« CTIレーベルらしいアルバム・2 | トップページ | パット・メセニーの「Warm Side」 »

2011年2月12日 (土曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤・18

今年の冬、やっとまとまって雪が降った。屋根の上にはうっすら雪が残っている。畑の雪は溶け始めている。道には雪は無し。なんとか、雪の影響は少なかった我が千葉県北西部地方。
 
以前より、雪が降れば、必ず持ち出すピアノ・トリオ盤がある。Duke Jordan(デューク・ジョーダン)の『Flight To Denmark』(写真左)。なぜ雪が降れば必ず持ち出すのか。それはジャケットを見て頂ければ判ります。
 
デューク・ジョーダンはバップ・ピアニスト。ビ・バップの創始者の一人、伝説のアルト奏者チャーリー・パーカーとの共演でも知られる。1922年4月生まれ。2006年8月没。途中演奏活動を中断しているが、彼がジャズ・ピアニストとして活躍していた時のスタイルは、徹頭徹尾「バップ・ピアニスト」。人気に迎合したファンキーや、ジャズの先端スタイルであるモードとは全く無縁で、1960年代までは、全く人気が出ませんでした。
 
しかし、何が幸いするのか人生って判らんなあ、とつくづく思うのは、いきなり、1970年代に入って、欧州で、ハードバップがリバイバルします。なんと、ジョーダンは、その欧州のハードバップ回帰のブームに乗って、デンマークのSteepleChaseレーベルから、リーダー・アルバムを発表するるようになりました。これが「大当たり」。
 
そんな波に乗ってリリースされた、ピアノ・トリオの優秀盤がこの『Flight To Denmark』。1973年11月の録音。ちなみにパーソネルは、Duke Jordan (p) Mads Vinding (b) Ed Thigpen (ds)。いや〜、北欧のジャズ・レーベルSteepleChaseらしい、実に優れた内容のピアノ・トリオ盤です。LP時代の初出の時の収録曲は以下の通り。
 
A面
1. No Problem (危険な関係のブルース)
2. Here's That Rainy Day
3. Everything Happens to Me
4. Glad I Met Pat
B面
1. How Deep Is the Ocean?
2. On Green Dolphin Street
3. If I Did - Would You?
4. Flight to Denmark
 
 
Flight_to_denmark
 
 
自作の「No Problem」や「Flight To Denmark」と、その他、なかなか渋い選曲のスタンダード曲を織り交ぜて、実に魅力的な収録曲のラインナップを形成しています。僕にとっては、スタンダード曲の中での大のお気に入り「On Green Dolphin Street」が入ったB面がヘビーローテーションでした。
 
デューク・ジョーダンのピアノは、バップ・ピアニストのマナーを基本にしつつ、端正でブルージー、タッチは硬質で派手目でありながら、ちょっと「くぐもった」音色が特徴的で、そこはかと無く漂うマイナー調の翳りが個性。一言で形容するのは、なかなか難しい個性だが、一聴するだけでなんとなく判る、不思議な個性のピアニストである。
 
この『Flight To Denmark』が、ピアノ・トリオの代表的名盤として挙げられる要素のひとつに、リズム・セクションの存在が挙げられる。マッツ・ヴィンディングのベースとエド・シグペンのドラミング。どちらも、淡々とした枯れた味わいの、それでいてメリハリのバッチリ効いたリズム&ビートが素晴らしい。北欧のハードバップを踏襲したリズム&ビートとでも形容したら良いだろうか。米国では絶対に表現出来ない、欧州独特のリズム&ビートが、このアルバムの根底にしっかりとある。
 
この欧州独特のリズム&ビートが、デューク・ジョーダンの、硬質で派手目でありながら端正でブルージーなタッチと相性抜群なのだ。このアルバムを聴いて思うのは、ピアノ・トリオって、ピアノとリズム・セクションとの相性が成否の鍵をかなりの面で握るんやなあ、ということ。ピアニストだけの実力で、優れたピアノ・トリオ盤は成立しない。

アルバム全体に漂うマイナー調な寂寞感が実に心に染みる、演奏テクニックやアレンジなど、演奏内容的にも優れたアルバムです。1970年代の欧州でのハードバップのリバイバル・ブームが良い方向に作用した、北欧の環境ならではのピアノ・トリオ盤です。当時の北欧でしか為し得なかった、独特の雰囲気のハードバップなピアノ・トリオ盤がここにあります。
 
ジャズ者初心者の方々からジャズ者ベテランの方々まで、幅広くお勧めすることができる「ピアノ・トリオの代表的名盤」の一枚です。
 
 
 
★Twitterで、松和のマスターが呟く。検索で「松和のマスター」を検索してみて下さい。名称「松和のマスター」でつぶやいております。
 
★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。
 

« CTIレーベルらしいアルバム・2 | トップページ | パット・メセニーの「Warm Side」 »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ピアノ・トリオの代表的名盤・18:

« CTIレーベルらしいアルバム・2 | トップページ | パット・メセニーの「Warm Side」 »

リンク

  • まだまだロックキッズ(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のロック」盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代ロックの記事を修正加筆して集約していきます。
  • 松和の「青春のかけら達」(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のJポップ」、いわゆるニューミュージック・フォーク盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代Jポップの記事を修正加筆して集約していきます。           
  • AORの風に吹かれて(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    AORとは、Adult-Oriented Rockの略語。一言でいうと「大人向けのロック」。ロックがポップスやジャズ、ファンクなどさまざまな音楽と融合し、大人の鑑賞にも堪えうるクオリティの高いロックがAOR。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、AORの記事を修正加筆して集約していきます。  
2023年5月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31      

カテゴリー