僕はこのマイルスも大好きだ
『On The Corner』。ジャズの大本は「アフリカン・ミュージック」。アフリカン・ネイティヴなビート&リズム。それを前面に押し出して、というか、それだけをエレクトリック・ジャズで表現した。そんな「ジャズの根幹」を表現した、ジャズ界最大の「問題作」であり、ジャズ界最大の「基準」である。
その『On The Corner』は、スタジオ録音の成果。この『On The Corner』のコンセプトと踏襲したライブ録音盤が『In Concert: Live at Philharmonic Hall』(写真左)。
なんだか、ある評論家の方々からは、絶不調のマイルスと言われ、この同時期のブート(海賊盤)でこそ、この時期のマイルスの凄さが判る、なんて言われているが、そもそも、ブート(海賊盤)なんて、普通のマイルス者が手にすることは出来ない代物で、それを引き合いに出すのは、評論家として「アンフェア」である。普通のジャズ・ファンの存在を無視しているとしか思えない。
我々、一般のマイルス者については、CBSコロンビアからリリースされた正式盤でしか、マイルスを体験出来無い訳で、そういう意味で、一般のマイルス者にとって、この『In Concert』は『On The Corner』のコンセプトと踏襲した、かけがえの無いライブ盤なのだ。
なぜこんなに絶不調なマイルスのライブがリリースされたのか、なんて、クソミソに言われているが、どうして、僕の耳がおかしいのかもしれないが、意外とこのライブ盤はお気に入り。
『On The Corner』で提示された「リズム&ビート」を前面に押し出した、ネイティブ・アフリカンなジャズ。その「リズム&ビート」をベースに、コンサートというシチュエーション上、聴かせる部分も意識した、印象的なフレーズの添加。聴かせるフレーズを伴った、聴きやすい「リズム&ビート」。
LP時代は、押し並べて音が悪かったと思う。特に、日本盤は盤質が平均的に良くなかったのか、『In Concert』の良い音というものを聴いた記憶が無い。しかし、近年、DSDマスタリングのCD盤が出て、音質が、LP時代に比べて圧倒的に改善された。この「圧倒的な改善」が、『In Concert』の評価を変えつつあるのかも、と思ったりしている。
絶不調だとか、鬼気迫るものが欠けているとか言われるが、じゃあ、この音を、この音を凌駕する音を出すことの出来るバンドが、マイルス以降あったのか、と問われれば、答は「否」である。絶不調で、鬼気迫るものが無くても、この『In Concert』のマイルスの音に匹敵する、マイルスの音を凌駕するエレクトリック・ジャズな音を表現できるバンドは、今の時代をもってして「皆無」である。
マイルスは「最高」ならずとも「最低」を記録しても、その時代の最先端を行く音になる、というが、本当にそう思わざるを得ない、そんな『In Concert』の音世界である。
確かに、もしかしたら、このライブ盤には「絶不調」のマイルス・バンドしか、存在していないのかもしれない。でも、このライブ盤に残された音は、唯一無二の、孤高のエレクトリック・ジャズの最高の成果の一つである。なんやかんや言っても「素晴らしい」の一言。
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