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2010年11月17日 (水曜日)

契約の穴埋めとは思えない...

CBSに移籍して『浪漫の騎士』をリリース。この『浪漫の騎士』の内容が異常に素晴らしく、この時点で、Return To Forever としてやることがなくなったチック・コリア。それでも、契約は残っている。それでは仕方が無いなあ、ということで録音したアルバムが『Musicmagic』(写真左)。
 
単にレコード会社との契約の穴埋めに為に録音されたアルバムである。きっと内容は凡百に違いないと思いきや、そうではないどころが、この出来って一体何、と思わせてしまうのがチックの凄さ。そう、このレコード会社との契約の穴埋めに為に録音された『Musicmagic』。その内容はなかなか充実していて、チック者として実に興味深い内容となっていて、チックのコンポーザー&アレンジャーとしての力量を改めて思い知ることとなる。
 
ちなみに、このアルバムのパーソネルは、Chick Corea(key), Stanly Clark(b,vo), Joe Farrell(ts,ss,fl,piccolo), Gayle Moran(vo,key), Gerry Brown(ds), John Thomas(tp,flh), James Tinsley(tp,flh), Jim Pugh(tb), Harold Garrett(tb)。1977年1月、2月の録音。

前の第2期RTFからの参加はスタン・クラークのみで、既にアル・ディ・メオラはいない。他は、第1期RTFのメンバーだったジョー・ファレルと、チックのの奥方でもあるゲイル・モラン、そしてスタンのソロアルバム「スクール・ディズ」でドラムを叩いているジェリー・ブラウンが主要メンバー。
 
ということで、このアルバムは、チックのキャリアの中で、実に興味深い内容となっている。出だしの「The Musician」のイントロを聴くだけで、これはチックにしては、かなりポップな音作り、だと言うことが判る。録音した時は1977年。ディスコとAORが牽引したソフト&メロウの大ブームの真っ只中。この『Musicmagic』というアルバムは、チックのキャリアの中で、一番「ファンキー」と「ソフト&メロウ」に傾倒したアルバム内容である。
 
まずは、チックの考える「ファンキー・ジャズ」は、冒頭の「The Musician」で全開。スタンのベースがもうファンキーべちゃべちゃである。それでもチックは全編に渡ってファンキーなビートを垂れ流したりはしない。

チックのパートは実に硬派なコンテンポラリー・ジャズな演奏になっていて、チックのシンセの使い方、チックの生ピアノの絡め方は凄まじいかぎり。決して、ファンキーな雰囲気に流されず、大衆迎合的なファンキー・ジャズと時代の先端をいくコンテンポラリーなジャズとを対比させることで、コンテンポラリーなジャズの特徴が浮き彫りになるようになっている。
 
Corea_musicmagic
  
5曲目の「Do You Ever」などは、チックの考える「ソフト&メロウ」である。ゲイル・モランのボーカルのフューチャー部分は、モランのボーカルを活かすべく「ソフト&メロウ」な雰囲気を全面に出したアレンジとなっているが、インプロビゼーションに展開すると、あくまで硬派なコンテンポラリーなジャズに転換する。ここでも、チックは、決して、ソフト&メロウな雰囲気に流されず、大衆迎合的なソフト&メロウなジャズと時代の先端をいくコンテンポラリーなジャズとを対比させることで、コンテンポラリーなジャズの特徴が浮き彫りになるようになっている。
 
まあ、ファンキー・ジャズだろうが、ソフト&メロウなジャズだろうが、チックの興味の外にあったことは想像に難くない。この『Musicmagic』というアルバムだけでのみ、チックの「ファンキー」と「ソフト&メロウ」な演奏が聴ける。時代に迎合しているようで、肝心要なところは、しっかりとコンテンポラリーなジャズを展開することで、チックはジャズに留まっている。
 
そして、絶品が4曲目の「So Long Mickey Mouse」。この曲は、この演奏は、ファンキー・ジャズの要素と、ソフト&メロウなジャズの要素と、コンテンポラリーなジャズの要素とが三位一体となって、実に素晴らしい内容の「コンテンポラリーなジャズ」となっている。
 
しかし、チックが、ファンキー・ジャズを採りあげ、ソフト&メロウを採りあげたのは、後にも先にも、このアルバムだけである。恐らく、ファンキーとソフト&メロウは、チックのお気に召されなかった様に思う。さすがである。
 
チックは多才な音楽性が故に「カメレオン」と揶揄されたり、「商業主義」と揶揄されたりするがとんでもない。ファンキー・ブームにもソフト&メロウ・ブームにも、はたまたディスコ・ブームにも、決して迎合することはなかった。チックの本質は、アコピをのみ使った純ジャズの世界とエレピとアコピを適材適所に効果的に配したコンテンポラリーなジャズの2種類である。それがどうして、「カメレオン」と揶揄されたり、「商業主義」と揶揄されたりするのかが未だ判らない。
 
でも、このレコード会社との契約の穴埋めに為に録音された『Musicmagic』を聴くにつけ、ある方面で、チックが、単に嫌がらせ気分で、やっかみ半分で「スタンスがコロコロ変わる」と心無い評価をされるのは良く判る。このアルバムって、レコード会社との契約の穴埋めに為に録音されたものですよ。それなのに、このなかなかに充実した内容は、実に「可愛げが無い」(笑)。破綻の無いアプローチで粛々と、様々なフォーマットにチャレンジし、実績を見せつけるチックは、やはり、心無い方面からは「嫌われる」(笑)。
 
チックの興味の範疇外であろう、ファンキー・ジャズ、そして、ソフト&メロウなジャズをも、これだけの演奏水準にしてしまうのだ。しかも、決して流行に流されることなく、コンテンポラリーなジャズとしての主張もしっかりと全面に押し出している。このスタンスは、マイルス譲りに感じ、感服するばかり。
 
このアルバムは、チックのコンポーザー&アレンジャーとしての力量を見せつけ、チックの音楽ジャンルに対する限りなく柔軟なフレキシビリティを見せつけてくれる。そして、ファンキー・ジャズ、そして、ソフト&メロウなジャズには心からは全く迎合していない、という「硬派なジャズメンとしての矜持」を、チックは僕たちに示してくれるのだ。 
 
 
 
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