調のギタリストは、ウェットに泣くギターで、ややもすれば「演歌っぽい」べったべたな響きが個性ではあるが、ポール・コゾフの「泣きのギター」は乾いている。実にクールなのだ。このクールさが堪らない。
 
そのクールな「泣きのギター」が堪能出来る、ポール・コゾフのソロアルバムが『Back Street Crawler』(写真左)。1973年のリリース。このソロ・アルバム一枚で、ポール・コゾフの「泣きのギター」の魅力が存分に楽しむことが出来る。
 
Back_street_crawler
 
冒頭のインストナンバー「Tuesday Morning」が堪らない。18分弱に及ぶ長尺のインスト。「まともな」コゾフの「泣きのギター」が凄い。しかも乾きながら、マイナーにむせび泣く。ミディアムなテンポで紡ぎ上げるソロ・フレーズが実に格好良い。
 
コゾフに関してネットでいろいろ調べていたら、面白い話が掲載されていた。コゾフのギターの弦はセット弦ではなく、意識して「意図に合った」弦を張っていたらしい。6弦〜4弦はギブソンのミディアムゲージ、3弦には何とハワイアンギターで使われる巻き弦、そして1弦と2弦はギブソンのライトゲージ。
 
多くのギタリストはチョーキングがし易いよう、エキストラ・ライトゲージを使うのに対して、コゾフの弦は太い。しかし、チョーキングの要である3弦にハワイアンギターの巻き弦を使用することで、あの独特なチョーキングの音を醸し出していたのだ。
 
なるほど、1弦と2弦のライトゲージが肝なんやなあ。乾いた雰囲気は、この太い弦のチョーキングから来るものなのか。しかも「泣きのギター」を印象づけるのが、3弦のハワイアンギターで使われる巻き弦なのかあ。昔は、コゾフって、単なるジャンキー野郎かと思っていたが、やっぱり繊細な感性の持ち主だったんやなあ。こんなに、きめ細やかな弦の工夫をしているギタリストはそうそうはいない。
 
全編に渡って、コゾフのギターの個性が詰まっているソロ・アルバム。このコゾフのギター中心の演奏を聴いていると、やはり「フリー」というバンドは、このコゾフのギターがあってこそのブルース・ロック・バンドだったんやなあ、と単純に感心したりする。
 
もうほとんどのロック・ファンからは忘れ去られたソロ・アルバムだと思う。既に、1970年代ロック・ファンの中でも、マニアと類する方々の中にしか、記憶に留められていないソロ・アルバムだと思う。でも、そのアルバムの中には、1970年代前半、ブルース・ロックの素晴らしい成果の一つがギッシリと詰まっている。
 
最近、リマスター再発盤やアウトテイクを追加収録したデラックス盤もリリースされている。今一度、忘却の彼方に置き去りにされた伝説のギタリスト、ポール・コゾフを追体験してみてはいかがかと・・・。そして、僕は今一度、「フリー」にも目を向けてみたいと思い出した。
 
 

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2011年7月 2日 (土曜日)

夏になれば思い出すライブ盤

夏になれば、7月になれば、必ずと言って良いほど思い出すライブ盤がある。昔々、1976年7月5日にリリースされた、サディスティック・ミカ・バンド(SMB)のライブ盤『Live In London』(写真左)。

大名盤、伝説の『黒船』を手に入れ、その凄い内容におったまげて聴きまくっていたあの頃。1975年11月にリリースされた『HOT! MENU』のファンキーな内容に戸惑い、それでもSMBにけなげについていったのだが、その後、ほどなく加藤和彦・ミカの離婚により解散。

「はぁ〜?」と思って狼狽していたら、どうもライブ盤が出るらしいとの情報。それもSMBのロンドン公演のライブらしいとの情報。「はぁ〜?」と思った。SMBは既に解散している。どうしてライブ盤がでるのか、まだロック小僧駆け出し2年の僕には、さっぱり判らなかった。

それでも、このライブ盤は発売日に買ったなあ。ちなみに写真右は、『Live In London』のLPパッケージ。懐かしい。そう、このパッケージだった。日本の国旗と英国の国旗が並んであしらわれているところに、当時、心に「グッと」きたなあ。

そして、はやる心を抑えつつ、ワクワクしながら、アルバムに針を落とす。出てきた音が「悪い」。うわ〜失敗した、と思った。激しく後悔した。でも買ってしまったものは仕方が無い。聴くしかない。聴きつづけるしかない。暫くは我慢して聴いていた。が、その音が悪いのを除けば、その演奏内容はかなり凄いものではないか、と思うようになった。懐かしい高校3年生の頃の夏の想い出である。

音が悪いのは当然で、このライブ盤の音源がカセット・テープレコーダーによる録音の為だ。それでも、最近のリマスター技術は素晴らしいもので、最新のリイシューCDは結構、その音が改善されている。意外と聴ける、鑑賞に耐えるまでの音質になった。

音質の問題が改善されたCDでは、SMBのロンドン公演のパフォーマンスが十分に楽しめる。収録された曲は以下の通り。
 

Mika_band_live_in_london

 
1. どんたく
2. WA―KAH!CHICO(インスト)
3. ヘーイごきげんはいかが
4. 颱風歌
5. ミラージュ(インスト)
6. 快傑シルバー・チャイルド
7. 墨絵の国へ
8. 何かが海をやってくる(インスト)
9. 嘉永六年六月二日〜嘉永六年六月三日〜嘉永六年六月四日
10. 塀までひとっとび 〈CDエクストラ〉

