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2010年9月30日 (木曜日)

「本気のリハーサル」の様なライブ

ビル・エバンスという人は、なかなか興味深い癖というか、習慣が幾つかある。例えば、ドラマーのフィリー・ジョー・ジョーンズ(略して「フィリージョー」)との共演。

ビル・エバンスいわく、フィリージョーは「大のお気に入り」ドラマーとのことだが、エバンスとして、フィリージョーと恒常的なレギュラー・バンドを組んだことが無い。常人の想いとしては、「大のお気に入り」ドラマーだったら、レギュラー・バンドを組んで、ある一定期間、とことん一緒にギグをやり倒すだろうに、と考えるんだが、エバンスはそうでは無いところが不思議というか面白い。

エバンスとフィリージョーの共演の歴史を振り返ってみると、どうも、エバンスとしては、なにか演奏活動の「節目節目」のタイミングで、フィリージョーと共演するような感じがする。エバンスの演奏スタイルの完成を見た『Everybody Digs Bill Evans』、端正なハードバップなアレンジが見事な、エバンスとしては珍しいオールスター・クインテットの『Interplay』。Fantasyレーベルでのオールスター・クインテットの『Quintessence』。

そして、エバンスのトリオライブ盤の中で、個人的に、かなりお気に入りの『California, Here I Come』(写真左)。この最後に挙げた『California, Here I Come』は、レギュラー・ベーシストとして、エディ・ゴメスを迎えて早々の、エバンスのホームグラウンド「Village Vanguard」でのライブ録音。ちなみに、録音日は,1967年8月17、18日になる。

この1967年8月17、18日の「Village Vanguard」でのライブ録音は、当時「お蔵入り」になっている。このアルバムがリリースされたのは、エバンスの没後、1982年にLP2枚組でリリースされている。当然、「お蔵入り」としたのは、エバンス自身の判断であり、なぜ、このライブ録音が「お蔵入り」になったのか、このアルバムをLPで購入した頃、ジャズを聴き始めて5年目のジャズ者初心者の僕としては、さっぱり判らなかった。それほど、聴き甲斐のあるライブ盤である。

とにかく、全編、エバンスは、リラックスして楽しそうにピアノを演奏している。これだけの力量ある人が、楽しそうにリラックスして、ピアノを弾くのだ。生き生きとして、エバンスお気に入りのスタンダードを弾き進めていく。実にポジティブで明るいトーンが気持ち良い。

California_here_i_come

もともと、エバンスはハード・バッパー的な強く堅実なタッチが基本。そこに、クラシックに影響を受けた印象主義的な和音の重ね方と独特な響き、ロマンティックでメロディアスな旋律、抑揚と陰影、強弱と緩急を柔軟に織り交ぜた、メリハリのあるリリカルなピアノ・タッチとして、唯一無二の個性を確立させた。

僕が想像するに、エバンスは、演奏活動の「節目節目」のタイミングで、基本に戻りたかったのではないか。フィリージョーは、ハードバッパーなドラマーである。ハードバッパーなドラマーは、ハードバッパーなピアニストと相性は最高。エバンスは、フィリージョーと演奏するのが、最高の「原点回帰」ではなかったのか、と。

この『California, Here I Come』は、エバンスにとって、レギュラー・ベーシストであるエディ・ゴメスに恵まれて間もない頃のライブ演奏。エバンスがゴメスをガンガンに鍛えているように聴こえる。エバンスのピアノの基本である「ハード・バッパー的な強く堅実なタッチ」で、エバンスのピアノの本質をゴメスに教えているように聴こえる。そして、ゴメスは、そのエバンスのピアノの本質を体感して、その本質に相対するベース・ラインを弾きまくる。

フィリージョーとの「原点回帰」を得て、エバンスは、ハードバッパーなピアノを繰り広げる。そして、ゴメスはエバンスの本質を体得する。そんなライブ演奏の中で、内容の良いものだけをピックアップしたアルバムが『California, Here I Come』。

『The Complete Bill Evans On Verve』には、この『California, Here I Come』に収録されなかった演奏を聴くことができるが、確かに「収録されなかっただけのことはある」。エバンスがゴメスをガンガンに鍛えている「本気のリハーサル」の様なライブである。演奏する本人達も、あまり内容は問わなかったのだろう。だから、当時、そもそものリリースは無く、「お蔵入り」になったのも合点がいく。

フィリージョーとの「原点回帰」を得て、ハードバッパーな、ポジティブで明るいトーンで、エバンスはリラックスして楽しそうにピアノを演奏している。そして、ゴメスは、エバンスのピアノの本質を体感して、その本質に相対するベース・ラインをガンガンに弾きまくる。「鍛錬」「修行」「特訓」という言葉がふと浮かぶような、実にプロフェッショナルな雰囲気満載のライブ演奏だと僕は思う。 
 
 
 
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