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2010年8月15日 (日曜日)

WR 終焉へのカウント・ダウン

1984年にリリースされた『Domino Theory』(写真左)。さすがに、このアルバムには「ガッカリ」した。もはや、このアルバムには、Weather Reportは全く存在しない、と感じた。

冒頭のCarl Andersonのボーカルが入った「Can It Be Done」。なんやこれ、と思った。今の耳にも、この「Can It Be Done」のアレンジのセンス、シンセの使い方のセンス、実にひどい。前奏なんぞ、噴飯ものである。ザビヌルは何を考えていたのか。電気ジャズのAORの線でも狙っていたのか(笑)。とにかく、この「Can It Be Done」を冒頭に配した感性が理解の範疇を超えている。

2曲目の「D-Flat Waltz」は、10分超のWRらしいインプロビゼーション中心の楽曲だが、このデジタル臭さはなんだ。特に、ザビヌルのシンセのデジタル臭さは何とかならんのか。金にあかして、当時の新機材をどんどん導入し、聴き馴れない、新しいシンセの音を使用して、なんとか、WRが従来より提示してきた、「斬新な音」を表現したかったのだろうが、平凡極まりない。ミュージシャンとしての「斬新な音」は、何も機材から供給されるものでもなかろう。

3曲目の「Peasant」は、デジタルシンセを駆使したワールド・ミュージック風な演奏であるが、ビートとリズムが奥に引っ込んでいて、実に平坦な音世界が8分も続く。退屈極まり無い、デジタルシンセの平凡な音。ここまで聴いてきて、ザビヌルはどうしてしまったのか、と思ってしまう。センスのかけらも、インテリジェンスのかけらも無い。これでは、新加入のベースのビクター・ベイリー、ドラムのオマー・ハキムが可愛そう。ザビヌルの影に隠れて、ザビヌルを目立たせるだけの為に、リズム・セクションがあるかのよう。

Domino_theory

以降、同傾向の曲が続く。退屈極まりないアルバム。当時、デジタルシンセの音が何となく新しい感じがしたが、今では、当時流行のデジタルな平凡な音ばかりで、古さばかりを感じる音ばかり。もともと、ザビヌルのシンセの使い方は見劣りがしたが、この『Domino Theory』でのシンセの使い方は酷い。ザビヌル一人の独裁バンドになった途端に、この酷さ。

加えて、なぜか前作『Procession』で、喜々としてサックスを吹いていたショーターも、このアルバムでは、まったく「いけていない」。ショーターらしいフレーズも無く、ただただ、ザビヌルに合わせて、ザビヌルの指示通りのフレーズを機械的に吹くだけ。人間味の無い、ミュージシャンシップのかけらも無い、サックスの音。

リズムも陳腐、ビートは効かず、キーボードの音色もフレージングはセンスのかけらも無い。テクニックがいかにあろうとも、このアルバムには「矜持」が無い。ひたすら、独裁リーダー・ザビヌルの自己満足だけがこのアルバムに蔓延している。そうでも解釈しないと、こんな内容のアルバム、プライドのあるリーダーだったらリリースしないでしょう。でも、当時の雑誌の評論は、まだ「絶賛」若しくは「新境地開拓」と、盲目的に評価していたんですよね。「どうもおかしい」、この頃からですね、評論家の方々の意見は参考にはするが、鵜呑みにしなくなったのは・・・。

この『Domino Theory』は、WR 終焉へのカウント・ダウン。もはや、ここに、ジャズの最先端を走っていたWeather Reportの姿は無い。残骸も無い。あるのは、平凡なザビヌルの音世界だけ。しかし、WRは、あと2枚ものアルバムをリリースするのだ。「矜持」のかけらも無い。WRはザビヌルの我が儘のお陰で「晩年を汚してしまった」のである。今の耳で聴き直しても、やはり「つまらない」。
 
 
 
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