George RussellのN.Y.讃歌
ジャズにおいて、ズバリ、ニューヨークを題材にし、ニューヨークをテーマにした楽曲で固めたコンセプトアルバムは、意外に数少ない。まあ、ジャズ自体がニューヨークを強くイメージする音楽ジャンルなんで、そんなジャズの中で、ニューヨークをテーマにしたコンセプト・アルバムなんて必要無いと言えば必要無い(笑)。
さて、ジャズのアルバムの中で数少ない、ニューヨークをテーマにしたコンセプト・アルバムが、George Russell(ジョージ・ラッセル)の『New York, N.Y. 』(写真左)。1958年9月、11月、1959年3月の録音。レコード会社のキャッチコピーは「ジャズの都マンハッタンの情景をラッセルの大胆な作・編曲で綴った一大音楽抒情詩」。ちと大袈裟だが、その雰囲気のとらえ方は正しい。
パーソネルは、ジョージ・ラッセル(arr, dir), ジョン・ヘンドリックス(narration),アート・ファーマー(tp), ボブ・ブルックマイヤー(tb), ハル・マクシック(as), ジョン・コルトレーン(ts), ビル・エヴァンス(p), バリー・ガルブレイス(g), ミルト・ヒントン(b), マックス・ローチ(ds) 他。当時、売出し中だった、若きジョン・コルトレーン、アート・ファーマー、ビル・エバンスらのソロが「聴きもの」です。しかし、錚々たるメンバーです。
収録曲は以下の通り。タイトルを見渡すと、う〜ん、改めて思いますね。このアルバムは George Russell によるニューヨーク讃歌なんだな〜、と。
1. Manhattan
2. Big City Blues
3. Manhatta-Rico
4. East Side Medley : Autumn in New York 〜 How About You
5. A Helluva Town
「自信があるなら切符を買って、さあ行こう。バスで飛行機で汽車で、ニューヨーク、ニューヨーク、最高の街」
と、John Hendricks のナレーションで幕が開く。そして、冒頭の「Manhattan」は、いきなり詞の冒頭のリズムのパターンをドラムが叩き出す。続いて、John Hendricksによるラップ調の詩の朗読が始まります。このJohn Hendricksの詩の朗読と、バックが叩き出すビートとリズムだけで、既に「格好良い」。
アルバム全編に渡って、ジョージ・ラッセルのアレンジが冴え、どの曲も実に格好良く決まっています。変にエンタテインメントに媚びずに、格好良く、ダンディズム溢れる演奏に仕上がっていて、実に「凜」としているところが特徴。若きジョン・コルトレーン、アート・ファーマー、ビル・エバンスらのソロも、ジョージ・ラッセルの要請に応じて、実に渋く、実にモダンで、実に格調高いものになっていて、出てくるフレーズ、フレーズに「へえ〜、ほぉ〜」と感心することしきり。
そして、やはり、個人的な極めつけは、4曲目の「East Side Medley」でしょう。僕の大好きな、N.Y.にまつわるスタンダード曲「Autumn in New York(ニューヨークの秋)」が入っています。これが、まあ、実に心に染みいるバラード曲なんですよね〜。ジョージ・ラッセルのアレンジが実に良く効いていて、変に感情過多に傾かず、決してウェットにならず、ややドライな雰囲気の、ダンディズム溢れる「Autumn in New York」は絶品です。
J.F.K.空港を降り立ち、イエローキャブに乗り、橋を渡ってマンハッタン島に入ると、必ず「ニューヨークに来た」という実感が心の底から沸き立ってくる。このGeorge Russellの『New York, N.Y. 』を聴く度に、その情景が、その感動が心に浮かびます。ニューヨークに対する想いが詰まった良いアルバムだと思います。
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