まずは、2曲目「WA―KAH! CHICO」と5曲目の「ミラージュ」のインスト・ナンバーが聴きもの。全く持って、後の「サディスティックス」そのものな演奏が見え隠れする。そして、6曲目の「快傑シルバー・チャイルド」から7曲目の「墨絵の国へ」のシュールさは、まさにブリティッシュ・プログレッシブ。まるで、ロキシー・ミュージックの様だ。

そして、興奮するハイライトは、やっぱり大名盤『黒船』からの選曲、8曲目「何かが海をやってくる」からのメドレー「嘉永六年六月二日〜嘉永六年六月三日〜嘉永六年六月四日」。

大名盤『黒船』のA面の大半を占めるこのメドレーは、このライブ盤のハイライト。とにかく凄い演奏だ。整然としたプログレッシブなスタジオ録音も良いが、このライブ盤での疾走感、臨場感は凄い。そして、演奏するメンバーのハイテクニックなこと。特に高橋幸宏の「独特な間を持った」唯一無二なドラミングと高中正義の弾きまくりギターが凄い。当時のロンドンっ子達が驚喜したというが、それも納得の熱く激しい演奏だ。

ラストの10曲目の「塀までひとっとび」は、収録時間の長いCDならではのエクストラ。この疾走感溢れる、ファンキーで不思議な浮遊感のあるロックな曲が、ライブでより一層輝いている。後藤次利が凄い。フルスロットル・チョッパー・ベースでガンガンに飛ばしまくる。

カセット・テープレコーダーによる録音のため,音質はいまひとつ、という触れ込みに惑わされてはいけない。70年代ロックのマニアであるなら、このライブ盤は絶対に聴かねばならない。日本のロックが米英ロックと比較して、全くもって「ひけをとっていなかった」。それを証明してくれる凄いライブ盤です。

 

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Fight_3
 
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2011年7月 1日 (金曜日)

フュージョン・フルートの秀作です

ヒューバート・ロウズ(Hubert Laws)。1939年11月生まれ。アフリカ系アメリカ人のジャズ・フルーティスト。万能のフルート奏者。1970年代にはグラミー賞に3回ノミネートされた様に、フュージョン・ジャズのジャンルで活躍した。現在も現役。90年代以降はメインストリーム・ジャズ志向。

僕は、フュージョン・ジャズ時代のヒューバート・ロウズについては、ほぼリアルタイムで聴いていて、ロウズのストレートでエッジが丸い、ふくよかで切れ味の良いフルートの音色が大好き。そんなロウズではあるが、彼のリーダー作の復刻はあまり進んでいないようで、まだまだたくさんの未CD化作品があって困る。

なぜなら、ヒューバート・ロウズのフルートの代表盤というのが、なかなか見当たらないからだ。彼のアルバムは多々録音されているが、これがなかなか復刻されない。確かに、ジャズ・フルートは、ちょっと特殊でマニアックな扱いをされているので、復刻CDの需要が無いと思われいるに違いない。そんな環境から、今まで、ヒューバート・ロウズの代表盤を選ぶことが出来ないでいた。

しかし、このアルバムを手に入れてから、やっと、このアルバムはヒューバート・ロウズの代表盤として評価しても良いのではと思った。そのアルバムのタイトルは『Morning Star』(写真左)。1972年の録音。

ちなみにパーソネルは、Hubert Laws(fl), Bob James (el-p), Ron Carter (b), Billy Cobham (ds), Dave Friedman(vib,per), Ralph MacDonald (per), orchestra arranged & conducted by Don Sebesky。CTIフュージョンのファースト・コールなジャズメンがズラリと並ぶ。壮観である。
  
Morning_star
 
ヒューバート・ロウズのフルートが心ゆくまで堪能出来るアルバムです。ロウズのストレートでエッジが丸い、ふくよかで切れ味の良いフルートが全編に渡って展開されます。 ここまで吹きまくるロウズのアルバムは初めて。実は、僕はこのアルバムの存在を最近まで知らなかった。たまたまネットを彷徨っていて偶然見つけたアルバム でした。
 
いや〜、これが良いんですよ。アルバム全体の雰囲気は、ドン・セベスキーがアレンジを担当した、それはもう絵に描いた様なCTIフュージョン。ゴスペル色の強い深みのあるメロウなグルーヴが心地良い。このメロウ度の高さは、1970年代後半、AORの時代のアルバムか、と思うんだがさにあらず。1972年。時代は、まだまだクロスオーバー・ジャズの時代。でも、このアルバムに収録されている音は、フュージョン・ジャズそのもの。しかもソフト&メロウ。

パーソネルを見渡して、アレンジがドン・セベスキーなので、ボブ・ジェームスがエレピで参加していることに意味があるのかと思ったりしたんですが、これがまあ、意味があるんですよね。このアルバムでの、ボブ・ジェームスのエレピ(フェンダー・ローズだと思う)が凄いんですよ。

もともとボブ・ジェームスのエレピは優れたものなんですが、それがこのアルバムでのエレピの演奏を聴いて良く判る。それはもうテクニック抜群、歌心抜群、フェンダー・ローズを理解し、エレピならではの音を展開していく、このアルバムでのボブ・ジェームスは凄い。
 
これだけエレピを弾きまくるボブ・ジェームスはなかなか体験できません。それだけでもこのアルバムには存在価値がある。特に、ボブ・ジェームス者、ボブ・ジェームスのファンの方々には必須のアルバムでしょう。

ドン・セベスキーの弦のアレンジも秀逸で、弦入りのゴージャズなフュージョン・ジャズは、かなりの聴き応えです。牧歌的に仕上げられた「Amazing Grace」も聴きもの。良いアルバムです。やっとフューバート・ロウズの代表作に出会った気がします。
 
 
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