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2011年6月17日 (金曜日)

ジャズ喫茶で流したい・27

季節、時間帯を選ばずに、リラックスしたい時に、ついついCDプレーヤーのターンデーブルに載せたくなるアルバムが幾つかある。ほとんどが成熟したハードバップ時代、1950年代後半から1960年代前半に偏っている。
 
「さあ聴くぞ」と構えて、ジックリ聴くジャズも良い。逆に「ながら聴き」できるアルバムをあまり肩肘張らずに流して、何かしながら、何か読みながら、ぼんやりと聴くジャズもこれまた良いものだ。
 
今日はそんな「ながら聴き」のできる、ぼんやりと聴くジャズ・アルバムをチョイス。Wes Montgomeryの『Groove Yard』(写真左)。1961年1月の録音。ちなみにパーソネルは、Buddy Montgomery (vib, p) Wes Montgomery (g) Monk Montgomery (b) Bobby Thomas (ds)。
 
パーソネルを見渡すと判るんだが、長兄のモンク・モンゴメリー(b)、次男のご存知、ジャズギターの最高峰ウェス・モンゴメリー(g)、そして末弟のバディ・モンゴメリー(p)という三兄弟によるハードバップ・セッションである。
  
つまりは、ドラムのボビー・トーマスだけが「他人」となる。それはそれで、録音セッションなんかはやりにくいだろうなあ、とつまらないことを心配しつつ、このアルバムを聴き始める。
 
冒頭の「Bock To Bock (Back To Back)」から、リラックスした雰囲気に魅了される。演奏は心地良く締まった演奏。でも、演奏全体にリラックスした雰囲気が漂う。さすがに3兄弟の絡んだセッションである。演奏のそこかしこに「あうんの呼吸」がある。リズム&ビートもぴったりと合って、そのぴったりと合った具合が、心地良い「快感」を運んでくれる。 
 
Groove_yard
 
ギターとピアノは、ジャズの範疇では、同じ特質を持った楽器である。リズム楽器にもなるし、旋律楽器にもなる。コード弾きも出来るし、短音のフレーズ弾きも出来る。このアルバムのセッションは、絵に描いた様なハードバップなセッションで、カルテットの4者4様の演奏を繰り広げるような「インタープレイ」の応酬は無い。それでも、ギターとピアノは、音がぶつかったり、音が重なったりするもんなんだが、このアルバム・セッションでは、その「短所」が皆無。
 
さすが兄弟で、ギターとピアノを担当しているだけある。ギターのウエスとピアノのギターのバディは、けっして音は重ならないし、ぶつからない。互いの音を聴きつつ、ソロを受け渡し、テーマで息の合ったユニゾン&ハーモニーを展開する。なるほど、兄弟であるが故の「相性」の良さ。そして、フロントの2人を、これまた兄弟のモンクのベースがしっかりとサポートする。これが、またリズム&ビートがぴったりと合っている。心地良いことこの上無しである。
 
ドラムのボビーも大健闘。モンゴメリー3兄弟の兄弟であるが故の「あうんの呼吸」をしっかりとリードする。ボビーの叩き出す趣味の良いドラムに合わせて、モンゴメリー3兄弟が「あうんの呼吸」を武器に、実に上質な、実に趣味の良いハードバップな演奏を繰り広げる。
 
当然、ジャズ・ギターの最高峰ウエスのギターは素晴らしいの一言。必殺のオクターブ奏法も全開。バンバンにオクターブ奏法を繰り広げる。喜びのオクターブ奏法。兄弟揃っての演奏を心から楽しんでいる。もう「ノリノリ」である。いらぬ遠慮の無い、リラックスしたウエスのギターは聴きどころ満載。
 
ここでのウエスは最高。ジャズ・ギターを志すジャズ者の方々には、必ず一度は耳にして頂きたい演奏。良い意味でテンション張りながら、心からリラックスしたジャズ・ギターはそうそう聴けるものではない。
 
良いアルバムです。特に、この6月の梅雨の朝。蕭々と降る雨を眺めながら、ちょっとヒンヤリとした梅雨寒の空気を感じながら聴く「ながら聴き」できるアルバム。加えて、そのリーダーが、そのジャズ・ギターがウエス・モンゴメリーなんて、これほど贅沢なジャズ鑑賞のシチュエーションはありません。至福の時です。
 
 

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