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2010年12月30日 (木曜日)

エヴァンス&スタイグ『What's New』

さて、今年もあと一日。明日は大晦日なので、今日がアルバムの聴き納めになる。
 
昨年より、のんびりとビル・エバンスの聴き直しをしてきたが、ヴァーヴ時代のアルバムはこのアルバムで「上がり」である。Bill Evans with Jeremy Stig 『What's New』(写真左)。
 
ジャズ・フルートの異才ジェレミー・スタイグ(Jeremy Stig)。ジェレミー・スタイグのフルートは、その有名どころのフルートとは、全く違って「激しくエモーショナルで肉声に近い」。ジェレミー・スタイグから聴いた『What's New』の印象は、我がバーチャル音楽喫茶『松和』のジャズ・フュージョン館にのせているので、そちら(左をクリック)を参照されたい。では、本来のリーダーであるビル・エバンスから聴くと、このアルバムはどうなんだろう。
 
収録曲を見渡してみると、魅力的なスタンダード曲がズラリと並ぶ。収録曲を見渡すと、エバンスは、適当にやりやすい曲を選んだ様には感じない。スタイグのフルートの個性を十分に活かすことのできる、加えて、アレンジ次第で活きもするし、平凡にもなる、「アレンジの妙」の実力が如実に出るような、アレンジの力量を試されるような選曲にも思える。
 
このアルバムには、ビル・エバンスの「アレンジの妙」が冴え渡っている。冒頭の「Straight No Chaser」など、セロニアス・モンクの傑作曲で、あまりにモンクの個性が強くて、なかなかアレンジの手が入り難い曲だと常々感じているんだが、これを見事に洒脱でクールな演奏に変身させている。
 

Bill_evans_whatsnew

 
なんて言ったらいいのかなあ。そう、モンクの個性ばりばりの傑作曲が、非常に聴き易く馴染みやすい演奏にアレンジされていて、それでいてしっかりとモンクの個性をキープしている。これって、簡単そうに聴こえるが、意外と難しいことだと感じている。エバンスの「編曲力」というのは、底知れない実力を感じさせてくれる。
 
2曲目以降の演奏についても、エバンスの「編曲力」が存分に発揮されている。特に、2曲目「Lover Man」と6曲目の「Spartacus Love Theme」の優しくロマンチシズム溢れるアレンジに、限りない魅力を感じる。柔らかく明るく優しい曲調。そこに鋭い切り口のスタイグのフルートがインプロビゼーションを展開する。その音の対比が見事である。
  
面白いのは、4曲目の「Autumn Leaves(枯葉)」の前奏の部分は、リヴァーサイド時代、ラファロ、モチアンとのトリオの傑作『Portrait In Jazz』のアレンジをそのまま踏襲していること。エバンスとしては、このアレンジにかなり自信を持っていたんだろうなあ。確かに僕もこの前奏のアレンジがお気に入りだ。
 
良いアルバムです。ジャズ者初心者の方々には、スタイグのフルートがかなり個性的なので、このスタイグのフルートが耳に馴染むかどうかがポイントですね。エバンスの編曲力を感じるには良いアルバムで、そういう観点では、ジャズ者中級者に方々には「必須科目」です(笑)。
 
 
 
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