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2010年9月 4日 (土曜日)

「I love New York」が心地良い

いろんな意味で隅に置けない(笑)友人親子がNYに滞在中。無性にNYの雰囲気を満喫できるジャズ盤が聴きたくなってきた。ということで、ニューヨークをバリバリに感じる事ができるアルバムを探すことに・・・。

探すというか、ニューヨークを強く感じる事のできるアルバムというと、僕としては、絶対にこのアルバムが真っ先に浮かぶ。ちなみに、このアルバムって、メインストリーム・ジャズでは無く、フュージョン・ジャズなんだけどね。

時代は、1979年11月に遡る。当時、まだまだ海外旅行は「夢のまた夢」。ましてや、ニューヨークに行くなんて、当時は、自分の一生の中では絶対に無い、と思っていた。そんな時代、テレビのCMで見た、聴いた、日本航空のニューヨーク・キャンペーン「I love New York」。そのバックで流れているフュージョン・チックな音楽に耳を奪われた。というか、僕にとっては衝撃的だった。

その曲は、今では日本での老舗フュージョン・バンドとなったカシオペアの、その名もズバリ「I love New York」。当時、流行始めていた、CMとのタイアップ曲である。でも、当時は「タイアップ曲」といえば、ニューミュージックの曲ばかりだったから、この当時駆け出しのフュージョン・バンドの楽曲とタイアップした日本航空は先進的。凄いと言えば凄い。

当時、どちらかと言えば、米国の犯罪都市として有名だったニューヨーク。確かに、あまり良いイメージは無かったですね。日本でニューヨークが良いイメージで受け止められ始めたのは、日本テレビの「米国横断ウルトラクイズ」の決勝の舞台がニューヨークになってからでしょう。徳さんの「ニューヨークへ行きたいか〜」のアジテーションに、テレビの前で「行きたいぞ〜」と応えつつ、僕の中でも、まだ見ぬニューヨークが憧れの地になっていったのを覚えています。

そんなニューヨークを安全で清潔な街、観光都市化しようと、当時のコッチ市長が一大改革に乗り出した時のキャンペーン・スローガンが「アイ・ラブ・ニューヨーク」。このカシオペアの「I love New York」は、スティーヴ・カルメンが作曲した楽曲のカバーです。当時のニューヨークのテーマ曲みたいなものでしたね。決して、カシオペアのオリジナルではありません。
 
Casiopea_ilove_ny
 
カバーとは言え、このカシオペアの「I love New York」は、実に印象的な曲で、僕は今でも、ニューヨークを彷彿とさせるジャズ曲は、と問われれば、必ず先ず、このカシオペアの「I love New York」を挙げます。たった4分ちょっとの曲なんですが、これが実にキャッチーな内容です。

当時、フュージョン・シーンで流行っていた、ボコーダーを使用して「I love New York」と歌う雰囲気は、いまでも「たまりません」。前奏のストリングス・アンサンブルの和音も懐かしい響きです。しかし、なんといっても、この曲全編に渡って、野呂一生のギターのフレーズ、リフが素晴らしい。何気なく、ギターを弾き進めて行っているんですが、要所要所で聴かせてくれる「技」は何度聴いてもワクワクする。シンコペーションの多用、途中で一音上がる効果的な転調。僕の好みをバシバシと刺激してくれます。

収録曲9曲中7曲が野呂一生の作曲と、ちょっと野呂一生のワンマンバンド的な印象が強いのですが、他のメンバーの力量・ポテンシャルが高く、決して、野呂一生だけが目立っていないところが、この時期のカシオペアの良いところです。

そして、カシオペアの一番の特徴は、演奏に「純ジャズくささ」の無いことです。それまでの日本のフュージョン・バンドは、純ジャズからの転身組がほとんどで、演奏のそこかしこに「純ジャズ的な香り」が漂っていました。「それが良いんじゃないか〜」という意見もありましたが、あまりに強く出る「純ジャズ的な香り」は、純粋なフュージョン・ジャズとして聴く場合、ちょっと違和感がありました。

