実に硬派な欧州風ジャズである
ジョージ・ムラーツのベースの威力を感じ取ったのは、この『QUEST』(写真左)。このアルバムで、ジョージ・ムラーツの名を知った。Dave Liebman (ss,a-fl), Richie Beirach (p), George Mraz (b), Al Foster (ds)というECM系のスーパースターが終結したスーパーバンド、「QUEST」の1981年のデビューアルバムです。
このアルバムを手に取ったのは、当時はディブ・リーブマンが目当て。1970年代、エレクトリック・マイルス・バンドの重要メンバーとして先鋭的なサックスを吹きまくったディブ・リーブマンである。そのディブ・リーブマンがメインストリームなジャズをやるのだ。これは聴きたいなあ、と思うのは当たり前。
しかも、ドラムのアル・フォスターも1970年代、エレクトリック・マイルス・バンドの重要メンバーである。そんなアル・フォスターがメインストリームなジャズをやるのだ。うへ〜っ、と思った。
そして、リッチー・バイラークは、ジャズ者初心者の当時、お気に入りのピアニストの一人。手数の多い、テクニック旺盛でありながら、良く唄うバイラークのピアノは、ジャズ者初心者の僕にとって判り易く、親しみ易いピアニストの一人だった。そんなバイラークがメインストリームなジャズをやるのだ。凄い、と思った。
しかし、このアルバムの冒頭「Dr. Jekyll And Mr. Hyde」を聴いて、ディブ・リーブマンは当然のことながら、その音を聴いて「えっ」と思ったのが、ジョージ・ムラーツのベースの音。質実剛健、正統派、太くて重心の低い、心地良くブンブン唸るベース。この生々しい太いベースの音は、米国のジャズではなかなか聴けない。「これ、誰や?」と思ったのは言うまでもない。
このジョージ・ムラーツの正統派ベースの音が、欧州派なベースの音が、この『QUEST』のアルバム全体の雰囲気を決定づけているようだ。あのポリリズムの塊のようなアル・フォスターが、ヨーロピアンなセンシティブでテクニカルなドラミングを披露する。手数の多い、饒舌なバイラークも、いつになく落ち着いた耽美的で印象派的なピアノを聴かせてくれる。
そして、意外なことに、フロントのリーブマンも、ここでは純ジャズ、メインストリームなサックスではあるが、完全にその雰囲気は「欧州派」。実に、音がスッキリと通った、メリハリのある、透明感溢れるサックスを聴かせてくれる。あのリーブマンがヨーロピアンなサックスをフルートを聴かせてくれる。犯人は「ジョージ・ムラーツのベース」である(笑)。
まあ、それが実のところ、本当かどうかは知らないが、この『QUEST』というアルバムは、全編を通じて、ヨーロピアンな雰囲気満載である。不思議だなあ。ジョージ・ムラーツのベース以外は、米国のジャズメンなんだけどなあ。
ジャズの世界って、凄いベーシストがいるもんだなあ、と単純に感心した。そして、この『QUEST』を何回も聴いているうちに、もしかして、このジョージ・ムラーツのベースって、かなり凄いかも、と思うようになった。そして、ジョージ・ムラーツは僕のお気に入りのベーシストの一人となった。
とにかく、この『QUEST』を通じて、ジョージ・ムラーツのベースを知った、というか意識した。1981年の出来事である。
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クエストの記事を拝見してとても懐かしく、バイラークのピアノもムラーツのベースも大好きなので、うれしくなりました。1980年のいつかは忘れましたが京都の小さなライブハウスでクエストのコンサートを聴きました。素晴らしかったのを覚えています。来日はライブアンダーザスカイのときでしょうかね。お店の名前が思い出せずネットで色々と検索しましたが、見当たりませんでした。もし何かご存じでしたら教えてください。今年67才になるJAZZ大好き爺です。
投稿: 田口健太朗 | 2023年4月20日 (木曜日) 15時50分