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2010年8月19日 (木曜日)

ここにはWeather Reportは無い

Weather Report(ウェザー・リポート)の後期、『Procession』から『Domino Theory』まで聴き進めて、僕は当時、これはもう「Weather Reportでは無いのでは」と思った。特に、1984年にリリースされた『Domino Theory』(写真左)。さすがに、このアルバムには「ガッカリ」した。もはや、このアルバムには、Weather Reportは全く存在しない、と感じた。

そして、1985年『Sportin' Life』である。これは実を言うと、リリース当時、僕は購入しなかった。とにかく、『Domino Theory』のショックが大きい。もうWeather Reportに対して、興味は失せていた。ジャズ雑誌は、相変わらず、絶賛していた、若しくは、次なる素晴らしいステップへの「前向きな過渡期」と好意的な評価をしていた。

この『Sportin' Life』を聴いたのは、リリース年から10年ほど経ってからである。冒頭のボーカル入りのシンセ中心の演奏を聴いて、ゲンナリした。『Domino Theory』よりも酷い。もう全く覇気の無い演奏である。デジタル・シンセの音がやたらに目立って、酷く凡庸なデジタル・シンセのフュージョン・ジャズを聴いているよう。

2曲目以降の楽曲にも、もはや「聴くべきもの」は無い。ビートは平凡というか、ビートは硬直し、ギターを入れたらファンキーな雰囲気になるとでも思ったのだろうか、ザビヌルのデジタル・シンセの雰囲気をなぞった、実に窮屈で、実にノリの悪いエレキ・ギターが虚しく響く。サックスのショーターは、ちょっとだけププッと吹くだけ。それも気持ちがこもっていないのが良く判る。

とても、Weather Reportとは思えない。ザビヌル個人のデジタル・シンセを駆使した、平凡なビートに乗った、平凡なシンセ・フュージョンの「デモテープ」を聴いているようだ。こんな演奏を、Weather Reportの正式盤でリリースするとは、ザビヌルの良心を疑いたくなる。Weather Reportに対して失礼である。何の変哲も無い、平凡なシンセ・フュージョンの響き。空虚なアルバム。

そして、Weather Report名義のラストアルバムが『This Is This!』(写真左)。1986年のリリース。このアルバムには、双頭リーダーだったウェイン・ショーターのサックスは全く参加していない。ザビヌルのデジタル・シンセだけが、やけに空虚に、やけに明るく響く。

Sportinlife_thisisthis

冒頭の表題曲「This Is This!」は、とにかく酷い。平凡極まりない、俗っぽい、平板なフュージョン・ジャズ。ギターも酷ければ、ザビヌルのシンセも酷い。空虚に響くシンセ。そして、平凡極まりないビート&リズム。これは、フュージョン・ジャズでも無い。ジャズのビートは皆無。今聴き直してみても、良いところが見当たらない。

この『This Is This!』ほど、Weather Reportの歴史を冒涜するアルバムは無いだろう。なぜ、こんなアルバムをリリースしたのか。契約があったことは理解するが、ザビヌルはペナルティーを払ってでも、この『This Is This!』は、Weather Report名義でリリースしてはならなかった。

このアルバムの存在が、ザビヌルにとって、Weather Reportは単なる一つの金稼ぎの道具に過ぎなかったのでは、という疑義を抱かせるに十分な「凡庸な内容」。これはWeather Reportのファンに十分に失礼な内容である。

これでWeather Reportのスタジオ録音のアルバムは全て聴き直したことになる。総括すると、Weather Reportは、1971年の『Weather Report』から、1982年の『Weather Report』までは、本当の意味でのWeather Reportと言える。1983年の『Procession』以降は、もはや、Weather Reportでは無い。ザビヌルの平凡な出来の「デモ・テープ」である。絶対にWeather Reportとは呼べない。

そして、1971年から1982年までのWeather Report時代のアルバムの中でも、1973年の『Sweetnighter』から、1974年の『Mysterious Traveller』、1975年の『Tale Spinnin'』の3枚についても、自分としては、Weather Reportの正式アルバムとしては、挙げたくないアルバムではある。

真のWeather Reportのスタジオ録音盤としては、デビューアルバム『Weather Report』『I Sing the Body Electric』『Black Market』『Heavy Weather』『Mr. Gone』『Night Passage』『Weather Report('81)』の7枚を聴けば十分。その他のアルバムは、Weather Reportのマニア向けでしょう。

ザビヌルって、Weather Reportの後期、後生に汚点となって残るアルバムをリリースしつつけたのだろう。そして、このWeather Reportの後期のアルバムほど、ジャズ評論家の意見は参考にはできるが、信じることは絶対に出来ない、という確信を持たしてくれたアルバムは無い。 
 
 
 
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コメント

このブログは、音楽系のブログでは、日本一ではないかと、思います。マスターの好み(こだわり)も、すごいですね。

ウエザー・リポートも、私は部分的に聞いてるだけ(後期は、聞いていません)ですが、ミステリアストラベラーとか、悪いアルバムでしょうか。私は、結構気に入っているのですが。ベーシスト、アルフォンス・ジョンスンも、評価の高い人だったように思います。

こんばんは、塾長さん。松和のマスターです。お褒めの言葉、感謝です。
さて、WRの『ミステリアス・トラベラー』ですが、決して、悪いアルバム
ではありません。

2009年9月10日のブログにも書きましたが、ウェザー・リポートの本筋からは
外れた音なので、私は敢えて、このアルバムをWRの代表作には入れませんが、
後のザビヌル・シンジケードに繋がる、シンセ+ワールド・ミュージック的な
音世界を中心としたザビヌルの作品として、僕は評価しています。
 
 

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