不思議な欧州ピアノ・トリオ
最近の日本ジャズ・ミュージシャンの活躍には目を見張るものがある。特に、日本女子ジャズ・ミュージシャンの活躍には目を見張るものがある。欧州でも米国でも、最近、活躍するジャズ・ミュージシャンは皆、日本人女子である。
今回、たまたま、iTunesを徘徊していて見つけた平林牧子もそんな一人。クラシック・ピアノやバイオリンに手を染めながらもジャズへ転向、バークリー音大に学び、1990年にデンマークへ移住。以来、コペンハーゲンを拠点に活動を続けている日本人女性ピアニストである。もう20年ぐらい、デンマークのコペンハーゲンに在住と聞くので、もはや日本人ミュージシャンというよりは、欧州ミュージシャンといって良いかもしれない。
初めて平林牧子を体験したアルバムが『MAKIKO / マキコ』(写真左)。名門enja(エンヤ)からリリースされたアルバムである。ジャケットから受ける印象は、柔らかで爽やか。しかも、欧州ジャズの名門enjaからのリリース。これは期待が持てるアルバムである。
これが、ですね。実に欧州ジャズしているというか、ちょっとジャズから外れているというか、なんか不思議な内容のピアノ・トリオ盤なんですね。ちなみにパーソネルは、Makiko Hirabayashi(p) ,Klavs Hovman(b), Marilyn Mazur(ds,per)。2005年10月コペンハーゲン録音になる。
平林のフレーズの響きはヨーロピアン。でもその旋律はアジアンテイストな、実にユニークなもの。ちょっとエキゾチックでフォーキーなフレーズは、今まで聴いたことのない欧州ジャズ・ピアノ・トリオである。こんなジャズ・ピアニストが欧州はコペンハーゲンで生息しているとは、しかもそのピアニストが日本人であるとは、なんともはやジャズとは懐の深い音楽である。
そのエキゾチックな雰囲気を増幅するのが、Marilyn Mazurのドラム&パーカッション。Marilyn Mazurのドラム&パーカッション単体でも聴く価値のある、現代音楽的でフリーな自由度の高いドラム&パーカッションの展開と響き。
これは、どう聴いてもジャジーでは無い。しかも響きは硬質でクリスタル。欧州ジャズの雰囲気を強く残しつつ、無国籍な純粋なドラム&パーカッションのみのインプロビゼーションは、実に個性的である。
平林のピアノも実に個性的。サード・ストリーム寄りの幾何学模様的な展開も、とても「不思議」。ユニークと言うよりは聴いていて「不思議」な気分にさせてくれる。彼女のフレーズの底に流れるのは、ジャジーなビート。ブルースを基調にしていることは明らか。
そういうところは明らかにジャズなんだが、インプロビゼーションの方法論は、実に現代音楽的であり、クラシック的である。加えて、実に「ストイック」な展開。これをなんと表現したら良いか。従来の応手ジャズでは無い。しかも誤解を恐れずに言うなら、これは実に「ジャズらしくない」ピアノ・トリオである。
実に「不思議」な欧州ピアノ・トリオである。瞑想的・抽象的でもあるし、幾何学的でもある。サード・ストリーム的とも言えるが、底に流れる雰囲気はジャジーであるブルージーでもある。これは実に面白い個性ではある。しかし、メインストリームなジャズでは無いことも確か。これからどういう展開を経ていくのか、ちょっと暫くは目を離せない、欧州の日本人ジャズ・ピアニストの一人である。
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