ベースはここまで前に出て良い
いや〜、今日の雨は激しかったですね〜。今日は嫁はんの実家まで墓参り。往復「大雨」。車だったんだが、事故をおこしそうになり、事故にまきこまれそうになったり、大変疲れた 。やっとのことで、家に帰り着いた。
さて、今日は、現時点での、次世代を担うベジャズ・ーシストのリーダーアルバムについて語りたい。そのアルバムは、Christian McBride 『Gettin' To It(邦題:「ファースト・ベース」)』(写真左)。現代のファースト・コール・ベーシストの一人、クリスチャン・マクブライド初リーダー作である。
1995年のリリース。ちなみにパーソネルは、Roy Hargrove(tp), Joshua Redman(ts), Steve Turre(tb), Cyrus Chestnut(p), Christia McBride(b), Ray Brown(b), Milt Hinton(b), Lewis Nash(ds)。マクブライドをリーダーとしたセクステットに、ジャズ・ベーシストの偉人二人をゲストで招いた、という図式のメンバー構成。しかし、蒼々たるメンバーである。一介のジャズ・ベーシストの初リーダー作のメンバー構成としては、あまりにゴージャズと言えばゴージャス。
しかし、このアルバム、決して、リーダーのマクブライドは「メンバー負け」していない。実に良く、錚々たるメンバーを束ねて統率し、なかなかのコンテンポラリーなジャズを展開していることは、とても立派だ、と思う。
クリスチャン・マクブライドのベースの素晴らしい面は、まず「ピッチが合っている」ことが挙げられる。チューニングをちゃんとしている。これって、楽器を演奏するものにとっては当たり前の事なんだが、ジャズについては、この当たり前の事が見過ごされているケースが多い。
ベーシストとて例外では無い。1970年代のロン・カーターのベースのチューニングについては首を傾げる。聴くに堪えないチューニングの甘さを露呈したアルバムも、残念ながら多々ある。ジャズ・ベーシストの偉人の一人であるレイ・ブラインですら、ピッチが合っていないアルバムもあり、この当たり前の事を徹頭徹尾、晩年期まで貫き通したのは、怒れるジャズ・ベーシスト、偉人チャールズ・ミンガスくらい。
さて、マクブライドのベースは音が大きい。ハッキリと聴き取れるマクブライドのベースライン。これって、素晴らしいことで、正統にジャズ・ベーシストをとしての評価を下すことが出来る。加えて、他のバンド・メンバーに迎合しない、そして、若くして、これだけハッキリとしたビートを供給するベーシストは数少ない。そして、そのテクニックは「卓越」の一言。
ベーシストとして、「卓越したテクニック」を保有し、ピッチが合っている、そして、音が大きい。そんな、ベーシストとして理想的な資質をバックに、この初リーダー作では、独自の演奏コンセプトの確立に対して、マクブライドは「もがきにもがいている」。演奏コンセプトを確立しようと焦る余り、なかなか画期的な新しいコンセプトが出ない、捻出するに至らない、ということろが、ちょっともどかしいところではあります。
とにかく、マクブライドのベースのピッチが合っているので、ベースのボウイング奏法も、少し長いベースソロも苦にならない。どんと来いである。楽器演奏の基本をしっかりと押さえる。優れたミュージシャンの第一歩である。
Christian McBride の初リーダー作『Gettin' To It』を聴き進めてきて、ここまで「ピッチが合っていて」、ここまで「テクニックに優れ」、ここまで「音が基本的に大きく切れ味が良い」となれば、ジャズ演奏の中心として、ベースはここまで前に出て良いのではないか、という気がする。
というか、ジャズ・ベースは、ここまで前に出て欲しい。ジャズ演奏において、ジャズのビートを供給する、その大本を司るジャズ・ベース。もう少し、全面に出てきても良いのではと思ったりする。
Christian McBrideをはじめ、1990年代のジャズ界に出て来た、次世代を担う若手新人も、今や皆、中堅として活躍している。あえて今、彼らの新人時代のリーダー作を聴くと、やはりその資質は素晴らしい。栴檀は双葉より芳し、である。
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