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2010年8月 7日 (土曜日)

日本ジャズの「女子力」

この10年前位から、日本ジャズの世界は「女性上位」。山中千尋や寺井尚子、木住野佳子などが台頭してきた頃からかと思う。この頃から、日本女子のジャズ・ミュージシャンはヴィジュアル的にもOKで、マスコミ的扱いは、どちらかと言えば「ヴィジュアル優先」だった気がする。

が、彼女達の表現するジャズは、今までの日本のジャズとは一線を画するものだったから驚いた。今までの日本のジャズは、一部の優れたミュージシャンを除いて、米国ジャズや欧州ジャズの忠実なコピーだった。決して悪口では無い。それはそれは、素晴らしいコピーだった。しかし、日本人ならではの「個性」の表現は無かった。それでも、そのレベルは高かった。後は、日本人ならではの「個性」の表現を待つだけだった。

そして、その日本人ならではの「個性」の表現は、日本ジャズの「女子力」により始まった、と言って良い。2000年前後から台頭し、この2010年の現時点においても第一線で活躍している、日本女子ジャズ・ミュージシャンは、誰もが、日本人ならではの「個性」を表現していて立派である。しかし、それは、ピアノが中心(寺井尚子はバイオリンだけど・・・)。ピアノ以外の楽器については、まだまだという感が強かった。

しかし、2002年にアルト・サックスの矢野沙織が出現。遂にピアノ以外の楽器に、素性の確かな新星が現れた。クラシック系の楽器以外の、純粋ジャズ系の楽器から有望な新人が現れた。しかし、ジャズ系の楽器、時にフロント楽器は肺活量など基礎体力が必要な楽器ばかり。サックス、トランペット、ドラムス、ベース、どれもが基礎体力が必要で、女子にはちょっと荷が重い楽器ばかりである。特に、トランペットは肺活量が求められるし、唇の力が必要。女子にはちょっと無理な楽器かなあ、という印象が強かった。

が、今回、市原ひかりの『Move On』(写真左)を聴いて、気が変わった。楽器というのは、人を選ばない、性別を選ばない、吹き方次第で、表現力次第で、十分に吹きこなすことができる、ということを改めて知った。市原ひかりのトランペットを聴いていて、何も肺活量だけが全てでは無い。工夫とセンス次第で、結構、女子でも吹きこなすことが出来るんだなあ、と思った。

Move_on

アルバムの名義が「市原ひかりグループ」となっていることからも、グループ・サウンズを重視したアルバムという印象を受けますが、確かに、このアルバム全体の演奏は、実に良く練られた、実に良くアレンジされた、非常に内容の濃い「グループ・サウンズ」だと思います。とにかく、安定感と安心感があって、まずは、演奏に集中して聴くことが出来ます。実にノビノビとした、実に息の合った演奏で、十分にヘビーローテーションに耐えます。演奏内容が充実しているので、聴く度に新しい発見があって飽きません。

ちなみにパーソネルは、市原ひかり (tp,flh), 浅井良将 (as), 堀秀彰 (p), 中林薫平 (b), 安藤正則 (ds)。アルバムを通して感じるのは、市原ひかり (tp,flh), 浅井良将 (as)のフロント楽器の相性の良さ。変にぶつかったり重なったりしない。お互いに、実に自然に思い通りに吹いている様子なのに、被らないのは「相性の良い」証拠。そして、日本人男子で固められたリズム・セクションが実に良い感じ。まるで、マイルスの薫陶を受けているかのように、しっかりと「ビート」を押さえ、しっかりとした「ビート」を供給し続けている。

この「市原ひかりグループ」って、実にユニークな音をしている。ファンキーなんだけど、粘ってコテコテではない。あっさりとしたファンキーさ。お茶漬けを食べるような、サラサラとしたファンキーさ。ブルージーな雰囲気もそう。ドップリとブルーにならない、ライトな感覚のブルーさ。歌謡演歌のような、適度でライトなブルージー感覚。このあっさりとしたファンキーさと適度でライトなブルージー感覚は、米国ジャズや欧州ジャズには絶対に無い感覚。そして、随所に見られる律儀で真面目な感覚。これって、もう日本人ならではの「ジャズの個性」でしょう。

良い演奏、良いアルバムだと思います。凡百な日本女子ジャズのアルバムにありがちな、聴き心地優先な、イージーリスニング・ジャズ的な雰囲気は全くありません。冒頭の「やみくろ」の前奏から、しっかりとメインストリーム・ジャズしていると感じます。バックのリズム・セクションが供給する、良質かつ個性的な「ビート」に負うところが「大」ですが、市原ひかりのインテリジェンス溢れるペットが聴きものです。

日本ジャズのペットの有望株が日本女子から出てくるとはなあ。う〜ん、日本女子、なかなかやるなあ。
 
 
 
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