蘭プログレ発のフュージョン
1970年代、オランダのプログレバンドで、フォーカス(Focus)というバンドがあった。1970年、Thijs Van Leer(タイス・バン・レアー)とJan Akkerman(ヤン・アッカーマン)を核として、ベースギター(Martijn Dresden:結成時)、ドラム(HansCleuver:結成時)の4名で結成された。
バンドは初のシングルヒット「悪魔の呪文 : HOCUS POCUS(71年、英国では72年)、セカンドヒット「シルビア」(72年)で、欧米を中心にその勇名を轟かせた。73年、英国の音楽雑誌「メロディーメーカー」による人気投票では、各部門にフォーカスのメンバーが選出されている。とくにヤンがエリック・クラプトン、スティーブ・ハウらを押さえてギタリストNo.1に選ばれたことは、当時、驚くべきニュースだった。
74年、初来日公演が実現。その後、75年にも2度目の来日公演もあったが、タイスとヤンのめざす音楽の方向性の相違が明らかになり、75年のワールド・ツアー・キャンセル、ドラマーの交代と続き、76年、ヤンが脱退。タイスとヤンによるフォーカスのアルバムは「Mother Focus」が最後となった(その後 76年、アウトテイク集「Ship of Memories」がリリース)。
フォーカスの演奏するメロディーやアンサンブルには、クラシックの楽曲構成やロマンティシズム、ロックのダイナミズム、ジャズに代表される即興性など、さまざまなエッセンスがミックスされており、加えて、彼らの高い演奏技術と楽曲の独創性から、他のプログレ・バンドには見られない、唯一無二のオリジナリティーを誇る、と、我がバーチャル音楽喫茶『松和』の「懐かしの70年代館」(左をクリック)にある。
そのフォーカスのギタリスト、Jan Akkerman(ヤン・アッカーマン・写真右は1970年代のヤン)は、まだまだ現役ギタリストで頑張っている。iTunesを徘徊していて見つけたライブアルバムが『Live In Concert at Hague 2007』(写真左)。2007年のライブ。僅か3年前のヤン・アッカーマン御大の勇姿が眩しい。
ヨーロッパのプログレは、ジャズ、フュージョンと親和性が高い。というか、ズバリ、イコールだったりする。ヨーロッパのプログレバンドが、以前ジャズをやっていたり、プログレ・ブームの後、フュージョンをやっていたりする。例えば、ヤン・アッカーマンが在籍していたフォーカスも例外ではない。タイスとヤンによるフォーカス最後のアルバム「Mother Focus」は、フュージョンのテイストが満載の佳作。プログレとしてはイマイチだが、フュージョンとしては「なかなかの出来」。
この『Live In Concert at Hague 2007』では、ヤン・アッカーマンは、とにかく弾きに弾きまくる。ロック・ギタリスト、フュージョン・ギタリストとして大事なことは、そのエレギの音が個性的で聴き応えがあって、心地良い音であることなんだが、ヤン・アッカーマンのエレギの音は実に個性があって、しかも心地良い音。これぞエレギの音って感じの、ちょっとくすんだ感じの伸びのある音が実に気持ち良い。
加えて、ヤン・アッカーマンのエレギのフレーズは実に「流麗&シンプル」、そして、クラシックの影響からか、そこはかとはく優雅そして叙情的。熱気をはらんだ早弾きも、長年培ったテクニックに裏打ちされて、決して破綻すること無く、とにかく「聴かせくれる」。歌心とテクニック溢れるヤン・アッカーマンのエレギは、上質の「フュージョン・ギター」。ロック畑では、ジェフ・ベックも真っ青のハイテクニック、そして、実に格好良いフレーズの嵐である。
フォーカス時代からのファン・サービスとして、フォーカス時代のヒット曲「Answers Questions」「Hocus Pocus」そして「Sylvia」も披露してくれていて、1970年代、フォーカスのファンだった僕としては、実に嬉しい限り。涙涙である(笑)。
今では、知る人ぞ知る、という印象のヤン・アッカーマンですが、この『Live In Concert at Hague 2007』は、現代のヨーロッパのフュージョン・ジャズとして、なかなかの内容を誇る佳作だと思います。1970年代、蘭(オランダ)プログレのフォーカスのファンとしては、とにかく懐かしいアッカーマン節を聴くことが出来、また、フュージョン・ファンとしては、現代のヨーロッパの上質なフュージョンが聴ける。そんな「一粒で二度美味しい」ライブ盤です。
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