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2010年10月19日 (火曜日)

ロリンズとフロントとの相性

ソニー・ロリンズは「ジャズ・テナー」の天才である。本人の努力もさることながら、彼の天性のフレーズは、恐らく、ジャズ・テナー史上最高だと思う。それほど「はまった」時のロリンズのインプロビゼーションは凄まじいものがある。

しかし、彼はフロント楽器としての競演は、あまり得意ではなかったのではないか、と思っている。フロント楽器としての競演、同じテナーもあれば、トランペットもある、アルト・サックスもある。ロリンズは何度かフロント楽器としての競演を果たしてはいるが、どれもあまり良い出来ではない。

例えば、プレスティッジからリリースされた『Sonny Rollins Plus Four』(写真左)。1956年3月の録音。ちなみにパーソネルは、Clifford Brown (tp) Sonny Rollins (ts) Richie Powell (p) George Morrow (b) Max Roach (ds)。ペットの天才、クリフォード・ブラウンとの競演で有名なアルバムである。

が、これがなんとまあ、隔靴掻痒の感がある、不完全燃焼極まりない内容に落胆する。ジャズのフロント2管・3管には、ミュージシャン同士の相性が絶対にある。相乗効果を発揮する組合せもあれば、お互いを相殺する組合せもある。概して、大物同士は相性が良くない。

確かにジャズジャイアントな大物同士、ペットのクリフォード・ブラウンとテナーのソニー・ロリンズ、どちらもお互いを意識し過ぎて、というか、お互いを立てすぎて、なんだか呼吸が合わないというか、テンポが合わないというか、フレーズが合わないというか、完全に不完全燃焼な競演に終始しているところがもどかしい。

恐らく、クリフォードもソニーも「人が良い」というか「人間が出来ていた」んだろう、あまりにもお互いを立てすぎで、かえってギクシャクしている。とにかく、お互いに気を遣いすぎである。

もともと、リズム・セクションを無視するように、好きに心のおもむくままのアドリブを身上とする、クリフォードとソニーである。横にもう一人、優れた大物ミュージシャンがいたら、その心のおもむくままのアドリブもイマージネーションも半減されるというもの。クリフォードもソニーも単独で、周りを気にせず、楽器を吹きまくることが、一番のパフォーマンスな天才ミュージシャンである。この『Sonny Rollins Plus Four』での競演は、このアルバムの演奏を聴く限り「失敗」である。

Rollins_plus4

加えて、Richie Powell (p) George Morrow (b) Max Roach (ds)の、バックのリズム・セクションの出来が良く無い。ドラムのローチはビ・バップのドラミング・アプローチを脱却しておらず、ジョージ・モロウのベースはまったく目立たず、リッチー・パウエルのピアノは平凡。

つまり、この『Sonny Rollins Plus Four』のリズム・セクションは、録音当時からしても「ビ・バップな」、つまりは時代遅れのものであり、そのバックを従えて自由に吹きまくるには、フロントの相棒が大物過ぎて、個性が強すぎる。

これじゃあ、良いアルバムが出来る道理は全く無い。フロント楽器同士が遠慮し合って、しかもバックのリズム・セクションの出来がイマイチであれば、このアルバムが優れた内容を提供してくれる筈が無い。

ペットのクリフォード・ブラウンは、ローチのビ・バップ・ドラミングをタイム・キープ役にして、吹きまくろうとするが、ロリンズの存在に対して気を遣う余り、不完全燃焼なインプロビゼーションに終始し、テナーのロリンズは、平凡なリッチー・パウエルのピアノの音を尊重しようとする余り、アドリブをかまそうとしてズッコケる。

このパーソネルで、しっかりとリハーサルを積めば、良い内容に早変わりした可能性は感じられる。でも、このアルバムはプレスティッジ・レーベルからのリリース。リハーサルのスタジオ代惜しさにリハーサルを省略し、短時間の打合せの後、一発録りのジャムセッション風の録音である。良くなる筈が無い。

この『Sonny Rollins Plus Four』、決して内容はあまり良くない。それでも、ジャズ入門盤やロリンズ代表作に名を連ねることがあるというこの事実、どう解釈して良いものやら、理解に苦しむ。クリフォードとソニー、2人のビッグネームが若かりし頃、競演したというドキュメンタリーとしては、ジャズの歴史的資料として価値はあるだろうが、演奏内容は「まあまあ〜イマイチ」なので、それ以上の価値はこのアルバムには無い、と僕は思う。

とにかく、リズム・セクションが弱い。これでは、クリフォードとソニー、2人のジャズ・ジャイアントが好き勝手に、自由奔放にインプロビゼーションすることもかなわず、演奏全体としてもメリハリが効いていない。

この『Sonny Rollins Plus Four』は、決して名盤ではない。クリフォードとソニーの競演の記録以上の何者でもない。しかし、このアルバムが、ハードバップ時代の名盤の一枚として、ロリンズの代表的名盤の一枚として、ジャズ者初心者の方々に紹介されてきた事実について、僕は理解に苦しむ。それは余りに安直すぎる、責任不在の評論ではないだろうか。

やっぱりジャズって、自分の耳で実際に聴いて、自分で感じんとあかんな、と改めて思う。 
 
 
 
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