ピアノ・トリオの代表的名盤・19
村上春樹さんが、著書「意味がなければスイングはない」で、シダー・ウォルトンを採り上げ、べた褒めしているのを読んで、んん〜っと思って早幾年。
Cedar Walton(シダー・ウォルトン)。1934年1月生まれ。1960年代の初め、ピアニスト、アレンジャーとして、Art Blakey & Jazz Messengersに籍を置き、Freddie Hubbard (tp), Curtis Fuller (tb), Wayne Shorter (ts), Reggie Workman (b) と活動を共にし、幾枚かの名盤を残した。Jazz Messengersを脱退後は、フリーで様々なミュージシャンとアルバムを残している。
シダー・ウォルトンについては、ちょっと前、2009年9月21日のブログ(左をクリック)で、彼の代表作の一枚、1967年リリースの『Cedar!』について語っているので、そちらも一読頂きたいのだが、今回は、シダー・ウォルトンのピアノ・トリオの佳作をご紹介したい。
新宿ピット・インで、1974年12月23日に行なったライヴ実況盤である。その名も、まんまの『Pit in』(写真左)。ちなみにパーソネルは、Cedar Walton (p), Sam Jones (b), Billy Higgins (ds)。パーソネルを見ただけで、よほどのことがなければ、このピアノ・トリオのライブ盤は良い出来になる気配がプンプンする。
リーダーのシダー・ウォルトン、ベースのサム・ジョーンズ、ドラムのビリー・ヒギンスとは既知の間柄だったらしく、冒頭から、和気あいあいのリラックスした雰囲気。リラックスした雰囲気の中で、加えて、新宿ピット・インという小規模なライブハウスというシチュエーションも相まって、優れたジャズメン達の、普段着なジャズの「凄みとスリル」が満載である。
シダー・ウォルトンのピアノは、どちらかといえば派手さはなく、じっくり聴かせるピアニストである。ピアノの音の芯が崩れない、というか、音の強弱、音の緩急によって音が崩れること無く、クッキリしているのが特徴。
クッキリしているが、その音は「角が立っている」訳では無く、優しく丸いピアノのタッチが実に特徴的。早いパッセージの曲も、耳にケンケン響くことなく、丸く柔らかに、適度なテンションをもって、ポジティブな音色を聴かせてくれる。そのテクニックは優秀の一言。
ピアノ・トリオの「佳作の条件」は、他の2人。ベースとドラムの出来も良いことが挙げられる。このライブ盤では、ベースのサム・ジョーンズ、ドラムのビリー・ヒギンスの出来も申し分無い。サム・ジョーンズの野太い、ベースの胴がブルブル震えるようなソロは迫力満点、ビリー・ヒギンスのドラミングは、ハードバップを超えた、実にコンテンポラリーな響きを宿した、オーソドックスではあるが、当時の時代の先端をいくドラミング。
良いピアノ・トリオのライブ盤です。録音も良いですし、新宿ピット・インでのライブに参加しているような観客の熱気がまた良いアクセントになっています。さすが「メイド・イン・ジャパン」ものである。シダー・ウォルトンのピアノが良い響きです。
最後に、このライブ盤の唯一の「問題点」がジャケット・デザイン。このデザインはなあ。East Windレーベルは、ジャケット・デザインが玉石混淆としていたんだが、このデザインは「ハズレ」orz。決して、ジャケ買いしないで下さい(笑)。
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