世界はゲットーだ!
浪人して大学に入って、その時のロックの状況に失望し、ロックを離れて、ジャズかR&Bに走ろうと思った。高校時代、70年代ロックに熱中している傍らで、密かに、ジャズとR&Bも聴いていた。
しかし、ジャズを聴いている、と言うと「おじんくさい」と言われるし、R&Bを聴いている、というと「おたく」と言われるし、まあ、当時は穏便にロックを聴いている、と一言で済ましておくほうが、なにかと都合が良かった。まあ、なぜジャズなのか、なぜR&Bなのかを説明するのが面倒だからね。
まあ、一言で言うと、オフ・ビートのブラック・ファンク、ゴスペルが子供の頃から好きだったからなのだ。ロックだって、オフ・ビート、ブルースという感覚が、自分の感性にバッチリとフィットしたからだ。ただ、ロックはあくまでも商業音楽。もう少し、ストイックでど真ん中なオフ・ビートのブラック・ファンク、ゴスペルチックな音楽が聴きたかった。まあ、当時のパンク・ロックは全く、僕の感性に合わなかったしね。
高校時代、ロックの傍らで聴いていたR&Bのバンドのひとつに「War」がある。L.A.のゲットーから60年代末に出てきて、70年代いっぱいにかけてヒットを連発した、ファンキーなバンド。メンバー構成が、様々な人種の混合バンドだったので、それはそれはユニークなR&Bになっていた。
Warのメンバーの共通の出身地は、L.A.のサウス・セントラル地区に隣接する街で、住人の大半がアフリカ系とヒスパニック系。よって、Warのサウンドには、黒人音楽とラテン音楽の要素が色濃い。そこに、それぞれのメンバーが持ち込む英国風味のアメリカ南部の音楽と、ヨーロッパ風の端正なハーモニカが加わり、War独特のクロスオーバーなR&Bが出来上がった。
その最初の成果が、1972年11月にリリースされた『The World is a Ghetto』(写真左)。このアルバムには、「世界はゲットーだ(The World Is A Ghetto)」(1972年7位)、「シスコ・キッド(The Cisco Kid)」(1973年2位)の2枚のヒット・シングルが含まれており、僕が初めてWarに触れたのは、中学生の頃、「世界はゲットーだ」だった。
この曲をラジオの深夜放送で聴いたショックは良く覚えている。これって何、と思った瞬間、同時に「これは良い」と思った。しかし、周りにこのクロスオーバーなR&Bなバンドの話をするのには、なぜか憚られた。それだけ怪しげな、音とリズムの混合でしたね。凄い音楽が米国では流行っているんだ、と軽いショックを受けました。
今の耳で聴いても、このWarの音はユニークだ。冒頭は「The Cisco Kid」。この1曲で、Warの音の特徴がしっかりと把握できる。R&Bとラテン音楽の融合。全体を覆う音の雰囲気は、当時、米国西海岸に残っていた「サイケデリック・ロック」なもの。
実にクールな響きを宿したR&Bとでも表現したら良いのか、モータウンを代表する黒人が演出する、商業音楽的なR&Bとはちょっと違う。音がクールなのだ。そのクールなR&Bは、2曲目の「Where Was You At」にも引き継がれる。この曲もクールな「R&Bとラテン」のクロスオーバーな音が詰まっている。それは、5曲目のヒット曲であり、Warを代表する名曲「The World Is A Ghetto」でも炸裂する。
そして、Warの音楽でユニークなのは、3曲目のインストルメンタル・ナンバーの「City, Country, City」。この演奏には、R&B、ジャズなどの米国ルーツ・ミュージックとラテン音楽、そして、欧州の大衆音楽、米国西海岸のサイケデリック・ロック、様々な音楽の要素がごった煮に詰まっていて、しかもそれがクールなオフ・ビートに乗って展開されるという、実にユニークな、War独特のクロスオーバーなR&Bがここにある。このインスト・ナンバー「City, Country, City」が、Warの、唯一無二な、他にフォロワーを作ることの無かった、圧倒的なユニークさを物語っている。
レコード会社のキャッチ「73年のビルボード年間アルバム・チャートにおいて見事1位を記録した、ウォーの大傑作。ソウル、ファンク、ジャズ、ラテン…を絶妙にミックスアップした、ウォー・サウンドの真骨頂がここに!」。正にその通り。正に言い得て妙。素晴らしいキャッチですね。War独特のクロスオーバーなR&B、これがとにかくユニークで、一度「はまる」と、とことん「はまります」。事実、僕は、Warに出会って、早35年以上が経過していますが、未だに抜け出すことができません(笑)。
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