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2010年12月18日 (土曜日)

約30年ぶりの『The Wall』

今日は一日の殆どがロックの日。ジャズといってもフュージョン・ジャズだけだから、今日は純ジャズはお休みの日。渡辺香津美繋がりで、久しぶりにYMOのライブなんかも聴いたりして、なかなかに気分展開な一日。
   
そんな一日の中でのトピックは、Pink Floydの『The Wall』と『Final Cut』を手に入れたことかなあ。約30年ぶりにLPからのリニューアルである。
 
この2枚については、僕にとっては複雑なものがあって、とにかく、ロジャー・ウォーターズの色が強すぎて、どうもいけない。そもそも僕は、このウォーターズの「社会的アジテーション」的な個性が好きではない。これでは、ピンク・フロイドのアルバムではなく、ウォーターズ単独のアルバムになってしまっていて、初出当時、かなり幻滅したのを覚えている。
 
あれから約30年たった。今日、本当に久しぶり、というか、う〜ん、恐らく約30年ぶりになると思うんだが、ピンク・フロイドの『The Wall』を全編通して聴いた。流石に約30年ぶりである。こちらも歳を取った。音楽に対する許容量も大幅にアップしている。約30年ぶりに、しっかりと『The Wall』を全編鑑賞した。
 
聴き終えた印象は、30年前に感じた「これは、ピンク・フロイドではない」という感情的なものは無く、ただただ、「なるほど、これがオリジナル・ピンク・フロイドの終焉か」と至極納得した。これじゃあ、もう次作を目指して、新たなコンセプトでバンドメンバーが結束するということは無いだろうな、と強く思った。
 
音楽とは正直なものだと僕は思っている。この『The Wall』というアルバムは、明らかに、ウォーターズ単独のアルバムである。このアルバムの演奏の全てに渡って、ウォーターズ以外のメンバーの「やらされ感」が強く伝わってくる。
 
この「やらされ感」が、この『The Wall』というアルバムが、ピンク・フロイドのアルバムになり損ねた最大の理由だろう。とにかく、ウォーターズ以外のメンバーの演奏に「サムシング」が欠けている。これでは別に他のスタジオ・ミュージシャンでもええやん、と思ってしまうほどの「やらされ感」。 

Pink_floyd_the_wall
 
コンセプト自体悪く無いし、演奏される音としてもピンク・フロイドとしての音の個性は十分にキープされている。でも、このウォーターズ以外のメンバーの「やらされ感」が全てを台無しにしている。ロジャー・ウォーターズ、リーダー失格である。
 
加えて、それぞれの曲のアレンジと、曲に挿入されるサウンド・エフェクト(S.E.)の使い方が、明らかにマンネリ。ピンク・フロイドはアルバム『原子心母』以降、サイケデリック・ロックの雄から、プログレッシブ・ロックの雄へと転身した。その『原子心母』以降『炎』に至るまでの音作りからS.E.まで、その全てを再度、総動員し、なぞらえて、この『The Wall』に盛り込んでいる。
 
昔からのピンク・フロイドのファンにとっては微笑ましいかもしれないが、客観的に見て、この仕業は誉められたものでは無い。この『原子心母』以降『炎』に至るまでの音作りからS.E.まで、その全てを再度、総動員している音を聴きながら、「なるほど、これがオリジナル・ピンク・フロイドの終焉か」と至極納得した。
 
約30年ぶりに聴き直した『The Wall』は、世間が言うほどの傑作では無いし、ピンク・フロイドの代表盤でも無いと思う。そういう評価をする人は、ピンク・フロイドというバンドの本当の音を聴いたことがあるのか、ピンク・フロイドの本質をどう理解しているのかと、強い疑義の念を持ってしまう。僕は、まだ前作の『Animals』の方が、僅かばかりではあるが、ピンク・フロイドらしさが残っていたように思う。
  
ウォーターズ以外のメンバーの「やらされ感」が無かったら、そして、もう少し工夫されたアレンジとS.E.があれば、この『The Wall』は、どんな内容のアルバムに変身したんだろうかと思う。きっと、『狂気』と表裏一体となった、『狂気』を空想の世界の産物だとすると、『The Wall』は、現実の世界の産物として、『狂気』と対になった傑作として君臨していたのでは無いか。しかし、その時は、邦題は『ザ・ウォール』では無く、『壁』でなければならない(笑)。
 
『The Wall』は、そんな残念な期待感が残る、本当に残念なアルバムである。 
 
 
 
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