ベーシストのリーダー作は難しい
ベーシストのリーダー作は難しい。もともとベースは「縁の下の力持ち」的存在。リーダーである当の本人が何をやりたいかが明確になっているか、若しくは、担当のプロデューサーが、リーダーのベーシストの何を表現したいかが明確になっていないと、良いセッション・アルバムにはなかなかならない。
スタンリー・クラーク(Stanley Clarke)の最新作『Stanley Clarke Band』(写真左)を聴いた。53th グラミー賞でBest Contemporary Jazz Albumを受賞したアルバム。一部、上原ひろみも参加したフュージョン・アルバムである。
昔から、僕は、グラミー賞の基準が良く判らないでいる。特に、ジャズのジャンルでの選定基準は良く判らない。年間で一番優れた内容でもなさそうだし、一番売れたのでもなさそうだし、その基準が良く判らないでいる。よって、今回のスタンリー・クラークの受賞も正直言うとその理由が良く判らない。
スタンリー・クラークの最新作『Stanley Clarke Band』であるが、その内容については、やはり「う〜ん」という感じかなあ。基本的には、ファースト・ソロ・アルバム『Children of Forever』から『School Days』までのアルバムの雰囲気をそのまま踏襲している。
『Stanley Clarke Band』全体の雰囲気は、第2期リターン・トゥ・フォーエバーそのもの。やはり、スタンリー・クラークの基本はそこにあるんやなあ。というか、スタンリー・クラーク単独では、どうしても、第2期リターン・トゥ・フォーエバーから出ないというか、第2期リターン・トゥ・フォーエバーが全てになってしまうなあ。
さすがに、この時期に及んで、チック・コリアの参戦を促すと、これまた『Children of
Forever』と同様、チックの色に染め上げられてしまうというか、全く、2期リターン・トゥ・フォーエバーそのものになってしまうので、クラークとし
ても避けたいところ。そこで、上原ひろみの参戦である。
この『Stanley Clarke Band』では、上原ひろみは「ミニ・チック」というか、 チックの影武者の様な存在になっている。上原ひろみの参加したトラックは、第2期リターン・トゥ・フォーエバーの雰囲気そのもの。クラークのファースト・ソロ・アルバム『Children of Forever』の雰囲気をしっかりと踏襲している。
アルバムの内容としては、バラエティに富んでいると言えば聞こえは良いが、クラークのやりたいことを、いつもの様に「ごった煮」に突っ込んだアルバムとも言えるし、このアルバムを覆う統一感は「第2期リターン・トゥ・フォーエバー」をしっかりと踏襲していて、直近のクラークのオリジナリティは特に感じるところは無いとも言える。
スタンリー・クラークのソロ・アルバムについては、クラークが一歩引いて、優れたプロデューサーを採用しないことを遺憾に思う。
一度、クラークのベースと音楽性を熟知する優れたプロデューサーを採用して、ソロ・アルバムを制作して欲しい。きっと今までとは違ったクラークの魅力が満載のソロ・アルバムが出来ると思うんだが・・・。
サイドマンとしては優れたベースを聴かせてくれるだけに惜しいなあと思っています。なんとか、クラークにどこから聴いても「代表作」と呼ばれるようなソロ・アルバムを残して欲しいんですが・・・。
ベーシストのリーダー作は難しい。特に「セルフ・プロデュース」は難しい。リーダーである当の本人が何をやりたいのか、そして、それが明確になっているか、が大切なんだが、特にベーシストは「縁の下の力持ち」的存在。フロントをサポートすることは大の得意だが、冷静に見極めて自分自身をサポートすることは、おしなべて苦手のようだ。
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