チックのファンタジー3部作・2
チック・コリアは1941年6月生まれ。今年で70歳になる。チックの父親はイタリア出身、母親はシシリー島の出身。祖父が地中海を放浪していたりで、地中海繋がりで、チックの家系には、スパニッシュの血が流れていたとのこと。
そんな環境に育った故か、チックの音の最大の特徴は、メロディラインにもリズム&ビートにもラテン色が強いこと。ラテン色の中でも、一番キャッチャーな特色は「スパニッシュ色」。チックの代表曲のひとつに、ズバリ「Spain」という名曲があるくらいだ。
そんなチックの「スパニッシュ志向」を凝縮して、アルバムコンセプトとして、チックのコンポーザー&アレンジャーとしての才能を大いにふるった傑作アルバムが『My Spanish Heart』(写真左)。1976年の作品。僕が勝手に「チックのファンタジー3部作」と名付けた、1970年代中盤にリリースされた、コンテンポラリーなジャズ組曲アルバム群の2枚目。
LP時代は2枚組でリリースされたほどのボリュームある内容。ちなみにパーソネルは、Stuart Blumberg, John Rosenberg, John Thomas (tp) Ron Moss (tb) Connie Kunka, Barry Socher (vln) Carol Mukogawa (vla) David Speltz (vlc) Chick Corea (p, el-p, syn, org, vo) Jean-Luc Ponty (violin) Stanley Clarke (b) Steve Gadd (ds) Narada Michael Walden (handclapper) Don Alias (per) Gayle Moran (vo)。当時のフュージョン・ジャズのオールスターというよりは、しっかりとチックが人選した精鋭メンバーという感じ。
このアルバムは凄い内容である。チックの「スパニッシュ志向」全開。スパニッシュ&ラテン・フレーバー満載。「スパニッシュ志向」オンリーのアルバムコンセプトのみでありながら、LP2枚組のボリュームを決して飽きさせない。決して、緩んだ部分が無い。先ず第一に、どの曲もどの曲も曲自体の質が高い。加えて、そんな質の高い曲に対して、様々なアレンジと演奏の工夫が施されており、それぞれの曲の完成度は高い。そして、アコースティックな楽器とエレクトリックな楽器の織り交ぜ方が実に上手い。
加えて、このアルバム全編に渡って、チックのキーボーディストのテクニックが素晴らしい。アコピは当然のことながら、特にシンセサイザーの使い方、音の出し方、音色の選び方が素晴らしい。これはもう天才的である。ジャズ界の中で、電気キーボードについての理解度合いについては、恐らくチックが第一人者だろう。電気キーボードの演奏に携わる方々はこのアルバムでのチックのキーボードを一度は耳にして欲しいと思う。
バックを支えるミュージシャンも、単なるオールスター的集まりでは無い。しっかりとチックが人選した精鋭メンバー達である。実に質の高い演奏でチックを支える。特に、Stanley Clarke (b) Steve Gadd (ds) Don Alias (per) のリズム・セクションが好調。
とりわけ、いつになく、ベーシストのスタンリー・クラークが好調。気持ち、気合いの入ったスタンリー・クラークのベースはやはり素晴らしい(逆に手を抜いたスタンのベースは聴けないけど)。ガッドのドラミングはチックにピッタリ。チックの流れるようなフレーズを決して邪魔しない、チックのインプロビゼーションの疾走感を煽り加速させる、実に相性の良いドラミングだ。
収録されたどの曲も素晴らしいが、冒頭の「Love Castle」のチックのアコピとエレピとシンセの乱舞は見事。組曲風の「El Bozo, Part I〜Part III」のシンセのフレーズには感動の一言。特に「El Bozo, Part III」のシンセのフレーズには、感動の想いに心が打ち震え、常に感動の想いが溢れてくる。この「El Bozo, Part III」のチックのシンセの響きが大好きで、この「El Bozo, Part III」だけとっても、今までに何百回聴き直したか。それほどまでに美しい響きがこのアルバムに満ちている。
僕にとって、決して飽きないアルバムですね。チック・コリア入門盤としては、ちょっと内容が濃すぎるかなあ。でも、チックのキーボーディストとしての実力を知るには、格好のアルバムです。LP時代は2枚組。CDでは1枚に収録されたので、お買い得でもあります。この『My Spanish Heart』は、チックの「スパニッシュ志向」の頂点に位置する傑作です。
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