The Beatles『赤盤』リマスター
やっとのことで、再リマスター再発された『ザ・ビートルズ1962-1966 (赤盤)』と『ザ・ビートルズ1967-1970(青盤)』。昨日は『青盤』について語ったが、今日は『赤盤』について。
今回の『赤盤』と『青盤』の再リマスターの背景については、昨日触れたので、そちらを参照頂きたいが、今回の『赤盤』と『青盤』の再リマスター再発については、どちらもLP時代の構成を踏襲し、しっかりと2枚組構成でリリースされたことは喜ばしい限り。
特に『赤盤』については、LPのA面とB面を合わせての収録時間がトータル31分。C面とD面も同様なので、CDのフォーマットからすると、余裕を持って1枚に収まる長さである。しかし、1993年の初CD化+デジタル・リマスター&再発時、ジョージ・マーティンが2枚組フォーマットに拘ったため、当時のLPの曲配分のままの2枚組になったとのこと。素晴らしいことである。
そもそも、LP時代のアルバムについては曲の構成や音そのものが「芸術的成果」なのだから、後生の人々がその時その時の環境に応じて、曲の構成や音そのものを変えるべきではない、と僕は思っている。だから、LP2枚組の構成をCD1枚に納めてしまうとか、デジタル機材の充実に伴い、ミックスをやり直すなんて、それは「音楽芸術に対する冒涜」だと思う。だから、『赤盤』と『青盤』のCD化に伴うジョージ・マーティンの見識は素晴らしい。改めて感動を覚える逸話である。
加えて、昨年、ビートルズについては、オリジナル・アルバムの再リマスター再発が大々的に執り行われたが、オリジナル・アルバムについては、モノラル盤、ステレオ盤共に、ちゃんとした形で再リマスターされたので、今回、この昨年の再リマスターの影響が、この『赤盤』と『青盤』、特に『赤盤』に対してはあるのかも、と危惧していたが、杞憂に終わったようだ。
その危惧とは、もともと『赤盤』の冒頭からの4曲「Love Me Do」「Please Please Me」「From Me To You」「She Loves You」は、LP時代よりモノラル・バージョンが収録されているんだが、今回、ステレオ・バージョンに差し替えられて、「完全ステレオ・バージョン」なる形で再発されたら最悪やなあ、と思っていたのだが、それは無かった。よかったよかった。
昨日も書きましたが、この『赤盤』と『青盤』は、全世界で売れに売れたベスト盤で、このアルバムに特別な思い入れを持つファンも多く、このアルバムでビートルズに親しんだファンも多い。というか、全世界レベルでみると相当数がいる。
そのファンの多くは、この『赤盤』と『青盤』のアナログ盤、つまりLPを聴いていた訳で、LP時代の音を響きをCDに求めることになります。個人的にもかなり聴き親しんだベスト盤なので、後生の人々がその時その時の環境に応じて、曲の構成や音そのものを変えて、オリジナルの作品と比べて、音の雰囲気が変わるなんてあり得ないと思っています。
さて、そもそも今回の再リマスター再発の音についてですが、『青盤』と同様、素晴らしい音に仕上がっています。LP時代の音に最も忠実に再現されたサウンドに仕上がっていると思います。『赤盤』については、ビートルズのロックンロールな曲がズラリと並んでいて、リマスターに伴い音圧を上げて、迫力を増したいところですが、そこはグッと我慢、LP時代の音圧を踏襲して、LP時代に感じた、円やかで、しっかりとトンガった音の塊がそのまま、今回のCDに詰まっています。
では、昨年のオリジナル・アルバムの再リマスターと何か音が違っているのか。ネットの情報では、昨年のリマスター音源を使用しているので殆ど変わりがない、とありますが、全体的な音の雰囲気が違うように思います。
『赤盤』と『青盤』もベスト盤なんで、シングルやオリジナル・アルバムから曲を寄せ集めてくる訳ですが、当然、統一感のあるミックス&リマスターは施されていない。曲毎のオリジナル音源については、それぞれ雰囲気も違えば音の響きも違う。ベスト盤としての統一感を出すためにベスト盤としてのリマスターを施す必要がある、と昨日のブログに書きましたが、そのような考慮がなされている為でしょうか。
よしんば、昨年のリマスター音源を使用しているので殆ど変わりがない、としても、個人的には、この『赤盤』と『青盤』は買いです。オリジナル・アルバムの音源と同じでも、『赤盤』と『青盤』には、この曲順で並べられた『赤盤』と『青盤』でしか感じられないビートルズがあると思っています。単純なノスタルジアだ、と一笑に付されるかもしれませんが、LP時代、曲順を完全に覚えている位に聴き親しんだアルバムです。そんなノスタルジア優先なチョイスがあっても良いかと思っています。
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はじめまして
去年のリマスターを揃えているから「赤盤」「青盤」は必要ない、、、というモノでもないですね
ボーナス・トラックも収録されなくて良かった(笑)ですね
ちょっと無駄遣いな気もしますが、この曲数、この曲順を良い音で聴けて、違いを感じるというのは嬉しいです
投稿: col | 2010年11月21日 (日曜日) 21時02分
colさん、はじめまして、松和のマスターです。
> 去年のリマスターを揃えているから「赤盤」「青盤」は必要ない、、、
> というモノでもないですね
その通りだと思います。「赤盤」「青盤」はこの曲数、この曲順でないと
いけない、と、今回、このリマスター盤を聴いて、改めて強く思いました。
しかも、今回のリマスターの素晴らしいところは、どちらもしっかりと
CD2枚組の構成で出してきたことです。収録時間から見ると「赤盤」などは
CD1枚にまとめて、コストを落とす、ってことも可能だったはずですが。
次はあの曲やな、って感じで曲名が浮かんできて、イントロが自然と口を
ついて出てくる。そんな感じが素敵な「赤盤」「青盤」です。
投稿: 松和のマスター | 2010年11月21日 (日曜日) 21時51分