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2011年2月18日 (金曜日)

このデュオは本当に絶品である

ジャズを聴き始めた頃、これは凄い、と聴いた瞬間に感じ、それ以来、ずっと追いかけているデュオ・ユニットがある。Chick Corea(チック・コリア)&Gary Burton(ゲイリー・バートン)のデュオ。今や、ジャズ・ピアノの重鎮チックとヴァイヴの重鎮バートンとのデュオである。
 
これがまあ、言葉で表現するにあまりに拙いのであるが、クリスタルで硬質、硬軟自在、変幻自在、魅惑的なユニゾン&ハーモニー、モーダルで印象的なフレーズ、心地良く美しい響き、ハイテクで疾走感あふれるインプロビゼーション。もうジャズの即興演奏の良いところを全て備えた、ピアノ&ヴァイヴの異色の組合せ。
 
但し、決してファンキーでは無く、決してバップ的では無い。現代のジャズ界で十分通用するコンテンポラリーなジャズ。ポップと言うよりはモーダル。それでいて、実にキャッチャーなフレーズが満載。チック&バートンの演奏には歌心が満載。だから、聴いていて心地良いし、何回聴いても飽きない。
 
そんなチック&バートンの傑作ライブ盤が『In Concert Zurich Oct 28, 1979』(写真左)。発売当時の邦題は『クリスタル・サイレンス・ライブ』。今では「チック・コリア&ゲイリー・バートン・イン・コンサート」と呼ばれている。スイングジャーナル誌のゴールドディスク、そしてディスク大賞・金賞も受賞している名盤である。
 
冒頭1曲目の「Señor Mouse」から、もうメロメロである。疾走感。そして、ピアノとヴァイヴの魅力的な響き。そして、チック&バートンのハイテクニックではあるが、決して耳障りにならない、転がるように美しいユニゾン&ハーモニー。しかも、曲自体が持つフレーズがキャッチャー。この1曲だけでも、このデュエットの素晴らしさが良く判る。
 
続く「Bud Powell」も名演。転がるように愛らしい、明るくポジティブな響きのメイン・フレーズが実に良い。続くチック、そしてバートンのインプロビゼーションの素晴らしさ。特に、4本マレットのヴァイヴの魔術師ゲイリー・バートンのそのヴァイヴの響きたるや絶品である。
 

Chick_burton_in_concert

 
しかし、気を付けなければならないのは、このライブ盤、LP時代とCD時代と収録曲数が異なる。LP時代は2枚組で、C面の1曲目、2曲目にあった、バートンのソロ「I'm Your Pal / Hullo, Bolinas」と、チックのソロ「Love Castle」が、CDには収録されていない。
 
実はこのソロが、これまた絶品なのだ。しかも、チック、バートンそれぞれの個性がはっきりと判る。それぞれの個性を踏まえ、二人のデュエットを愛でる。そんな当たり前なことが、LP時代では可能であったのだが、CD時代になって、CD1枚に納めたいが故、オミットされた。なんてことをするんだ、マンフレッド・アイヒャー。
 
この二人のソロはオミットすべきではない。この二人のソロは、このライブ盤においては必須だろう。しかし、マニアの方には朗報。2009年で、突如、ECMからリリースされた4枚組ボックス盤『Crystal Silence, The ECM Recordings 1972-79』に、CDとして初めて収録されました。
 
LP時代の『In Concert Zurich Oct 28, 1979』と同じ収録曲で、CDフォーマットで愛でるには、このボックス盤が必要になりますが、マニアにとっては仕方が無い。僕はダウンロード・サイトから購入しました。
 
とにかく、このライブ盤は絶品です。チックの硬質なタッチの、歌心溢れるメロディアスなフレーズは本当に素晴らしいし、バートンのヴァイヴは、まさに「4本マレットの魔術師」で、それはそれは、目眩くヴァイヴ独特の長く響く音と転がるようなフレーズ。
  
ジャズという既成の枠を遙かに超えた、優れた演奏家2人による、ピアノとヴァイヴの2台の楽器の「純粋な音楽」「純粋な演奏」がそこにある。
 
今でも、冒頭の2曲「Señor Mouse」〜「Bud Powell」を聴くと、震えが来るほど心が揺さぶられ、感動する。その感動が、今でも「ポジティブな感動」なのが、僕はとても嬉しい。 
 
 
 
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