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2010年11月23日 (火曜日)

適正なリマスターの威力

リマスターが注目された久しい。もうかれこれ15年位になるだろうか。アナログ・マスター・テープからCDへの移行、CDにはCDの特性を踏まえたリマスタリングが必要だ、ということは、今では常識となっている。

リマスターに対するケアが当たり前になった時代、今では、どのようなリマスターを施すのか、という「リマスターの思想」が重要視されるようになった。

つまりは、適正なリマスターを施されたCDは、アナログ時代の音がそのまま再現される。しかし、過度のリマスターを施されたCDは、アナログ時代の音とはほど遠い音に変質してしまう。つまり、過度のリマスターは、音楽の歴史をねじ曲げてしまうのと同様の、後生の人間としてやってはならないことをやってしまうことになる。

10月17日のブログ(左をクリック)にてご紹介したが、ジョン・レノンのオリジナル音源がリマスター再発された。そのブログでも速報でご紹介したが、ジョンのソロアルバムとして、やっとLP時代の音と比べて、違和感の無いCDがリリースされたと言って良いくらい、素晴らしいリマスターだった。

リマスターの方法としては、2009年ビートルズリマスター盤の制作方針と同様で、テープノイズの除去やピーク・リミッターを必ず使用する、従来のリマスターの踏襲では無く、ノイズの除去とピーク・リミッターの仕様は極力控えめにし、音圧の向上も必要最低限に留める、という、あくまで、アナログ・マスター・テープの音を尊重する方針です。

僕は、この方針については全面的に指示しているので、今回のジョンのオリジナル音源のリマスター再発については全く文句は無いのだが、その「適正なリマスターの威力」が最大限に発揮されたアルバムが『Imagine』(写真左)だろう。

John_lennon_imagine

この『Imagine』は、ジャケット写真のイメージと同様、うっすらとベールがかかったようなエコーとホワイトノイズの存在が特徴の、制作者の意図が十分反映されたミックスとなっている。2000年のミレニアム・エディションは、過度なリマスターのみならず、リミックスまで施した、アルバムがリリースされたアナログ時代の音とは全く違った「デジタルで過度のダイナミックな音」に変身してしまった。これはもちろん、アナログ時代のオリジナル音源の音に親しんだ我々に取っては認められる音では無い。

しかし、今回のリマスターは秀逸。アナログ・オリジナル音源を尊重し、うっすらとベールがかかったようなエコーとホワイトノイズをしっかりと残し、特に、ホワイトノイズについては、音の雰囲気が損なわれないだけの最低限のノイズ除去に留めており、バックの楽器の輪郭がクッキリと浮かび上がると同時に、このアルバムの持つ独特のうっすらとベールがかかったような、柔らかでシルキーなエコーはしっかりと残っているところは心から感心する。

アナログ時代の音がほとんどそのままに残っている素晴らしいリマスターである。しかも、出来る限り、それぞれの楽器の音の輪郭が浮き出てくるような、必要最低限のノイズ除去が実に職人芸である。それぞれの楽器の音の輪郭が浮き出てくることによって、それぞれの楽曲について、音のメリハリが全面に出て、実にポジティブな音の輪郭になっている。

今回のリマスターCDによって、この『Imagine』をやっと聴き直すことができた。なんせ、2000年のミレニアム・エディションは1回聴いただけで「お蔵入り」だったからなあ。やっと、繰り返し聴き返すことの出来る、やっと繰り返し「愛でる」ことのできる『Imagine』が手元にある。長生きはしてみるものである。実に幸せなことである。 
 
 
 
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