深町純さんの訃報...
今日のお昼過ぎ、ネットを流していて、深町純の訃報に気が付いた。11月22日に都内の自宅にて、大動脈解離による心嚢血腫のため64歳で逝去とのことです。
深町純と言えば、日本のシンセサイザー奏者の草分けの一人。僕も学生時代、日本のシンセサイザー奏者ということで、何枚かアルバムを購入した思い出があります。最近、1970年代のアルバムが再発され出して、再評価の機運が盛り上がり始めた矢先だけに残念です。
僕にとっての深町純の印象は、シンセサイザーをシンセサイザーらしく鳴り響かせ、明らかに「これはムーヴ」「これはアープ」と判る奏法の持ち主で、シンセサイザーの音を聴く楽しさを与えてくれるキーボーティストでした。逆に、シンセサイザーの持つ特徴をあからさまに全面に押し出すので、シンセサイザーの音が耳につくような音楽にはちょっと不向きかなあ、と思っていました。
僕が「深町純」の名前を聞いて、いの一番に思い出すアルバムが『Jun Fukamachi & The New York All Stars/Live』(写真左)です。このライブ盤は外せない。なんせフュージョン・ブーム真っ只中の1978年9月後楽園ホール及び郵便貯金小ホールで行なわれた伝説のライブを収録しているからです。さすがに、当時、ジャズ者駆け出しの僕でも、このライブについては事前に情報を仕入れていました。でも、さすがに当時、東京は遠い。「いいな〜」と指をくわえて見ているだけでした。
よって、この伝説のライブを収録したLPが出た時は、飛びつこうと思ったら、行きつけの「秘密のジャズ喫茶」で購入されていたので、暫く通い詰めて聴かせて貰い、最後はカセットにダビングして貰い、暫く、毎日聴いていました。えっ? どの辺が「伝説のライブ」なのかって?
このライブのパーソネルを見ると「伝説のライブ」と言われる所以がお判りになるかと。Jun Fukamachi(key), Randy Brecker(tp), David Sanborn(sax), Michael Brecker(sax), Steve Khan(g), Richard Tee(key), Anthony Jackson(b), Steve Gadd(ds), Mike Mainieri(vib, perc)。
どうです、凄いでしょ。スタッフのリズムセクションに、ブレッカーブラザースの兄弟フロントに加えて、フュージョン・アルトの第一人者。フュージョン・ヴァイヴの若手気鋭に、フュージョン・ギターの人気者、そして、我が日本からは、シンセサイザー・キーボーティストとして深町純が参戦。このメンバーのそれぞれが自分の持つ演奏能力をほぼ最高に近い形で出したら、それはそれは、かなり凄いライブになるというのは想像に難くないかと。
その幸せな瞬間を記録したライブ盤のひとつがこの『Jun Fukamachi & The New York All Stars/Live』です。とにかく、メンバー全員がコンディション好調で、実に内容のある、充実した演奏を繰り広げています。様々な音楽ジャンルの要素を集めてひとつとしたようなフュージョン・ジャズ。そんなフュージョン・ジャズの演奏サンプルのような「これぞフュージョン」という演奏がギッシリと詰まっています。
日本から唯一参戦の深町純もシンセサイザー一本で健闘しています。さすがに、これだけのフュージョン・ジャズを代表するメンバー構成なので、常に全面に出て、全体をリードするという訳にはいかないのですが、担当のソロスペースでは、なかなか個性的なシンセサイザー・ソロを聴かせてくれます。
面白いのは、深町純のシンセサイザーの音は、一聴したら「それ」と判る個性的な音で、加えて、深町純がシンセサイザーのソロを始めると、全体の演奏の雰囲気がガラっと変わって、なぜか「ロック調」一色になります。これが意外と面白い。
フュージョン・ジャズのメンバーはなんやかんや言ってもジャズ畑出身のメンバーなので、どれだけロック調で演奏しても、その底は「ジャズ」なんですが、深町純のシンセサイザーはちょっと違う。その底の「ジャズ」がとても「あっさり」しているんですね。あっさりとフュージョンの8ビートに乗るから、「ロック調」の雰囲気が一気に全面に出るんでしょうね。この変化が面白いし、この変化を受け入れ、受け止めるから、フュージョン・ジャズって面白い。
今日は午後から、この『Jun Fukamachi & The New York All Stars/Live』を、深町純の追悼として、ヘビーローテーションでした。また一人、1970年代から活躍した日本人ミュージシャンが鬼籍に入りました。淋しい限りです。ご冥福をお祈りします。合掌。
★Twitterで、松和のマスターが呟く。検索で「松和のマスター」を検索してみて下さい。名称「松和のマスター」でつぶやいております。
★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。
« ジャズの小径・11月号の更新です | トップページ | ジャズ・ギターの可能性 »
コメント