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2011年1月11日 (火曜日)

マイルスのミュートを愛でる

マイルス・デイヴィスはミュート・トランペットの第一人者である。ミュートとは「弱音器」のこと。トランペットの音を弱めるために必要に応じて楽器に取り付けられる器具である。マイルスは「ハーマンミュート」を用いて、独特の寂れた音色をコントロールすることで有名になった。
  
その音色は「卵の殻の上を歩いているような」と形容され、その繊細で複雑な音色の表現は、トランペットの音の表現を飛躍的に拡大した。というか、ミュート・トランペットの表現は、マイルスにより完成され、未だ、マイルスのミュート・トランペットの表現を凌駕するトランペッターは存在しない。
 
それほどまでに完成されたマイルスのミュート・トランペット。マイルスは、アコースティック・マイルスの世界の様々なアルバムで、ミュート・トランペットを披露しているが、僕が大推薦するアコースティック・マイルスにおいて、ミュート・トランペットを満喫できるアルバムが『1958 MILES』(写真左)。
 
ちなみにパーソネルは、Miles Davis (tp) Cannonball Adderley (as) John Coltrane (ts) Bill Evans (p) Paul Chambers (b) Jimmy Cobb (ds) 。1〜4曲目までは、1958年の録音。ただし、5曲目の「Little Melonae」だけ、1955年録音。パーソネルは、Miles Davis (tp) John Coltrane (ts) Red Garland (p) Paul Chambers (b) Philly Joe Jones (ds)。
 
よって、このアルバムの聴きどころは、1〜4曲目に集中する。なぜなら、あのジャズ界の歴史的大名盤『Kind Of Blue』のメンバーによる、スタンダード曲の演奏集だからである。
 
この1958年録音の1〜4曲目の内容が凄い。マイルスが標榜したハードバップなジャズ演奏がここにある。その最大の立役者がピアノのビル・エバンス。マイルスが欲した、音数少なく間を活かしたピアノ伴奏。具体的に言わないと判らないからと、マイルスが語った表現が「あのアーマッド・ジャマルの様に弾け」。
 
1958_miles
 
その「あのアーマッド・ジャマルの様に弾け」を、ビル・エバンスは、いとも容易く、このアルバムに収録されたセッションで実現している。レッド・ガーランドが苦労に苦労を重ね、それでも到達できなかった「あのアーマッド・ジャマルの様に弾け」を、ビル・エバンスが、このアルバムに収録されたセッションで実現している。とにかく、1958年録音の1〜4曲目のビル・エバンスのピアノに耳を傾けて欲しい。これぞ、音数少なく間を活かしたピアノ伴奏の究極な音と僕は思う。
 
加えて、この1958年セッションでのマイルスのミュート・トランペットの表現が素晴らしい。トランペットでここまで繊細かつふくよかな表現が出来るとは、とにかく驚愕に値する。音数少なく間を活かしたビル・エバンスのピアノ伴奏がマイルスを触発し、マイルスはミュート・トランペットの表現で最高の演奏を聴かせてくれる。
  
面白いのは、テナーのコルトレーンとアルトのキャノンボール。どちらも、どちらかと言えば「雄弁で冗長な」インプロビゼーションが得意なはずなんだが、このアルバムに収録されたセッションでは、音数を選んだ効果的なインプロビゼーションにチャレンジしている。これがまあ、実に素晴らしいインプロビゼーションになっている。コルトレーンもキャノンボールも音数が少なくても、それはそれは素晴らしいブロウを披露してくれている。
 
収録されたどのスタンダード曲も素晴らしい演奏である。マイルスのミュート・トランペットが素晴らしく映えている。リズムセクションのコブのドラム、チェンバースのベース共に、ハードバップのジャンルにおける先鋭的な最高峰のビート供給を実現している。
 
この『1958 MILES』は、マイルスが標榜するハードバップ・ジャズの最高峰の演奏を捉えたものである。池田満寿夫さんによるジャケット・デザインも秀逸。クールで硬派なハードバップなアルバムです。マイルスの考えるハードバップを愛でるに最高なアルバムです。 
 
 
 
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