さすが、アカデミックなMJQ
MJQと言えば、ジャズ者ベテランは「Modern Jazz Quartet」。それよりちょっと若いジャズ者ベテランは「Manhattan Jazz Quartet」(笑)。紛らわしいが、やはりジャズ界の中で、MJQと言えば「Modern Jazz Quartet」と断言して良いだろう。
「Modern Jazz Quartet」。Milt Jackson (vib), John Lewis (p), Percy Heath (b), Connie Kay (ds)の4人構成。スタート当時は、ドラムスが、Kenny Clarke だった。でも、MJQといえば、ドラムスは、Kenny Clarkeでは無く、Connie Kay でなければならない、と僕は思っている。
ルイスは、クラシックとジャズとの融合させること、ジャズで最先端のフリー・ジャズを正当に評価して自らの音として取り入れること、ブルースをクールに編曲し、ファンキー色を出来る限り押さえた、端正なブルースを特徴とした。このルイスの趣味に則って、ソロだと限りなくファンキーなヴァイヴのミルトが、襟元正したように、端正に格調高く追従する。
つまりは、MJQの音楽は、ファンキーな、大衆音楽としてのジャズというよりは、ジャズをアーティステックなものとして敬愛し、そのアーティステックなジャズの感覚をベースとして、最先端のジャズにチャレンジしつつ、ファンキー色を出来る限り押さえた、端正なブルースを特徴とした、純ジャズな演奏を得意とする、類い希なテクニックを持つカルテットでった。
その象徴的なアルバムが1962年にリリースされた『Lonely Woman(淋しい女)』(写真左)。表題曲は、リリース当時、フリー・ジャズの寵児と、もてはやされたオーネット・コールマンの代表曲である。当時、まだ賛否両論だったフリー・ジャズの寵児オーネット・コールマンの代表曲を採用するMJQは凄い。さすが、アカデミックなMJQ。
まあ、でも今の耳で聴くと、当時のオーネット・コールマンの演奏は「フリー・ジャズ」では無い。コード展開が既成概念に無く、ソロのフレーズがイレギュラーなだけで、決して。フリー・ジャズでは無い。どころか、これって普通の尖った純ジャズでしょう。当時、何がもてはやされたのかが判らない。
この『Lonely Woman(淋しい女)』での表題曲は、アルバムの冒頭に座っているんだけど、演奏の内容としては、MJQがフリー・ジャズをやっている訳では無く、オーネット・コールマンの既成概念に無いコード展開とイレギュラーなソロ・フレーズを拝借して、純ジャズなグループ・サウンドとして編曲した感じの演奏なので、決してフリーキーではありません。でも、音の響きは独特のものがあり、クールさとアカデミックさが際立ち、ファンキーなノリは全く無く、端正な、一種クラシカルな演奏に仕立て上げられています。
この冒頭の「淋しい女」は、確かに先進的な響きを宿した演奏なので、取っつき難い。でも、明らかに純ジャズな、ハードバップ的な演奏なので、フリー・ジャズの様に、人によってですが、拒絶されるような要素は全くありません。逆に、オーネット・コールマンの既成概念に無いコード展開とイレギュラーなソロ・フレーズを、よくまあこれだけ上手く取り入れて、純ジャズな演奏に編曲したものだなあ、と感心しています。
冒頭の演奏が先進的な「淋しい女」というプログレッシブなジャズ演奏なので、ちょっと引き気味になるかもしれませんが、2曲目以降の演奏は、それはそれは素晴らしい。室内楽的純ジャズを得意とするMJQらしい、小粋でシンプルなハードバップな演奏が目白押し。特に1曲目がプログレッシブな演奏なだけに、2曲目以降のシンプルなハードバップな演奏が自然と心に響く、という副次的な効果を生み出しているのが面白い。
もともとMJQという室内楽的純ジャズ・カルテットは、ミッドテンポからスローテンポな演奏に、その才能をより一層発揮するタイプなのですが、7曲目の「Lamb, Leopard」など、スローテンポのブルースなんでしが、そのシンプルさ、その端正さ、その先進性は特筆すべきものがあります。
特に、このアルバムでは、ドラムのコニー・ケイが好調。もともと端正なドラミングがモットーのコニー・ケイが、チンチン、シャカシャカ、チャカポコ、カンコーン、ドスンと上品かつ優雅に叩きまくっています。それにつられて、いつになく、ベースのパーシー・ヒースもブンブン、ビンビンやってます。これだけ熱く好調に走りまくる、MJQのリズムセクションも珍しい。
バックのリズム・セクションが好調な時にMJQは真価を発揮します。この『Lonely Woman(淋しい女)』は一聴の価値ありです。冒頭の表題曲で、MJQの先進性を感じ、2曲目以降の楽曲で、MJQの優秀性を感じる。意外とこのアルバムは「買い」だと思います。アルバム・ジャケットの女の写真には、昔から「ドン引き」ではありますが(笑)・・・。
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