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2011年1月 4日 (火曜日)

ジャズは芸術だと感じた瞬間

アコースティック・マイルスも、ぼちぼち聴き直している。アコースティック・マイルスのハイライトは「モード・ジャズ」。この「モード・ジャズ」が、ジャズ者初心者の頃、ジャズ本を読んでも全く判らず、ジャズ本の紹介盤に、マイルスの『Kind Of Blue』(写真左)があったので、いきなり飛びついた。
 
マイルスのペットの音を追っていると、なんとなく「モード奏法」なるものが判ってきた。ふむふむ。マイルスの音をイメージしながら、ジャズ本の解説を読むと、なるほど、なんとなく判る。
 
しかし、クラシックの楽理なんかを、ある程度、基礎として理解していないと、ちとしんどい。子供の頃からピアノを習ってきて、ピアノの先生からクラシックの楽理の手ほどきをして頂いたことが、この時、プラスになった。今でも、十分に音楽を聴く上でプラスになっている。楽理なんか必要ないよ、という声も聞こえるが、音楽を理解する上での補助には十分になる。
 
さて、このマイルス・デイヴィスの『Kind Of Blue』であるが、このアルバムは、モード・ジャズの完成形では無い。当時のジャズ、ハードバップの先にある、新たなジャズの発展形を指し示したもの。所謂、モード・ジャズのブロトタイブである。
 
演奏を聴けば判るのだが、この『Kind Of Blue』のセッションの中で、モード奏法を理解し、モード奏法に果敢にチャレンジしているのは、マイルス・デイヴィスと、ピアノのビル・エバンスの2名のみ。この2人のコラボレーションこそが、モード・ジャズのプロトタイプと言える。
 
思えば、マイルスもビルもクラシックの楽理について、正式な教育を受ける機会を得、十分に学び、理解した経験を持っている。マイルスもビルも、クラシックの楽理とジャズの楽理の双方を理論的に照らし合わせ、モード奏法とはいかなるものか、というテーマに対して、理路整然と確固たる回答を持って、このセッションに臨んでいるように感じる。
 
Kind_of_blue
   
他のメンバーは残念ながら、モード奏法というものを感覚で捉えて、雰囲気的にモード奏法をなぞらえてるところで留まっている。アルトのキャノンボール・アダレイのプレイが代表的。テナーのコルトレーンだって、モードを感覚的に捉えてはいるが、理路整然とはしていない。バックのリズム・セクションは、ハードバップとしては斬新的で先進的なビートを供給するが、決して、モード奏法にはフィットしていない。
  
『Kind Of Blue』のセッションが執り行われた1959年当時、モード奏法を理解し、自由自在にアドリブを繰り広げることのできるジャズメンは、ほとんどいなかった。この『Kind Of Blue』を世に問うて、マイルスは一旦、モード・ジャズを封印する。後に、1965年、ハービー・ハンコック、ウェイン・ショーター、ロン・カーター、トニー・ウィリアムスに恵まれ、『E.S.P.』をリリースするまで、マイルスはモード・ジャズを封印した。 
  
しかし、この『Kind Of Blue』のセッションは、明らかに、モード・ジャズの萌芽の瞬間を捉えた、永遠の名盤である。マイルスとビル。たった一度の邂逅であったが、その成果は計り知れないものがあった。モード・ジャズのブロトタイブを創出できたことは、後のジャズ界にとっては幸せなことで、ジャズが大衆音楽としてだけでなく、音楽芸術としても成立することを証明したエポック・メイキングな出来事であった。
 
昔々、遙か昔、まだ大学生の頃、この『Kind Of Blue』を何度も聴き返し、モード奏法のコンセプトに感動した瞬間、その瞬間こそが、僕が初めて「ジャズは芸術だと感じた瞬間」であった。
 
ということで、私こと松和のマスターは、ジャズ者初心者の方々には、この『Kind Of Blue』をお勧めしないようにしています。『Kind Of Blue』を真に体験する時期は、ジャズに馴れ親しみ、ジャズの歴史、ジャズの楽理の変遷に興味を持ってからでも遅くは無いでしょう。 
 
 
 
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