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2011年6月14日 (火曜日)

エレ・マイルスの基準『On The Corner』

このアルバムは「問題作」である。エレクトリック・マイルスが本当に「お気に入り」なのかどうか、それを判別する「踏み絵」の様なアルバムである。

そのアルバム・タイトルは『On The Corner』(写真)。1972年6月〜7月の録音。エレクトリック・マイルス最大の「問題作」である。逆に返すと、エレクトリック・マイルスの「本質」である。このアルバム無くして、エレクトリック・マイルスは無い。

このアルバムについては、多くを語るつもりは無い。とにかく、ジャズ・ファンを自認する方々には、一度は聴いて頂きたい、ジャズの本質、根幹である「ビート&リズム」を究極に至るまで追求した、唯一無二なジャズの成果である。

ジャズの大本は「アフリカン・ミュージック」。アフリカン・ネイティヴなビート&リズム。それを前面に押し出して、というか、それだけをエレクトリック・ジャズで表現した。そんな「ジャズの根幹」を表現した、ジャズ界最大の「問題作」であり、ジャズ界最大の「基準」である。

ジャズの根幹は「ビート&リズム」。メロディアスな旋律などは「二の次」。躍動感溢れる、オフビートが基調の「ビート&リズム」が無ければジャズでは無い。それくらい極論しても良い位に、ジャズにとって「ビート&リズム」は最重要な要素である、と僕は思っている。

この『On The Corner』は、普通のジャズと思って聴くと大火傷をする。この『On The Corner』はジャズの根幹のみを表現している。極端に言うと、この『On The Corner』の「ビート&リズム」が理解出来なければ、ジャズの本質を理解出来ない(とマイルスが言う)と言われるくらい、ジャズにとって、本質中の本質。
 

On_the_corner

 
冒頭の「On The Corner」より、ビート&リズムの洪水である。後半、このビート&リズムの洪水の中に、テルミンの様な、基本的な電子楽器音が鳴り響く。このヒューン、ピューンという電子音は、これまた現代の「ネイティヴ」な根幹をなす音である。

昔ながらのジャズの本質である「ビート&リズム」と、現代音楽の代表格である基本的な電子楽器音とのコラボ。ビート&リズムの洪水に電子楽器のノイズの様な音が交わって、マイルスにしか為し得ない、エレクトリック・マイルスの音世界が展開される。

僕の場合、大阪万国博博覧会とその跡地に立てられた民俗学博物館のお陰で、アフリカン・ネイティヴなビート&リズムを体験し、それが「お気に入り」として捉えることが出来たので幸せだった。クラッシックなビート&リズムしか知らない状態であれば、この『On The Corner』の世界は「理解出来ない」か「嫌い」という状態に陥っていた可能性が高い。

といって、この『On The Corner』のビート&リズムを理解出来ないとジャズは理解出来ないのか、と問われれば、それはそれで「違う」のだが、このビート&リズムの世界を理解することで、ジャズの理解が幅広になることは間違い無い。ジャズはアフリカン・アメリカンの文化であり、ジャズは米国が生んだ「音の芸術」である。

冒頭にも書いたが、この『On The Corner』は、エレクトリック・マイルスが本当に「お気に入り」なのかどうか、それを判別する「踏み絵」の様なアルバムである。好きになるか嫌いになるかは別として、ジャズを聴き続け、ジャズを愛で続けるのであれば、一度は、この『On The Corner』を聴いて欲しい。

ジャズにおける一番大切な大本は、この「ビート&リズム」である。そして、その大本となる「ビート&リズム」のみを前面に押し出して表現されたこのアルバムの音は、エレクトリック・マイルスの「基準」である。
 
 
 
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コメント

杢です。
オン ザ コーナーは私の大好きなアルバムで 昔19cmオープンリール版を持ってました。   タブラとかはいっているのでワールドミュージックといわれますが 私は難しいことなくのりのよいビートミュージックだと思います。  特に今の耳できけばかなりふつうではないでしょうか。    そういえば最近本棚を整理していたら20年前のJAZZ LIFEのマイルス追悼号がありそのインタビューでオン ザ コーナーはBoxingの練習のバックにいいという本人の談話が乗ってました。 

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