その「純ジャズ的な香り」が、カシオペアには殆ど感じられない。ちなみに、ロック的な香りも希薄で、日本での純粋なフュージョン・ジャズを表現したのは、カシオペアが最初だと僕は思っています。それほど、今までのどのジャンルの音にも影響されない、自らの音の個性を確立しています。

時代は、1979年。当時、まだまだ海外旅行は「夢のまた夢」。ましてや、ニューヨークに行くなんて、当時は、自分の一生の中では絶対に無い、と思っていた。このカシオペアの「I love New York」を、大学時代の一時期、繰り返し繰り返し聴いていた。ニューヨークは犯罪都市のイメージから脱却し、世界のビジネスの中心になっていった。学生時代、ニューヨークは憧れの地。しかし・・・、社会人になって、通算4度もニューヨークの地を踏むことになるとは思わなかったなあ。 
 
 
 
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コメント

ども。
その親子の「親」のほうです。
NY、というかハーレムにだいぶなれました。
地下鉄で「A Express」すなわち「A列車」に乗るたびに、
頭の中で流れる「A列車で行こう」。
そのたびにマスターの顔が目に浮かびます。
ほんとに地下鉄はきれいになりましたよ~☆

おお〜っ、 ひとんちゃん、お久しぶり。松和のマスターです。

いろんな意味で隅に置けない(笑)友人親子の「親」ですな、
いや〜お元気ですか。

ネットで、最近のNYの風景写真などを見ていると、ハーレムって
綺麗になったよな〜。地下鉄もほんと、綺麗になったよな〜。
僕が初めてハーレムを訪れたのは1993年。まだまだ汚かった
ですし、危なそうだった。あれから17年。隔世の感があります。

う〜ん、僕もNYに行きたいなあ〜。「A Express」に乗りたい
なあ。ハーレムに行きたいなあ。とにかく、NYに行きたい(笑)。

まあ、兎にも角にも、ひとんちゃん、体調管理に十分気を付けて、
例の途方も無い、桁違いの「ボケ」を異国の地で炸裂させないよう、
慎重に、周りの方々に気を配りつつ、かつ、自分自身にも十分に
気を配りながら、充実したNYライフを送って下さいね。
 
 


はじめまして。カシオペアのI love new yorについて私が思っていたとおりのことが書かれていてちょっとうれしくなりました。私は高校の頃テレビのCMで初めて聞いて衝撃を受け、フュージョンに目覚めた曲です。何気ない曲ですけど、野呂さんのセンスに良さには感服ですよね。いまでもときどき聞いたりしてます。

はじめまして、まかろんさん。松和のマスターです。
コメントありがとうございます。
 
同じ想いを持っておられる方がいる、というのは、嬉しくもあり、
心強くもあります。
 
カシオペアの「I Love New York」は名曲ですよね〜。
あの時の雰囲気、あの時の思い出を思い起こさせてくれる。
これって、名曲の絶対条件のひとつです(^_^)v。
 

はじめまして。I Love New Yorkでググったらこちらへたどり着きまして。

>そして、カシオペアの一番の特徴は、演奏に「純ジャズくささ」の無いことです。それまでの日本のフュージョン・バンドは、純ジャズからの転身組がほとんどで、演奏のそこかしこに「純ジャズ的な香り」が漂っていました。「それが良いんじゃないか〜」という意見もありましたが、あまりに強く出る「純ジャズ的な香り」は、純粋なフュージョン・ジャズとして聴く場合、ちょっと違和感がありました。

その「純ジャズ的な香り」が、カシオペアには殆ど感じられない。ちなみに、ロック的な香りも希薄で、日本での純粋なフュージョン・ジャズを表現したのは、カシオペアが最初だと僕は思っています。それほど、今までのどのジャンルの音にも影響されない、自らの音の個性を確立しています。

まったく同感であります。

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