プレスティッジ時代の隠れ好盤
ソニー・ロリンズのアルバムって、意外と曖昧に扱われている感じがする。プレスティッジ時代のアルバムだって、『Saxophone Colossus』『Worktime』『Tenor Madness』あたりが、何度も何度もジャズ盤紹介に挙がるだけ。もっと幅広にと思うんだが如何だろうか。
このアルバムは、僕も若い頃は、その存在すら知らなかった。『Tour De Force』(写真左)。1956年12月7日の録音。ちなみにパーソネルは、Sonny Rollins (ts), Kenny Drew (p), George Morrow (b), Max Roach (ds), Earl Coleman (vo)。
全体の雰囲気は、プレスティッジ・レーベルお得意のパッと集まって、ちょちょいと打合せして、リハーサルもそこそこに、ジャム・セッション風の録音。アレンジが大雑把なのはいざ仕方ない。ロリンズは絶好調。しかも、このアルバムは、男性ボーカル入りの、歌伴でのロリンズのサックスが聴ける。
1曲目「Ee-Ah」、2曲目「B. Quick」、4曲目「B. Swift」、6曲目「Sonny Boy」のインスト・ナンバーは、ロリンズは絶好調。ビ・バップ譲りの高速ブロウでバリバリと吹き上げていく。
若き日のケニー・ドリューのピアノもビ・バップ調で飛ばしまくる。ジョージ・モロウのベースも堅調、マックス・ローチのドラムも疾走感抜群。高速ビ・バップ調の演奏で、それぞれのメンバーも好調。しかし、如何せんアレンジの単調さとリハーサル不足は否めない。名盤になり損ねた、実に惜しいアルバムである。
3曲目「Two Different Worlds」、5曲目「My Ideal」は、 アール・コールマンのボーカル入り。歌伴のロリンズが聴ける。歌伴のロリンズは素晴らしい歌心満点の、それはそれは美しいフレーズを紡ぎ上げていく。テナーは肉声に近い音が特徴の楽器だが、この特徴が実に良く出ている。
ロリンズの最高の特質は、この歌心満点の美しいフレーズにある。しかも、テクニックは高く、音の強弱緩急も自在に操る。現時点でも「テナー・タイタン」とリスペクトの念を持って呼ばれる所以である。テナーという楽器の原点に立ち返ると、このロリンズのブロウが正統と言えるだろう。
『Tour De Force』は実に惜しいアルバムである。ビ・バップ譲りの高速ブロウでバリバリと吹き上げるものと、歌伴でのロリンズのサックスをフィーチャーしたものと、2種類のアルバムを企画して欲しかった。高速ブロウのロリンズと歌伴のロリンズ。プレスティッジは惜しいことをした。
ちなみに「Tour De Force」(仏語)とは、離れ業とか、気迫のこもった作品と言った意味。しっかりとアレンジし、しっかりとリハーサルを積んで録音すれば、きっと素晴らしい、2枚の名盤が出来上がったに違いない。そんな無念な想いを抱かせる、名盤になり損ねた、実に惜しいアルバムである。
★Twitterで、松和のマスターが呟く。検索で「松和のマスター」を検索してみて下さい。名称「松和のマスター」でつぶやいております。
★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。
« Sony Rollins : The Freelance Years | トップページ | 絶品のピアノ〜ギター二重奏 »
« Sony Rollins : The Freelance Years | トップページ | 絶品のピアノ〜ギター二重奏 »
コメント