疾走感溢れるボーカル・グループ
ジャズを聴き始めた頃のことである。とにかく、ジャズを聴かなければならぬ、数をこなさなければならぬ。沢山ジャズを聴いて、ジャズの経験を深めなければならぬ。
しかし、その当時は大学生。バイトはしていても財力に限りがある。数をこなすにはFM。FMのエアチェックで片っ端から、ジャズ、フュージョンの演奏をどんどんエアチェックし、ガンガンに聴いていた。
そんなFMのエアチェックで引っ掛かってきたボーカル・グループがあった。抜群のテクニック、抜群の歌唱力、抜群のユニゾン&ハーモニー。それはそれは、素人でも「これは凄い」と思わせるボーカル・グループに出会った。そのボーカル・グループの名は「The Manhattan Transfer」。
The Manhattan Transferは、男女各2人による4人編成。1978年マッセーに代わりシェリル・ベンティーンが正式加入して現在のメンバー構成となる。ちなみにメンバー構成は、ティム・ハウザー(グループの創設者でありリーダー)、アラン・ポール、ジャニス・シーゲル、シェリル・ベンティーン。グループ名は、ジョン・ドス・パソスの小説「マンハッタン乗換駅(Manhattan Transfer)」から取ったとのこと。
初めて聴いたアルバムはデビュー・アルバム。抜群のテクニック、抜群の歌唱力、抜群のユニゾン&ハーモニー。そして、最新のジャズ・フォーマットを採用しつつ、エレクトリック・ジャズのトラディショナルな伴奏をバックに歌いまくるボーカル・グループに、ぞっこん惚れ込んだ。
そして、時は1979年。あの「秘密の喫茶店」で流れていたボーカル・グループのアルバム。聴き覚えのあるユニゾン&ハーモニー。そう、The Manhattan Transfer(以降、略して「マントラ」) である。しかし、今までに聴いたことのない展開、というか、これって、ウェザー・リポートの「バードランド」ではないのか。というか「バードランド」である。歌詞付きの「バードランド」。
その「バードランド」が収録されたアルバムが『Extensions』(写真左)。エアプレイで有名なジェイ・グレイドンによるプロデュースで文句無く楽しい作品。というか、正統派ジャズ・ボーカル・グループのマントラとしては異質と言えば異質。コンテンポラリーなジャズをバックに、というよりは、完璧な「フュージョン・ジャズ」をバックにした、エレクトリックなジャズ・コーラス。
冒頭のウェザー・リポートの名曲「バードランド」を始めとして、収録されている楽曲は全て、電気楽器をベースとした、完璧な「フュージョン・ジャズ」である。そして、その完璧な「フュージョン・ジャズ」をバックにマントラは歌いまくる。そう「歌いまくる」のだ。切れ味鋭く、抜群の歌唱力を武器に歌いまくる。
そして、このマントラの最大の特色は「疾走感」。抜群の歌唱力、抜群のユニゾン&ハーモニーとバックの完璧なまでの「フュージョン・ジャズ」が相まって、その「疾走感」が増幅される。『Extensions』では、その「疾走感」が溢れていて、それはもう限りなく爽快ですらある。全編約37分のアルバムではあるが、聴き終えた後、心地良い疲労感が残る位だ。
傑作「バードランド」を始めとして、1979年テレビ番組「トワイライト・ゾーン」の同名テーマ曲「Twilight Zone/Twilight Tone」、そして、完璧にフュージョン・ジャズ化された「Body And Soul」。その他、収録された曲が全て、硬派な疾走感溢れるAOR的なジャズ・コーラスに仕立て上げられている。一度は聴いて欲しい、ジャズ・ボーカル・グループの名盤です。
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