インタープレイ最高の「枯葉」
昨日、大スタンダード曲の「枯葉」について語った。今日も続けて大スタンダード曲の「枯葉」の話題。
ジャズの大スタンダード曲「枯葉」。最高の演奏はマイルスの「枯葉」。名義はキャノンボール・アダレイ。アルバムは『サムシン・エルス』。しかし、陰のリーダーはマイルス。LP時代、A面の1曲目。「ズンドコ・ズンド」というイントロに乗って、そして、マイルスが旋律を携えて滑り出してくる。
マイルスの名演中の名演の後、大スタンダード曲「枯葉」と聴いて思い出すのは、ジャズ・ピアノの巨匠、ビル・エバンスの「枯葉」。ビル・エバンス×スコット・ラファロ×ポール・モチアンの黄金のトリオの4部作の最初の大名盤『ポートレイト・イン・ジャズ』(写真左)のLP時代のA面の2曲目、そして3曲目。そこに、唯一無二な、崇高な「枯葉」のインプロビゼーションがある。
『ポートレイト・イン・ジャズ』は、1959年12月28日の録音。キャノンボール・アダレイの『サムシン・エルス』の録音は、1958年3月9日。当然、ビル・エバンスは、マイルスの「それ」を聴いていたに違いない。エバンスはマイルスの後塵を拝するのは避けたかった。
出だしのイントロのアレンジが全く違う。マイルスのイントロのアレンジは「重厚かつ華麗」。エバンスのイントロは「軽快かつシンプル」。「軽快かつシンプル」な割に印象的なイントロ。端的に印象を残しながら、いきなり軽妙かつスピード感豊かに、トリオが一体となって「枯葉」の主旋律を奏で始める。このイントロから主旋律への切り返しが、実にスリリングである。
この出だしの「つかみ」で唸った方は、もう、このエバンスの「枯葉」の魅力から逃れられない(笑)。トリオが一体となって、スピード感溢れる主旋律の展開。その展開が終わるや否や、ピアノとベース、そしてドラムが同等、平等になって、一斉にインプロビゼーションの展開になだれ込む。
三者一体となった、三者それぞれが、それぞれの音を尊重し、それぞれの音を活かしながら、自分の音を、自分のプレイを主張する。三者一体となったインタープレイ。その心地良い緊張感。その心地良い音の響き、重なり、ぶつかり合い。「枯葉」の持つ独特のコード進行が、ピアノ・トリオのインタープレイを増幅する。
マイルスの「枯葉」が、ジャズにおけるグループサウンズの最高峰であるとするなら、エバンスの「枯葉」は、ピアノ・トリオにおけるインタープレイの最高峰と言えるでしょう。とにかく、スリリングで、心地良い緊張感があって、心地良い音の重なりと響きが素晴らしい。
このエバンスの大名盤『ポートレイト・イン・ジャズ』の素晴らしさは、ジャズ者駆け出し初心者の僕でも直ぐに判った。まだ、ジャズのLPを20数枚しか所有していない頃の話である。それから、このアルバムに収録された「枯葉」は何度聴いたかしれない。何度聴いても、新しい発見を、新しい刺激を与えてくれるエバンス・トリオの名演中の名演。
アルバムには、stereoバージョンとmonoバージョンの2曲が連続して収録されているが、どちらの内容も甲乙付け難い。気分によって評価が変わる。日によって評価が変わる。そんな最高の内容を誇る、ピアノ・トリオにおけるインタープレイの最高峰の「枯葉」。このエバンスの大名盤『ポートレイト・イン・ジャズ』は、そして、突出した内容を誇る「枯葉」は、ジャズ者初心者からベテランまで、全てのジャズ者のマストアイテムでしょう。
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