「KYLYN」直前の渡辺香津美
今や日本ジャズ・ギター界における重鎮である渡辺香津美。弱冠17歳で、デビュー作『Infinite』をリリース。デビュー作で既に完成されたスタイルを確立していた天才である。
1970年代の渡辺香津美は、純ジャズからフュージョン・ジャズへまっしぐら。そして、1970年代の終わり、1979年には坂本龍一、矢野顕子、村上秀一らと、あの伝説の「KYLYN BAND」を結成。日本フュージョン界を席巻した。
ちなみに、渡辺香津美は、演奏のスタイル、ギターの響き、アドリブフレーズなど、ありとあらゆる面で、「KYLYN」前と「KYLYN」後で全く異なる。この「対比」が非常に面白い。「KYLYN」直後のアルバムが『TO CHI KA』(10月21日のブログ参照・左をクリック)とすると、「KYLYN」直前のアルバムが『Lonesome Cat』(写真左)。
『Lonesome Cat』は、1977年暮れ、渡辺香津美がNYに渡り、現地のミュージシャン達とのセッションを収めた作品である。ちなみに共演メンバーは、ジョージ・ケイブルス(p,el-p)、アレックス・ブレイク(el-b)、セシル・マクビー(b)、レニー・ホワイト(ds)。今から思えば、素晴らしいメンバーである。これだけの面々とコラボするとなれば、それはもう気合い一発である(笑)。アルバム収録曲6曲を1日で一気に収録されたとのこと。
気合いを入れつつ、実に楽しげに演奏する渡辺香津美のギターが実に爽快。共演メンバーについては、全くもって問題無く、香津美のギターが縦横無尽に駆け巡る。1曲目の「Somebody Samebody」の冒頭、前奏で鳴り響くレニー・ホワイトのドラミングの格好良さ。ベースが被り、香津美のギターが被って、ジャジーなうねるようなグルーブを生み出していく。う〜ん、かっこええなあ。
このアルバム全編に渡って、ジャジーでうねるようなグルーブに覆われている。これは、どれもこれも、バックを務める共演メンバーの仕業。そして、僕は何と言っても、ジョージ・ケイブルスのローズが良い。ローズ独特のうねりを押さえ、シンプルでありながら、そこはかとなく底に流れるファンキーなグルーブは癖になる。
「KYLYN」直前のアルバムが『Lonesome Cat』は、ジャジーでファンキーで、意外と純ジャズな渡辺香津美の、フュージョン以前の気合いの入ったプレイが聴ける傑作だと思います。
巷の評価は「荒削り」とか「リハ不足」とかイマイチのものが散見されますが、このアルバムの演奏を、フュージョン前の純ジャズとして捉えた時、一発勝負の純ジャズの良さが、このアルバムのそこかしこに漂っているように思います。
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