CTIレーベルのケニー・バレル 『God Bless The Child』
昨日、デオダートやボブ・ジェームスが、1970年代前半から中盤にかけて所属した「CTIレーベル」について、ちょっと触れた。CTIレーベルとは何か。
CTIレコード(CTI Records)は、1967年、プロデューサーのクリード・テイラー(Creed Taylor)によって創設された、ジャズ・レコードレーベル。テイラーはジャズの大衆化を図るために設立し、クロスオーバー(フュージョンの前身)のブームを作った(Wikipediaより)。CTIとは「Creed Taylor Issue」の頭文字をとったもの。
CTIレーベルの特徴は、とにかく聴き易いアルバムが多いこと。ジャズ者初心者でもOKなアルバムばかりがズラリと並びます。それはアレンジャーの力に負うところが大きい。優れたアレンジャーの手によって、クラッシックや当時のヒット曲などを、ジャジーにキャッチャーに聴かせてくれるところが人気の秘密。大胆にストリングスやブラスセクションを導入したアレンジも、そのアレンジの特徴のひとつ。
そして、当時、新興のレーベルでありながら、ハードバップ時代に活躍した、純ジャズ系の一流のミュージシャンを積極的に取り込んで、フリージャズなどの判り難いジャズには目もくれず、もともとジャズの本質のひとつであった「大衆性」に重きを置いた、ジャズ者初心者にとっても聴きやすい、イージーリスニング・ジャズという分野を確立しました。
また、後に知ったことですが、録音エンジニアに、ブルーノート・レーベルの録音技師で有名なルディ・ヴァン・ゲルダーを迎え、録音も高品質で、オーディオ的にも優れたアルバムが多く、レコード・ジャケットのデザインも、ピート・ターナーが一貫して写真を担当、デザイン的にも統一感を図ることによって、CTIレーベル独特の個性を打ち立てました。
CTIレーベルのアルバムについては、僕はほぼリアルタイムで体験することが出来、ジャズ者初心者の頃、本当にお世話になりました。特に、1970年代後半、一枚1500円の廉価盤シリーズが展開されたこともあり、とにかくCTIレーベルのアルバムは良く聴きました。
そんなCTIレーベルのアルバムの中で、これはCTIらしいというアルバムが幾枚かあります。バーチャル音楽喫茶『松和』で、CTIレーベルらしいアルバムを聴かせてよ、というリクエストに対しては、このアルバムを選択する機会が良くあります。Kenny Burrellの『God Bless The Child』(写真左)です。
ブルージーなバップ・ギタリストであるケニー・バレルの、CTIレーベルでの唯一のアルバムで、CTIオールスターキャストというべき豪華な共演陣との力作。1971年の録音。ちなみにパーソネルは、Kenny Burrell(g), Ron Carter(b), Billy Cobham(ds), Freddie Hubbard(tp), Hubert Laws(fl), Hugh Lawson, Richard Wyands(p),Ray Barretto, Airto Moreira(perc), Arranged by Don Sebesky という豪華さ。
冒頭の「Be Yourself」に、そのCTIらしさが凝縮されている。ケニー・バレルのブルージーなギターの個性を最大限に全面に押し出しつつ、ゴージャスなストリングスのバッキングを配して、電気楽器を活かした、上質のクロスオーバー・ジャズが展開される。この「Be Yourself」の音こそが「CTIレーベル」の音と言っても良いだろう。
良く聴いて欲しい。CTIレーベルは、リーダーのミュージシャンの音の個性を最大限に表現する。総帥のクリード・テイラーのプロデュースが素晴らしい。聴き易いが、決してイージーリスニングな雰囲気に流れない。ハードバップ時代からの純ジャズ・ミュージシャンの個性を最大限に押し出すことで、CTIレーベルのアルバムは、ジャズとしての鑑賞に十分に耐える、クロスオーバー・ジャズを供給してくれる。
ジャケットもCTIレーベルらしいもので、一目見ただけで「CTIレーベル」と判るジャケット・デザインは、見ているだけでも楽しい。良いアルバムです。これはCTIらしいというアルバムのひとつ。「ミッドナイト・ブルー」と称されるケニー・バレルのギターを、ストリングを配したゴージャズなアレンジと共に堪能して下さい。ジャズ者初心者の方々にもお勧めの一枚です。
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