フュージョン・ジャズの発展型
1970年代後半から1980年代前半がフュージョン・ジャズのピークだった。その後、フュージョン・ジャズは、スムース・ジャズと名を変え、電気楽器の特性を活かしたムーディーなジャズに変質していった。一方、純ジャズを志向する硬派な向きは、フュージョンな要素と純ジャズな要素を併せ持った、時代の先端を行くコンテンポラリー・ジャズとして発展していった。
今日、ご紹介するアルバム『Over Crystal green』(写真左)は、前述後者の、純ジャズを志向する硬派な向きとして、フュージョンな要素と純ジャズな要素を併せ持った、時代の先端を行くコンテンポラリー・ジャズとして発展していった成果のひとつである。
本アルバムのタイトルは『Over Crystal green』となっているが、このアルバム・タイトルには、次のようなエピソードがある。
フュージョン全盛期の1976年に『Crystal Green/Rainbow 〜 featuring Will Boulware』という名盤があった(僕は、そのアルバムは手にしたことがないが・・・)。それから26年後、ウィル・ブールウェアが再びリーダーアルバムを吹き込むにあたり、その1976年のアルバムを超えることを目指して名付けられたアルバムタイトルが、この『Over Crystal Green』なのだそうだ。
1976年といえば確かにフュージョン全盛時代。今回のアルバムを吹き込むにあたってのメンバーを見渡し見ると、そのフュージョン全盛時代に活躍した強者どもばかり。その強者どもが26年を経て、今度は、フュージョンな要素と純ジャズな要素を併せ持った、時代の先端を行くコンテンポラリー・ジャズを聴かせるのだ
フュージョンの地域特性といえば、モダン・ジャズと同様、西海岸派と東海岸派とがある。西海岸派は、次にご紹介するデイブ・グルーシンやリー・リトナーが初期のスターとして大活躍、音的には、モダン・ジャズと同様「明るくて軽やか」。東海岸派は、ブレッカー兄弟やスティーブ・ガッドが大活躍。音的には、やはりモダン・ジャズと同様「太くて重量感があり、ソウルフル」。この『Over Crystal green』は、東海岸派のアルバムに位置づけられる(メンバーを見れば一目瞭然か・笑)。
さて、この新アルバム、とにかく、渋くて、格好良いのだ。決して8ビートにこだわらず、底に、モダン・ジャズの雰囲気を漂わせながら、現代の感覚にピッタリのコンテンポラリー・ジャズが展開される。
冒頭の「A Song For you」。かのレオン・ラッセルの作曲、カーペンターズがヒットさせた有名な名曲なのだが、これが絶品。マイケル・ブレッカーのテナーが泣けます。5曲目は「Don't Let Me BeLonely Tonight」。ジェームス・テイラーの名曲ですが、この曲は、ボブ・バーグのテナーがグッときます。適材適所のテナーの配置。ブールウェアのプロデュースの才を感じます。
極めつけは7曲目の「Waltz For Debby」。ジャズ・ピアノの巨匠ビル・エバンスの永遠の名曲ですが、この曲のアレンジといい、その内容といい、素晴らしいのひとこと。フュージョンの「Waltz ForDebby」が、こんな素晴らしい演奏で聴けるなんて・・・。
ホント、このアルバム、渋いです。時代の先端を行くコンテンポラリー・ジャズの成果のひとつとして、一度は聴いてみて下さい。良いアルバムです。
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