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2011年6月 6日 (月曜日)

レイ・ブライアントの出世作

僕の大好きなジャズ・ピアニストの一人、レイ・ブライアントが、2011年6月2日に逝去されたとのこと。う〜ん、ショックである。これは大ショックだ。辛い。

彼のピアノ・スタイルは、それまでの「パウエル派」とは一戦を画する。パウエル派は、演奏テクニックを前面に押し出した「技の披露」がメインで、短い演奏時間の間で、どれだけ優れた演奏テクニックを駆使して、インプロビゼーションを繰り広げるかがポイントだった。

しかし、ハードバップ定着後は、テクニックの披露というアクロバティックなものでは無く、演奏時間が長くなり、アレンジの重要性に重きを置いたハードバップの演奏マナーの中で、如何に演奏を聴かせるか、気持ち良く鑑賞して貰えるか、が主眼となった。テクニックの披露という「芸」の世界から、演奏を如何に聴かせるかという「鑑賞」の世界への転換。

レイ・ブライアントのピアノは、明らかに後者のスタイルで、演奏を如何に聴かせるかという「鑑賞」の世界への適用に重点が置かれている。ブライアントのピアノは、オフビートを強調した、アーシーでゴスペルタッチなピアノが特徴で、その強調はタッチの強い、テンションの強い右手と、低音の響きを活かしたハンマー打法の様な左手の使い方が実に印象的。加えて、和音の分厚い響きと右手のシングルトーンとの明確な対比で、演奏曲の印象的な旋律を浮き立たせる。

右手のアドリブの展開も特徴的で、オフビートを強調しつつ、右手の取り回しに含みと間を持たせつつ、一気にフレーズを弾き切るというドライブ感を増幅させる弾き方は、ブライアント独特の弾き方。ファンキーさが増幅され、演奏のメリハリが際立つ。

そんなレイ・ブライアントのピアノの特徴が際立って発揮されたアルバムが、1972年6月のモントルー・ジャズ・フェスティバルで繰り広げられた、レイ・ブライアントのソロ・パフォーマンスを捉えた『Alone at Montreux』(写真左)。
 

Aloneat_montreux

 
冒頭の「Gotta Travel On」のアーシーでゴスペルタッチなピアノを聴くだけで、もう「メロメロ」である(笑)。続くどの曲も、ラグタイムからブルースそしてジャズという、ジャズ・ピアノの歴史を総括した様な内容で、とにかくノリの良さが抜群。タッチの強い、テンションの強い右手と、低音の響きを活かしたハンマー打法の様な左手の使い方に、思わず喝采の声を上げる。

このレイ・ブライアントのソロ・ライブは、事前に予定されたものでは無かった。もともとは、オスカー・ピーターソンのトリオが出演予定だったのが、ピーターソンのドタキャンにより、ブライアントに白羽の矢が立った。ブライアントとて、ベーシストとドラマーを調達し、リハーサルする時間的余裕は無い。ブライアントは一念発起、ソロ・パフォーマンスでの勝負を挑む。

なんだか小説のような話だが、これ、ホントの話。ブライアントのこのソロ・パフォーマンスでの勝負に勝ち、このソロ・パフォーマンスを収録したライブ盤『Alone at Montreux』は、彼の出世作となった。

レイ・ブライアントは、僕にとって、ビル・エバンス、チック・コリアについで、3番目にお気に入りとなったピアニスト。レイとの付き合いは古い。僕は、このライブ盤『Alone at Montreux』で初めて、レイ・ブライアントに出会った。あれから幾年月、かれこれ、30年以上に遡る。とにかく判り易い、聴いていて楽しいピアニストだった。

アルバム・ジャケットも印象的。ブライアントの両手を拡げたポーズは実に印象的。学生時代、例の秘密の喫茶店に行って、このアルバムをリクエストする時は、このジャケットのブライアントのポーズを真似するだけで、ママさんに通じた(笑)。そして、数分して、冒頭の「Gotta Travel On」のアーシーな前奏が店内に鳴り響いて、思わず「キターっ」って思うのだ。
 
 
 
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コメント

レイ・ブライアントさん亡くなったんですね・・・残念です。
私はアルバム「ray bryant trio」や「LONESOME TRAVELER」が大好きです。

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