蒸し暑くなると「MJQ」の季節
一昨日の夕方から、急に暑くなった我が千葉県北西部地方。とにかく蒸し暑い。これだけ暑くなると熱気溢れる、激しいジャズは辛くなる。蒸し暑くなると、ヘビー・ローテーションになるのが、The Modern Jazz Quartet(以下、MJQと略す)。
MJQとは、Milt Jackson (vib), John Lewis (p), Percy Heath (b), Connie Kay (ds)の4人構成。管楽器は使わず、ミルト・ジャクソンのビブラフォンを中心にした一貫してクールで室内楽的なジャズが、実にクールな四重奏団だった。僕は、このMJQが大好き。ジャズを聴き初めて、最初にお気に入りになったグループのひとつがこのMJQ。
ジョン・ルイスの「静」とミルト・ジャクソンの「動」の対比が美しく、ミルトのヴァイブとルイスのピアノが清涼感を感じさせてくれる。パーシー・ヒースのベースとコニー・ケイのドラムは、ミルトのヴァイブとルイスのピアノをガッチリとフォローする。洒脱で力強く、ハイテクニックなリズム・セクション。とにかく、MJQの演奏は全て「完璧・流麗・小粋」。
室内楽的なジャズだからといって、侮ってはいけない。MJQのバンド全体が醸し出すスイング感は抜群。ミルトを中心として供給される、滲み出るようなファンクネスはMJQ独特のものだし、ルイスのピアノは、現代音楽風な響きも相まって、実にアカデミック。ヒースのベースは端正で堅実。ピッチもしっかりあっていて健康的。ケイのドラミングは多彩なテクニックに多彩な音。その響きはクラシックの様な優雅で端正な響き。
今日は久々に『No Sun in Venice(たそがれのヴェニス)』(写真左)を聴く。まず、ジャケット・デザインを見て欲しい。印象派の絵があしらわれており、おおよそ、このアルバムがジャズのアルバムとは思えない。しかし、このジャケット・デザインのイメージ通りの演奏が、このアルバムにぎっしりと詰まっている。
このアルバムは、映画『大運河』のサントラとして作られたこのアルバム。LP当時の触れ込みは「映画音楽とジャズを見事に融合させた記念作」(う〜ん懐かしいフレーズ・笑)。ジャズの既成概念を超えた、溢れんばかりの抒情性と音の拡がりを湛えた作品です。実に瑞々しく、清涼感のある音が、実に「夏向き」です。
冒頭の「The Golden Striker」が素晴らしい。MJQの演奏を代表する音。この1曲だけで、MJQの音の特性が理解出来ます。判り易いMJQ。曲良し、演奏良し。文句のつけようのない「The Golden Striker」。ほど良く抑制されたスイング感、優雅なヴァイブの響き。端正でシンプルな響きが美しいピアノ。演奏のボトムをしっかりと締めるベース。実に完成度の高い演奏。
ジャズは即興が全て、アレンジされたジャズはジャズじゃ無い、アンサンブルなんて必要無い、という考え方もありますが、MJQの様な、洗練されたアンサンブル、演奏のバランスの良さ、心地良い清涼感、美しく透き通ったユニゾン&ハーモニーも、ジャズの大事な要素です。それだけ、ジャズは懐の深い音楽ジャンルだと言えるでしょう。このMJQを聴いていて思います。
2曲目の「One Never Knows」以降も、なかなか難しいことをやっています。いとも簡単に演奏しているように聴こえるのは、MJQのそれぞれのメンバーの卓越した演奏テクニックと充実したギグの賜。圧倒的な練習量無くして、これだけのハイテクニックな演奏は不可能でしょう。とにかく上手い。しかも歌心満点。聴いていて実に心地良し。
良いアルバムです。清涼感抜群。爽快感抜群。今年の夏の暑さ結構厳しそうなので、MJQのアルバムは、ヘビーローテーションになりそうな気配。暑くなると熱気溢れる、激しいジャズは辛くなる。暑くなると、ヘビー・ローテーションになるのが「MJQ」。
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