不世出の早熟の天才テナーマン
ジャズ者初心者の時から、ソニー・ロリンズが大のお気に入りである。当時、新譜だった『Love at First Sight』と大傑作『Saxophone Colossus』を聴いて、それからずっと大のお気に入りテナーマンである。
ソニー・ロリンズ(Sonny Rollins)は、1930年9月7日生まれ。今年で80歳になる、最後のジャズ・ジャイアント、愛称は「テナー・タイタン」。ハード・バップの代表的奏者であり、ジョン・コルトレーンと並ぶジャズ・サックスの巨人。豪放磊落、大胆かつ細心、歌心溢れ大らかなフレーズ展開は、決して、他の追従を許さない。孤高のテナーマンである。
そんなロリンズが大好きなのに、今まで、ロリンズのリーダー作を、組織だって年を追って聴き直したことが無い。大好きが故に、その時の気分に合ったアルバムをチョイスして聴いて来た。しかし、最近、ふと「それではいけない」と思った。で、ロリンズのリーダー作を、組織だって年を追って聴き直すことにした。
さて、まずは、ロリンズが21歳、1951年の初リーダー作の『Sonny Rollins With The Modern Jazz Quartet』(写真左)である。このアルバム、タイトル通り、モダン・ジャズ・カルテットとの共演だけがチョイスされたアルバムでは無い。そこは「プレスティッジ・レーベル」。幾つかのジャム・セッションを方針無く、適当にLPサイズに詰め合わせて、リリースされたアルバムである。
モダン・ジャズ・カルテットの共演は、1曲目〜4曲目まで。ちなみに、パーソネルは、Sonny Rollins (ts) Milt Jackson (vib) John Lewis (p) Percy Heath (b) Kenny Clarke (ds)。1953年10月の録音である。
ちなみに、モダン・ジャズ・カルテットとの共演だと認識できるのは、ミルト・ジャクソンのヴァイヴの存在。それもあまり全面にでること無く、モダン・ジャズ・カルテットのバッキング自体が精細を欠く。若きロリンズだけが、豪放磊落、大胆かつ細心、歌心溢れ大らかなフレーズを吹きまくっている。
他の録音はカルテットもの。5曲目から12曲目までの8曲で、ちなみにパーソネルは、Sonny Rollins (ts) Kenny Drew (p) Percy Heath (b) Art Blakey (ds)。1951年12月の録音。この録音でも、バックの演奏は全面に出ること無く、地味に、ロリンズの若きテナーの引き立て役に徹する。
そして、ラストの「I Know」は、1951年1月の録音。ちなみにパーソネルは、Sonny Rollins (ts) Miles Davis (p) Percy Heath (b) Roy Haynes (ds)。なんと、かのジャズの帝王、トランペットのマイルス・ディヴィスがピアノを弾いている。といって、なにか変わった「化学反応」が起こっているかというと、そうでは無い。マイルス・ディヴィスのピアノも普通のレベル。なにか凄い演奏なのか、と思うが全くそんなことは無い(笑)。
この『Sonny Rollins With The Modern Jazz Quartet』は、ロリンズのテナーだけを愛でるアルバムである。1951年、当時21歳のロリンズが、当時、ビ・バップの後期、錚々たる実績あるメンバーをバックに従えて、ロリンズが、豪放磊落、大胆かつ細心、歌心溢れ大らかなフレーズを吹きまくっている。
テクニックは全く申し分無く、溢れんばかりの歌心を湛えて、豪放磊落、大胆かつ細心に、ロリンズはテナーを吹き上げていく。音の陰影、インプロビゼーションのメリハリ、奥行きなど、重箱の隅を突けばきりがないが、弱冠21歳のテナーマンの音としては最高である。細かい部分をさしおけば、弱冠21歳で、これだけのテナーを吹くことができるのは、後にも先にもロリンズしかいない。早熟といえば早熟。これは大袈裟ではなく「奇跡」に近い。
この『Sonny Rollins With The Modern Jazz Quartet』は、弱冠21歳のロリンズが、如何に早熟な天才テナーマンだったかを、如何に不世出のテナーマンだったかを、今の我々に教えてくれる。そして、今に繋がるロリンズのテナー・スタイルが既に確立されているところも驚くべきところ。
荒削りではあるが、21歳にして、ほぼ完成された、テナー・タイタンの若かりし頃の演奏。それだけを感じる事ができるだけでも、この『Sonny Rollins With The Modern Jazz Quartet』の存在意義は、ロリンズ者にとっては「抜群」である。
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