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2010年12月 3日 (金曜日)

ドラマーのリーダー作にも...

ドラマーは、リズム・セクションの要として、グループ・サウンズの縁の下の力持ちである。しかも、打楽器のみを担当するので、ジャズにおいては、アルバム・セッションのリーダーを張ったり、グループのリーダーを張ったりする例は、かなり少ない。
 
グループのリーダーとして、ジャズ・ドラマーが君臨した例としては、ダントツで「アート・ブレイキー」。ジャズ・メッセンジャースの総帥として、約半世紀、相当数の若手一流ミュージシャンをジャズ界に送り出した。
 
その実績足るやマイルス・デイヴィスと双璧である。あと目立ったところでは、道半ばではあったが、エルビン・ジョーンズ、そして、トニー・ウィリアムス、そして、現役としては、ロイ・ヘインズ、そんなところである。他の楽器と比べて如何に少ないかがお判りであろう。
 
他にも、ジャズ・ドラマーがリーダーであるアルバムは多々あるが、ドラマーがリーダーであるという明快な理由が見当たらない。ジャム・セッションをやるに当たり、誰かがリーダーにならないと、演奏全体のコンセプトとか演奏順とか選曲とかが上手くいかないので、たまたた年長であるとか、他のメンバーと比べて信望が厚いとか、あまりアーティステックではない、どちらかと言えば、下世話な人間的な理由で、ドラマーが選ばれている場合が多い。
 
そんな中で、Philly Joe Jones(愛称フィリー・ジョー)は、ジャズ・ドラマーの中でも、リーダー作の数が多い。そうなれば、アート・ブレイキーやエルビン・ジョーンズ、そして、トニー・ウィリアムスと合わせて名前を連ねてもよさそうなもんなんだが、意外や意外、このフィリー・ジョーのリーダー作が、ジャズ本のアルバム紹介に挙がることは殆ど無い。
 
なぜなんだろう、と思い立って、フィリー・ジョーのリーダー作を3枚ほど聴き直してみた。その中の一枚が『Mo'Joe(別名:Trailways Express)』(写真左)。
 
Phillyjoe_mojoe
 
フィリー・ジョーをリーダーとしたSeptetの演奏を集めたもの。録音は、1968年10月の録音。時代は、ビートルズの出現によるロックの台頭により、ジャズが大衆音楽としての地位を下げ始め、それまで第一線で活躍していた中堅ミュージシャンも仕事にあぶれる時代。
  
フィリー・ジョーをリーダーとしたSeptetのメンバー構成も見渡すと、フィリー・ジョー以外、ほとんど今では名を留めていない、その時代において、実に場当たり的なメンバー選定がなされている。このメンバーを見渡すと、これではあまり充実した内容の演奏は望めないなあ、と諦め調になる。
 
実際に聴いてみても、その印象はあまり変わらない。実に場当たり的な演奏で、リーダーのドラマーであるフィリー・ジョー以外は平凡な演奏に終始。しかも、アレンジが平凡なので、それぞれのメンバーは、それなりにホットな演奏を全面に押し出そうとするが、いかんせんアレンジがイマイチなのが致命的。1968年当時のアレンジとは思えない、録音当時にしてレトロなアレンジなものばかりである。
 
但し、リーダーのフィリー・ジョーのドラミングについては、叩き過ぎの感はあるが、叩きまくっている分、フィリー・ジョーのドラミングの特徴が良く判る。言い換えると、この『Mo'Joe』というアルバムは、フィリー・ジョーを愛でるには、なかなかの内容のアルバムだ、とは言える。但し、叩き過ぎの感は否めないので、このアルバムは決して、ジャズ者初心者の方々にはお勧めしかねる。佳作や名盤が持つ「品格」に欠けるのだ。
  
ドラマーのリーダー作にもいろいろある。フィリー・ジョーのリーダー作は、それぞれ、フィリー・ジョーのドラミングを耳で感じ、そのテクニックを愛でるには良いアルバムではあるが、ジャズの演奏の質を鑑みれば、やはり、佳作で必要な「品格」に欠けるところがあるのは残念だ。

やはり、フィリー・ジョーのドラミングは、マイルス・デイヴィスとの諸作やビル・エバンスとの諸作におけるサイドメンとしてのドラミングが一番「品格」が備わっていて聴き応えがある、と僕は思う。 
 
 
 
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