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2011年2月 8日 (火曜日)

スワンプ・ブームの正体

デラニー&ボニー(Delaney & Bonnie)は、米国のデュオ歌手。デラニー・ブラムレットとボニー・ブラムレットの夫婦により結成された。サイケデリック・ロックをベースに、サイケなテイストを極力抑制しながら、米国のルーツ・ミュージックをコマーシャルに織り交ぜた独特の音楽性、当時は「スワンプ」と呼ばれるジャンルの音世界が特徴のデュオである。
 
1970年前後、デラニー&ボニーによって、英国の主だったロック・ミュージシャンは「スワンプ」にイチコロ。ブルース・ロックをかなぐり捨てて、米国ルーツ・ロックと信じた疑わなかった「スワンプ」にひた走った。
 
その最先鋒がエリック・クラプトン。なにが響いたかしらないが、クラプトンは、このデラニー&ボニーによって、スワンプに走った。最初は夫のデラニーがクラプトンを利用し、クラプトンを「スワンプ」漬けにし、クラプトンにボーカルを担わせて、そのプロデュースをかって出て、法外な報酬を得たらしいが、実はクラプトンの方が「したたか」だった。
 
1970年代のクラプトン。デレク&ドミノスは例外として、「461オーシャン・ブールヴァード」以降、1970年代クラプトンのベースは、デラニー&ボニーの音楽性にある。クラプトンは、デラニー&ボニーの音楽性をしっかりと「パクッて」いる。デラニー&ボニーからクレームが付かなかったのが不思議な位に、思いっきり「パクッて」いるのだ。
 
最近、十分に聴き終えたボックス盤がある。『Delaney & Bonnie & Friends with Eric Clapton』(写真右)のコンプリート・ボックス盤である。デラニー&ボニーがエリック・クラプトンら「フレンズ」と共に行なった1969年欧州ツアーを録音したライヴ盤が4枚組CD超デラックス・ヴァージョン。現在では、『Delaney & Bonnie & Friends On Tour with Eric Clapton – Rhino Handmade Deluxe Edition』(写真左)と呼ばれる(長ったらしいネーミングやなあ)。
 
Delaney_bonnie_clapton
 
ライヴ盤が4枚組の収録公演は下記の通り。
 
CD1 1969年12月1日 英ロンドン、ロイヤル・アルバート・ホール
CD2 1969年12月2日 英ブリストル、コルストン・ホール
CD3 1969年12月7日 英クロイドン、フェアフィールド・ホール 1st show
CD4 1969年12月7日 英クロイドン、フェアフィールド・ホール 2ndst show
 
今までオフィシャルでリリースされていたものはCD3&4からの抜粋になります。しかも、このCD4枚組ボックス盤は、定評あるRhinoのリマスターですので、音質はかなり良いです。これも「買い」の評価ですね。オフィシャルでリリースされている『Delaney & Bonnie & Friends with Eric Clapton』は、その音質にちょっと課題が残る内容でしたので、このCD4枚組ボックス盤の音質は、マニアとしては嬉しい限り。
 
このCD4枚組ボックス盤を聴くと、クラプトン、デイヴ・メイソン、そして、ジョージ・ハリスンがこぞって、デラニー&ボニーに影響受けたの良く解りますが、特に、クラプトンは、思いっきり「パクッた」。
 
ボニー・ブラムレット=イボンヌ・エリマンとして、女性ボーカル、イボンヌ・エリマンを傍らに配して、デラニー&ボニーが宿していたサイケの雰囲気をすっかり消し去り、米国で受けの良い米国南部ブルースの雰囲気をしっかり導入して、スワンプの真髄である「レイドバック」したブルース・ロックに仕立て上げ、「クラプトン・オリジナル」として展開した。
 
このRhinoのCD4枚組ボックス盤を聴けばそれが良く判る。クラプトンは「したたか」だった。デイヴ・メイソンとジョージ・ハリスンは、デラニー&ボニーの「スワンプ」を体験して、それぞれオリジナルな「スワンプ・ロック」を表現したが、クラプトンは、デラニー&ボニーの忠実なフォロワーだった。フォロワーどころか、デラニー&ボニーの音楽性を当時のトレンドにしっかりと合わせて、「クラプトン・オリジナル」として焼き直した。
 
非常の様々な角度から楽しむことの出来る、含蓄のあるCD4枚組ボックス盤です。1970年前後の「スワンプ・ロック」のマニア御用達です。普通のファンの方々は、オフィシャルでリリースされている『Delaney & Bonnie & Friends with Eric Clapton』で、デラニー&ボニーの「スワンプ」を体験できれば良いかと思います。
 
 
 
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