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2010年12月14日 (火曜日)

絶品のピアノ〜ギター二重奏

ピアノのビル・エバンスとギターのジム・ホール。この2名の名前を聞いて、かの傑作デュオ・アルバム『Undercurrent』を思い浮かべるジャズ者の方々は多々いると思う。
 
確かに『Undercurrent』は、ピアノとギター、この似通った楽器の困難なデュオ演奏として名盤だとは思う。が、これは冒頭1曲目の、奇跡的なピアノとギターとのデュオの成功例「My Funny Valentine」の存在があったればこそ。2曲目以降の演奏については、結構、苦戦している。
 
11月18日のブログ(左をクリック)に書いたが、ピアノとギターは非常に良く似た楽器である。単音のみならず和音もでる。アルペジオも出来る。弦を掻きむしることもできるし、和音を連続して弾くことで、リズム楽器としての機能を果たすことも出来る。音のスケールも良く似通っている。つまり、ピアノとギターはあまりに似通っているので、デュオでコラボすると音がぶつかる。
 
その音の「ぶつかり」を回避して、高速演奏の「My Funny Valentine」をエイヤッで実現した『Undercurrent』は、この「My Funny Valentine」1曲で名盤になった。しかし、2曲目以降の苦戦を思うと、それほど手放しで「名盤」というアルバムではないのでは、という疑念は残る。
 
その『Undercurrent』から4年経過し、ピアノのビル・エバンスとギターのジム・ホールは再度、ピアノとギター、この似通った楽器の困難なデュオ演奏にチャレンジしている。そのアルバムは『Intermodulation』(写真左)。ピアノのビル・エバンスとギターのジム・ホールの粋なイラストをあしらったジャケットも印象的な、ピアノとギターのデュオにおいて、究極のアルバムである。1966年4月の録音になる。
 
これがまあ、4年前の『Undercurrent』セッションの課題を出来る限り克服した、ビル・エバンスのアレンジと奏法が冴えに冴えた、ピアノとギターのデュオの名盤中の名盤である。
 
ものの本には、前作『Undercurrent』に比べて「くつろいだ雰囲気」などと良く書かれているが、どうしてそんな適当は印象になるのか、理解に苦しむ。どう聴けば、そんな安直な評論に落ち着くのか。ジャズ評論家たるもの、楽器演奏については、なんらかの形で造詣が深くないと、人の演奏を、ましてはプロの演奏を評価するのは僭越というものだろう。
 
Intermodulation
  
4年前の『Undercurrent』について、ピアノのビル・エバンスとギターのジム・ホールは相当に後悔の念が残ったのだろう。この『Intermodulation』の演奏を聴き通せば、その「無念」さをはらさん、という気持ちがとても良く判る。
  
エバンスの手になるものであろう、双方の音数の調整を含めたアレンジが優れている。そして、双方のメロディーとバッキングの巧みな役割分担と役割の交換。音がぶつからないように配慮された、ピアノ・トリオの時とは全く異なる、ギターとのデュオ対応のエバンスの特別な手捌きとフレージング。などなど、感心する「課題解決のポイント」を挙げればきりが無い。 
  
4年前の『Undercurrent』の反省を糧に録音された『Intermodulation』のセッション。『Undercurrent』の課題がかなりの点で改善されているのである。当然のことながら、『Intermodulation』の各演奏は、尖ったり、耳についたりする音がほとんど無い。『Intermodulation』では、聴き心地の良い、円やかで滑らかな演奏が、アルバム全編に渡って繰り広げられるのだ。そりゃ〜、前作『Undercurrent』に比べて「くつろいだ雰囲気」に感じるのだろう。
  
『Undercurrent』は、ピアノとギターはあまりに似通っているが故に、デュオでコラボすると音がぶつかる部分を「荒削りで意外性のある純ジャズ的な演奏」と感じることからくる、誤解にも似た「偶発的なスリリング感」が特徴。しかしながら、『Intermodulation』には、純ジャズ界のプロフェッショナルなミュージシャン二人による、類い希な、良く準備され良く練られた演奏内容による正統な評価を持った「名盤」と言える。
 
『Undercurrent』を聴いたら即座に『Intermodulation』を聴かねばならない。この2枚は兄弟アルバムとして表裏一体の間柄にある。この『Intermodulation』での枯れた味わいの明るく暖かい雰囲気は、決して、エバンスとホールの演奏が、歳に似合わず、単に枯れている訳では無い。良く準備され良く練られたが故に、『Intermodulation』の各演奏は、尖ったり、耳についたりする音がほとんど無いだけのこと。
 
隠れた名盤とは、この『Intermodulation』の様に、良く準備され良く練られたアルバムの為にある言葉だと思う。 
 
 
 
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